ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 小保方晴子著 「あの日」 (講談社 2016年1月)

2017年05月02日 | 書評
STAP幹細胞問題をめぐる前代未聞の理研ODBスキャンダルはどうして起こったのか 第7回 最終回

4) 仕組まれた罠 理研検証実験と第2次調査委員会

 2014年6月11日ネットのブログ上で、理研総合生命科学研究センターの研究員である遠藤高帆さんが、STAP細胞はES細胞ではないかという疑惑を出した。そして同月16日に若山先生が記者会見をして、STAP幹細胞を第3者機関によって解析した結果、若山研には存在しないマウス細胞からできていたと発表した。17日には理研CDBの公表があり、小保方氏の保存するEA細胞の系統が、先の若山氏の発表したSTAP幹細胞の解析と一致したという。kの一連の発表は偶然ではなく、発表時期を綿密に打ち合わせて、CDB幹部は若山氏と情報を共有していたのである。理研CDBの竹市氏は若山先生の発表内容の詳細を共有しており、理研CDB幹部と若山先生は一枚岩であることがわかった。若山先生が持っていないES細胞を小保方氏が持てるわけもなく、若山先生から渡されたSTAP幹細胞や同一系統のES細胞を小保方氏が保有してるのは当然である。これはCDBの幹部が仕組んだ罠であった。理研の遠藤高帆氏、林先生と若山研の大日向氏らは連絡網でストーリーを作っていた形跡が伺えた。その情報は16日中にNHKを始め報道機関にリークされ、メディアを通じて「小保方氏のES細胞混入のストーリー」が形成された。マウスの系統管理や細胞の管理はすべて若山先生が行っていたので、小保方氏が所持していたES細胞を混入させたと邪推するように世論を誘導することにCDB幹部が協力したといえる。細胞のサンプルは2014年3月の時点で証拠保全され理研が管理していた。第二次調査委員会によって、若山先生が「成功したキメラ」は既存のES細胞であることが報告された。また若山先生がSTAP細胞から樹立したというSTAP幹細胞も、以前若山研で作製されたl既存のES細胞であることも報告された。つまりES細胞を使って株の樹立やキメラ成功を偽造したのは若山先生であることは明白である。キメラ実験やSTAP細胞の樹立が成功したという実権は若山氏の四季で行われている。また6月16日の記者会見で発表した細胞の解析結果の解釈が間違いであることが理研の調査でわかった。若山研が保有するマウスである事が判明したのだ。若や先生の発表は二転三転し嘘がぼろぼろ出始めた。こうしてES細胞混入疑惑は真偽不明瞭なままうやむやになった。2014年6月26日理研改革委員会の提言を受け、検証実験に小保方氏が参加出来るようになった。懲戒処分の停止、理研に残っている試料の再調査、そして検証実験が理研理事より提案された。小保方氏の検証実験は11月末までとされ、丹羽先生が進めている検証実験とは独立して進め、「Oct4陽性細胞塊」が確認されれば、実験を継続するというものであった。6月30日に小保方氏の実験参加が決まった。理研CDB内部の批判圧力が高まる中で、7月1日より実験が開始された。同日に行われた記者会見では小保方氏が魔法を使わないように、カメラにや立会人による24時間徹底した監視を行うと、竹市先生は話した。そしてあらゆる小窓や孔の封鎖、持ち込み物の記録、行動範囲の監視など、科学界にはありえないような非科学的迷信に迷わされるほど理研幹部は世論に煽動されていたのである。緑色に光る「Oct4陽性細胞塊」を久しぶりに見たと小保方氏は記録している。これで実験は翌年3月まで行える条件になっていた。ただSTAP幹細胞検証実験成功の条件は、若山先生が作ったとされる「キメラマウス」の作製成功に定められた。7月中旬、丹波先生の実証実験でも、ヒト細胞を用いた検証実験で「肝臓細胞をATP酸処理をした細胞塊から、ES細胞と同等なくらい多能性遺伝子発現が確認された」という報告があった。このデーターは理研ホームページから確認できる。続いて8月には脾臓由来細胞のATP酸処理した細胞塊の遺伝子解析が行われ、一定の資源性をもって多能性遺伝子の発現とOct4たんぱく質の発現があったという報告が出た。これによって検証実験の第1段階だった「Oct4陽性細胞塊」の確認の要件を満たすものであった。STAP現象は確かに再現したのである。ところが8月5日朝、笹井先生が自殺されたという報が飛び込んんだ。「おぼかたさん宛に一通」の遺書が残されていることが分かったが、小保方氏はその場で失神した。丹波先生、相澤先生からいたわりの電話があった。8月下旬に分子生物学会の大隈理事長が「本学会が笹井氏を追い込んだという批判は不当である」という弁明声明が出された。分子生物学会研究者が絡んだ7月のNHKスペシャル報道を強く意識した上での発言である。「Oct4陽性細胞塊」実証の要件は、マウス細胞を取り出して、STAP細胞塊をつくるところまでであって、作製されたSTAP細胞塊が多能性遺伝子を発現しているかどうかは第3者によって行われた。小保方氏の体力・精神力は限界に達していたようで、立っていることもままならない状態であった。理研の河井理事から第2次調査委員会設置の説明があった。第2次調査委員会では、すべての図表に対する論文不正の調査と、提出した試料を解析し研究不正の調査を行うという。結論ありきの調査でどの図表が不正判定するかは決まっていた。3回の聴収が行われたが、若山氏の嘘の弁明ばかりに答えるのも、体力の限界を超えた小保方氏の朦朧とした意識では、うなずけば不正を認めたと取られ、自白強要の取調室の様相であったと小保方氏は回想している。絶対に情報は漏れないように調査委員に誓約書を書かせ殿であるが、調査委員会のやりとりがNHKにリークされていたことも明らかになった。2015年3月24日NHKの藤原記者の「小保方氏の証言」報道がなされた。調査委員会の結論は「STAP細胞現象が再現されなかった」という言い方は正確ではなく、再現できなかったのは若山先生担当の「目視で判定できるキメラマウス作製」で、小保方氏は「Oct4陽性細胞塊」の第1段階までが責任範囲で、STAP幹細胞の株化やキメラマウス作製には小保方氏の責任はない。若山氏担当のキメラマウス作製にそもそも嘘があったとするならできないのが当然であった。21014年12月15日小保方氏は理研に辞表を提出した。2015年11月の早稲田大学理工学部による小保方氏の博士号剥奪は、世論に迎合した全く茶番劇である。語るに落ちるので省略する。

(完)