読書日和

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「おおかみこどもの雨と雪」 -映画-

2012-07-23 19:50:26 | 音楽・映画
※小説「おおかみこどもの雨と雪」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。

久しぶりとなる映画のレビュー。
昨日「おおかみこどもの雨と雪」(監督:細田守)を観に行ってきました。

------- ストーリー -------
人間の姿で暮らす“おおかみおとこ”に恋をした大学生の花。
やがて妊娠し、雪の日に女の子の、雨の日に男の子の《おおかみこども》を産む。
姉弟は雪、雨と名づけられる。
ところが、ある日突然“おおかみおとこ”が帰らぬ人に。
遺された花は子供たちを人間として育てるか、おおかみとして育てるか悩み、山奥の古民家に移り住む。
日々成長する快活な雪と内気な雨。
小学生になった2人にそれぞれ転機が訪れる。


------- 感想 -------



まず冒頭から素晴らしい映像美に引き込まれました。
話題になっていた「背景を動かす」という演出を目の当たりにしました。
これまでのアニメーションでは背景は固定されていることが多かったのですが、この作品では非常に完成度の高いレベルで背景を動かすことに初めて成功したとのこと。
冒頭からその演出があって、それがすごく美しかったです

この作品は、母と子の成長の物語。
作品全体では13年間の月日が流れます。
当初19歳の大学生だった主人公の「花(声優:宮崎あおい)」は、人間の姿で暮らす“おおかみおとこ(声優:大沢たかお)”に恋をすることに。
二人の間には雪の日に女の子が生まれ、雨の日に男の子が生まれ、それぞれ雪、雨と名づけられます。
しかし雨が生まれて間もなく“おおかみおとこ”である彼が死んでしまったために、花は一人で「おおかみこども」を育てていくことになります。
ここからが、花と雪と雨、三人の成長の物語の始まりです。



花が「まるで狼として生きるか人間として生きるか迷っているみたいだった」というように、幼い二人はおおかみになったり人間になったり、ポンポン変身しています。
活発で勝ち気な姉と、内気で臆病な弟。
この二人を人間として育てるかおおかみとして育てるか悩んだ末、花は自然豊かな山奥の古民家に移り住んで子育てをしていくことにします。
その開放的な環境で、二人がどう生きていくか少しずつ答えを見つけていってくれればと思ったのだと思います。
都会からいきなり大自然に環境が変わったことに活発な姉は大喜びし、臆病な弟は「もう帰ろうよ」と怖がっていました。

ボロボロの古民家を毎日少しずつ掃除し、直し、手入れしていく花。
畑も耕し作物も作ろうとしますが、これがなぜか枯れてしまい上手くいきません。
そんなとき花を助けてくれたのが、地域の人々。
もともとほとんど人がいないような田舎ですが、韮崎のおじいちゃん(声優:菅原文太)と呼ばれる頑固じいさんを筆頭に、みんなで花の助けになってくれます。
都会にはない人々の暖かさ、地域の助け合いが感じられる場面でした。

やがて姉の雪が小学校に入学することになり、「絶対におおかみには変身しない」と母と約束を交わします。
万が一「おおかみこども」だとバレれば大変なことになりますから。
今まで活発で「おおかみこども」らしくねずみや蛇を取って遊んでいた雪は、周りの女の子がそうではないことに気付かされ、とても恥ずかしい気持ちになります。
それからは自分も周りの女の子みたいにおしとやかでお洒落好きな女の子になろうと決意します。
これが雪にとっての転機でしたね
そのことを真顔で相談したら母は笑いながら「しょうがないなあ」と言い、雪のために青い花柄ワンピースを縫ってあげていました



一方の雨も次の年には小学校に入学するのですが、こちらは内気で臆病な性格のため、どこかクラスにも馴染めない感じです。
いじめられそうになっているところを姉の雪が飛んできて蹴散らしている場面もありました。
そして段々学校に行かなくなっていく雨ですが、代わりによく山に出かけるようになり、その山に住むアカギツネを「先生」と呼び、山の中で色々なことを教わっていきます。
これが雨にとっての転機
二人とも転機を迎え、今までとは少しずつ変わってきていたのでした。

そしてある時垣間見られる、姉弟の逆転。
活発で勝ち気だった雪は、ほかの女の子たちと同じになれるよう、頑張っておしとやかにしようと努めていました。
一方内気で臆病だった雨は、山に行って「先生」から色々なことを教わるうちに成長し、いつの間にか逞しく強くなっていました。
そんな二人が学校に行かない雨のことで喧嘩になったのですが、今まで活発だったはずの雪が雨に負けてしまいました。
喧嘩で弟に負け、泣く姉。
何だかこの場面は男の子と女の子のパワーの逆転が描かれていて印象に残りましたね。
いつまでも臆病な弟ではなかったのです。
そしてそれは姉弟それぞれが歩みつつある生き方の差でもありました。

とても印象的だったのが、物語の終盤、6年生になった雪が学校で「早く大人になりたい」と言っていた場面。
大雨の降る中、同級生の「草平」君と話しているときのことでした。
最初は分からなかったのですが、しばらくしてこの台詞に込められた意味に気付きました。
あれは人間・雪の11歳はまだ子供だけど、狼・雨の10歳はもう大人だという姉弟の「対比」の意味なんだと思います。

姉弟それぞれの、生き方の選択。
狼として生きるか、人間として生きるか。
それぞれが生き方を決め、羽ばたいたところで物語は終了。
とても心に残るクライマックスでした
雪も雨も自分で考えた生き方だし、母もそれを受け入れ、エールを送ります。
「しっかり生きて!!」
間違いなく素晴らしい良作だし、一人でも多くの人にこの母子の感動の物語を見てほしいなと思います
コメント (26)
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