湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

泳ぐように飛んでいた

2010-04-13 21:12:06 | 自分四季報


「あぶない!」
ビーチバリヤーが叫んだときには、すでにトンビは急上昇を始めていた。
見上げると澄んだ青空を背景に、クチバシにはパンのシルエットが見える。ボードウォークに腰掛けていたおじさんサーファーから強奪したものだ。
「ひとが盗られるところは見たことあるけどよー、自分がやられたのは初めてだよ」
そばを通りかかった若いサーファーに、そう話す声が聞こえてきた。
僕もここではよくパンをかじったりするけれど、実はこれまでトンビの存在をあまり意識したことがなかった。もちろん、旋回している姿はいつも見ている。ところが、ピーーヒョロロ~という江ノ島あたりではよく耳にする鳴き声も、なぜかこの辺りでは聞いたことがなかったからだ。
すっかり油断させておいて、いきなりかっさらう。
それが、やつらのやり方だったのだ(笑)。
銀色に輝く海、真夏のような格好でトレーニングに励むアスリートたち、そして散歩をする人々の上を、さっきのトンビは何事もなかったかのように悠然と飛び回っている。次の獲物を狙っているのか、それとも今日の陽気を楽しんでいるのか。
その姿は羽ばたくというよりも、心地よい風に身を任せているだけようにも見えるのだった。