Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

歌舞伎座『四月大歌舞伎 昼の部』 1等1階前方センター

2016年04月23日 | 歌舞伎
歌舞伎座『四月大歌舞伎 昼の部』 1等1階前方センター

『操り三番叟』
今回の染五郎さんの操り三番叟は重さのある樫の木で作られた人形のようでした。中心に重さがあって安定感があった。絡まっても投げ出されない。そして踊らされているうちに魂が宿ったようだった「踊らせて!もっともっと!」そんな声が聞こえてくるようだった。後見の手から逃れるように、くるくると楽しそうに嬉しそうに廻る。無表情な顔で目も光ってはいない。でも身体全身で解放感を味わってるような空気が発散されていた。操られ度は低めだったけど、お茶目な可愛いお人形さんだった。宿った魂が高く飛び、くるりくりると廻り、豊穣を祈り、幸せを祈り、そんな風だった。最後の片足のぶらんぶらんが挨拶みたいという感想をいくつか読んだけど「観てくれてありがとうね、ば~いば~い」ってやっているように私にもみえた(^^*)

松也くんの後見。糸の使い方が前回より鮮明で太い糸というのまで見えた。染五郎さん三番叟と息もあっていた。でもどことなく制御しきれてない。染五郎さんのほうがはみ出しぎみだったのが大きいとは思うけど、松也くんももっと前に出れるようになるといいのかも。

楽しかった。自然と口角が上がっていたと思う。自分でそれが嬉しかった。染ちゃん、ありがと~って。「あの時に戻す」のではなく今の染五郎さんが進化してくんだって思った。染五郎さん人形は操るの大変だよ。勝手にほれここ、ほいここ、あ、あそこってあちこち飛んでちゃいそうなのを制御しなきゃいけないんだから。踊りに本人が出てましたね(笑)

『不知火検校』
周囲の観客の反応が面白かったな。年配の方々がえらく楽しんだらしく「どうせならこのくらい悪さばかりする悪人の芝居のほうがすっきりしていい」「これ楽しい。切腹とか辛気臭いのは苦手」とか。それを聞いて、宇野信夫がこれを書いた時代の時代性のこととか考えましたことよ。友人の「今なら盲目という弱者をただの欲望のままの悪人として描くのは難しいだろう」という感想も含め。

秀太郎さん、高麗蔵さんが少しの出番ですけどかなりインパクトがあって素敵でした。逞しい女たち。また孝太郎さんも「女」の一途さ、いやらしさの両方の色気を見せて良かった。