読書日和

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「ポトスライムの船」津村記久子

2009-03-15 22:53:20 | 小説
今回ご紹介するのは「ポトスライムの船」(著:津村記久子)です。

-----内容-----
お金がなくても、思いっきり無理をしなくても、夢は毎日育ててゆける。
契約社員ナガセ29歳、彼女の目標は、自分の年収と同じ世界一周旅行の費用を貯めること、総額163万円。
なにげないのに新しい、さりげないのに面白い、私たちの文学。
第140回芥川賞受賞作。

-----感想-----
この作品は今年1月に芥川賞を受賞しました。
気になっていた作品だったので、今回ついに読むことにしました。
主人公はナガセという契約社員の女性です。
工場のラインで働く傍ら、友人が経営するカフェでパートをしたり、家で内職をしたりしています。
しかし、その年収は163万円。
何だかナガセの労働条件が、昨年ニュースでよく取り上げられた「ワーキングプア」の問題そのものだと思いました。
最近は派遣切りの影に隠れてしまっていますが、ワーキングプアも深刻な問題です。
ナガセは働きながら、節約のことを考える場面が何度もありました。
それでも物語の雰囲気は、暗くはなかったと思います。
工場のラインの仕事も、最初は時給800円のパートだったのが、今では月給13万8000円の契約社員になり、ラインの副リーダーに昇格したとありました。

工場のラインから企業の社長にまで上り詰めた例として、ドラマ「銭ゲバ」の蒲郡風太郎がいますが、あれとは正反対な生き方でした。
貧しい生活ですが、良き友人たちに恵まれて、慎ましやかに生きていました。
何を求めるかによって、生き方は変わってきます。
ナガセの場合は、特に大きなものは求めていなかったと思います。
そのため、地味ながらも慎ましやかな生き方になっていました。

小説の舞台は大阪でした。
友人たちとの会話は全て大阪弁だったので、最初はやや読みずらかったです
しかし大阪弁の「なあなあ」な感じの会話によって、だいぶ物語の雰囲気が和らいでいたと思います
ナガセも絶望するということはなくて、世界一周旅行の費用を貯めるために頑張っていました。
少ない年収の中から貯金に充てていくのは、けっこうな節約が必要です。
このあたりの節約の仕方は一般のサラリーマン、OLにも通ずるところがあるので、読んでいて現実的な描写だなと思いました。

著者の津村記久子さんは1978年生まれとありました。
大阪出身とあるので、作品の舞台も大阪にしたのだと思います。
78年世代といえば、浜崎あゆみ、高島彩などが思い浮かびます。
これからは78年世代を思い浮かべるとき、津村記久子さんの名前も登場することになりそうです


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コメント (6)
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