読書日和

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「アフターダーク」村上春樹

2009-03-21 12:55:43 | 小説
今回ご紹介するのは「アフターダーク」(著:村上春樹)です。

-----内容-----
時計の針が深夜零時を指すほんの少し前、都会にあるファミレスで熱心に本を読んでいる女性がいた。
フード付きパーカにブルージーンズという姿の彼女のもとに、ひとりの男性が近づいて声をかける。
そして、同じ時刻、ある視線が、もう一人の若い女性をとらえる。
新しい小説世界に向かう、村上春樹の長編。

-----感想-----
真夜中から空が白むまでの間の、不思議な物語でした。
時間としては数時間しか経過しませんが、中身はなかなか濃密だったように思います。
謎の多い物語でした。
蹴りたい背中のような人と人とのつながりを描いた作品とは少し違い、重力ピエロのようなミステリータッチな作品とも少し違いました。
両方の間に位置するような作品かなと思います。
それほど大きな事件は起きないものの、先の展開が気になる内容でした。
タイトルからやや重い物語を想像していましたが、意外と会話が軽妙で面白かったです。

物語は多きく二つに分かれていて、それぞれが別に進行していきました。
そのうちの一つは「時間」を視点にして描かれています。
我々は目の前で起きていることに干渉することはできない、というようなことが書かれていました。
物語の語り手が時間というのは、今まで読んだことがなかったと思います。
また、この作品では場面が変わるごとに時計の絵が出てきて、徐々に時間が進んでいきます。
夜明けに向ってゆっくりと進んでいく様子が伝わってきました。

明け方の時間帯についての表現が印象に残りました。

新しい一日がすぐ近くまでやってきているが、古い一日もまだ重い裾を引きずっている。
海の水と川の水が河口で勢いを争うように、新しい時間と古い時間がせめぎ合い、入り混じる。

これは結構わかりやすかったです。
明け方の時間帯は、起き出した人たちにとっては新しい一日で、活動していた人たちにとっては終わりゆく一日です。
やがては新しい時間がせめぎ合いに勝ち、また一日が始まっていきます。
謎の残る作品でしたが、全体としては時間を意識した作品なのかなと思いました。


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コメント (2)
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