腹痛の86歳女性が救急外来で点滴をしているから診てほしいと、当直だった神経内科医に言われた。昨日の昼前から心窩部痛があり、夕方からは右下腹部痛になったという。腹部手術の既往はなかった。3月に内科クリニックの紹介で基幹病院呼吸器科を受診して、肺癌と診断されたが、高齢のため経過観察になっていた。
急性虫垂炎のような経過だった。白血球数は9000でCRPは0.1とまだ上昇していない。右下腹部に圧痛があった。肺癌精査の時にも造影CTを行って特に有害事象はなかった。さっそく肺癌の検査も含めて胸腹部造影CTを行った。やせているので相当読影しにくいが、明らかな虫垂炎の所見はなかった。むしろ胆嚢の腫脹が目立った。腹部エコーで見ながら再度触診した。最初は右下腹部と判断したが、右季肋部よりの部位だった。内臓下垂で腰曲りがあるので下の方になる。腹部エコーで見ると、胆嚢壁が肥厚して、内部にdebrisがあった。胆嚢結石はない。腹部エコーでも腹部CTでも総胆管の拡張はない。無石胆嚢炎になる。左下肺に確かに肺癌を認めたが、明らかな転移はなかった。この胆嚢炎は肺癌と関係があるのだろうか(リンパ節転移があるとか)。
抗菌薬で保存的に治療して治まるかどうかわからない。86歳で肺癌もあり手術は避けたいところだが、少なくともPTGBDをしないと難しいのではないか。外科の外来に行って当番の先生に相談した。外科で入院治療してもらうことになった。それにしても息子さんは患者さんの前で、肺癌の話をはっきり聞こえる声でしていた。ご本人も肺癌と言われているのだろう。
学会帰りなので、新宿の小田急デパートで買ってきた洋菓子(最近はお店から郵送)を病棟や外来に配って歩いた。おいしそうなマドレーヌだが、お土産らしいお菓子の方がよかったかもしれない。昨日、日直の帰りに丸善でmedicina5月号のついでに「こんなとき、フィジカル」金原出版を買ってきた。徳田先生がかっこよく書かれている。