読書日和

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「おおかみこどもの雨と雪」 -小説-

2012-07-24 21:49:32 | 小説


※映画「おおかみこどもの雨と雪」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。

というわけで、映画を観た勢いで小説のほうも一気読み。
今回ご紹介するのは「おおかみこどもの雨と雪」(著:細田守)です。

-----内容-----
私が好きになった人は、”おおかみおとこ”でした。
大学生の花は、人間の姿で暮らす”おおかみおとこ”に恋をした。
ふたりは愛しあい、新しい命を授かる。
<雪>と<雨>と名付けられた姉弟にはある秘密があった。
人間とおおかみの両方の顔を持つ<おおかみこども>として生を受けたのだ。
都会の片隅でひっそりと暮らす4人だが、突然”おおかみおとこ”が死んでしまう。
残された花は姉弟を連れて田舎町に移り住むことを決意する―。
映画原作にして細田守監督初の小説登場!

-----感想-----
オススメは映画を観た後に小説を読むこと。
そのほうがイメージがしやすいと思います。
ああ、やっぱりあの時の心情はこんな感じだったんだなというように、映画では映像のみで表現されていた細かな部分の心情が分かります。
例えば主人公の花が序盤でスーパーで野菜を買ったり家で本を読んだりしている時、何度も考え事をしたり、瞳を潤ませたりしていた場面。
あれはたぶん”おおかみおとこ”のことを考えているのだろうと思いましたが、小説だとそこが思いっきり書かれているため、「ああやっぱりそういうことか」となります^^
完全に恋に落ちていましたね
鏡の前で服を選んでいた場面も、”おおかみおとこ”を意識して可愛い服を着ていきたいのだろうと思いましたが、やはり小説ではそこに触れていました。
これが映画と小説の違うところで、「映像」と「文字」の差ですね。
映画では映像からそういったものを感じ取ります。
なのでアニメーション映画ということで小さなお子さんも観に来ていましたが、そういった感性で感じ取る部分はちょっと難しかったかも知れませんね。
小学生には少し難しく、中学生くらいの感性になれば感じ取れるかな、といった印象です。

小説を読んでいると、映画での花(声優:宮崎あおい)の柔らかな声が甦ります。
内気で臆病な雨の背中をさすりながら「大丈夫、大丈夫」言ってあげる場面が何度かあるのですが、その声がとても優しく落ち着いていて印象的でした。
「大丈夫、大丈夫」
読んでいてその落ち着いた安心させてくれるような声が鮮烈に甦りましたね。

あと、花が姉弟を連れて田舎町に移り住んだ時、雪は5歳、雨は4歳だったのも小説を読んで分かりました。
活発に動き回る雪と弱気な雨、二人の可愛い姿が小説を読んでいて思い浮かんできました^^
大自然の田舎町に引っ越したのは二人がおおかみと人間、どちらかの道を選べるようにしなければいけないと考えたからで、その自然の中で二人それぞれ、成長していくことになります。

この田舎町で何とも言えぬ良い味を出しているのが、「韮崎のおじいちゃん」。
小説でも映画と全く同じ台詞、行動で、声優の菅原文太さんの味のある声を思い浮かべながら読んでいきました。
このおじいちゃんは無愛想なように見えて、畑での作物作りが上手くいかない花のことを気にかけて厳しいながらも色々と教えてくれます。
そして映画で印象的だった「畑が広くなきゃいけない理由」。
韮崎のおじいちゃんによってそれを悟らされた花は、おじいちゃんに「理由が分かった」と言っていたものの、どんな理由かについて直接の言及はしていませんでした。
ただこれもそれまでの流れを見ていれば分かるもので、ああなるほどと思いました。
そして小説ではそれについて明確な言及がありました。

収穫は、その家のためだけのものではない。里の者みんなのためであり、収穫はみんなで分かち合う。花は畑づくりを通して里の暮らしの流儀を知った。

つまり、広い畑でたくさん作って、みんなでお裾分けし合うということです。
小さな畑で、自分達だけ食べていければ良いというものでもないんですね。
都会にはなかなかない助け合いの精神が、この大自然の田舎町にはありました

それと映画で印象的だった、雨の成長。
内気で臆病だった雨が喧嘩で雪を圧倒するほど逞しく強くなるのですが、それは山に行ってアカギツネの「先生」から色々なことを学んだからでした。
映画ではどういう過程で「先生」に師事したのか説明はなかったものの、これも映像描写から何となく読み取ることは出来ました。
かつて自然観察の森という場所で、飼育されていたシンリンオオカミと雨が見つめ合うシーンがあったのですが、やはりあのオオカミから山のことについて聞いていたのでした。
ただこれも小さなお子さんでは読み取れないと思いますし、子供に色々聞かれたらぜひ親御さんが教えてあげてほしいですね。

そして連日山に行く雨を見ているうちに花の心に芽生える不安。
もしかしたら雨がこの家に帰らなくなり、母親としての自分の役割が終わってしまう時が来るのではと不安に駆られます。
雨が自分の道を歩み始めたのを見て、あれほど嬉しかったはずの子供の成長が、不安に変わっていきました。
おおかみとして生きるのか、人間として生きるのか。。。

映画を観ていたので、ラスト数ページは読んでいて胸が熱くなりました。
生き方の決断、旅立ち、そして母としてそれを受け止める心。
本当に素晴らしいラストだと思います


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コメント (2)
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