アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「最悪の日韓関係」の責任はどちらにあるのか

2022年03月14日 | 朝鮮半島の歴史・政治と日本.

     
 9日投票の韓国大統領選で、保守系最大野党「国民の力」のユンソクヨル(尹錫悦)氏が当選したことに対し、岸田文雄首相は10日、記者団にこう語りました。

「いま国際社会が時代を画するような大きな変化に見舞われている。健全な日韓関係は地域、世界の平和、安定、繁栄において不可欠。日米韓の連携も重要だ」

 「ウクライナ戦争」に乗じて日米軍事同盟(安保条約)と韓米軍事同盟を連結させ、アメリカ中心の日米韓軍事一体化を進めようとするものです。

 さらに、「元徴用工や元慰安婦の問題」について聞かれ、こう答えました。

「このまま放置することはできない。国と国の間の約束を守るという日本の一貫した立場に基づいて健全な関係を取り戻す」

 岸田氏が言う「国と国の約束」とは、安倍晋三政権以来、「元徴用工」問題では1965年の「日韓請求権協定」、「元慰安婦」問題は2015年の「日韓合意」を指します。
 「国交正常化以降で最悪」(毎日新聞)といわれる日韓関係。その責任は「約束」を守らない韓国側にある、というわけです。

 こうした主張は首相だけでなく、日本のメディアにほぼ共通しています。大統領選に対する各紙の社説はこうです(「産経」「読売」「日経」は検証対象外)。

「慰安婦問題に関する合意は骨抜きにされた。…元徴用工への賠償を命じた韓国最高裁の判決を巡っても、文在寅(ムンジェイン)政権は日本側の懸念に応えるような措置を取らなかった」(11日付毎日新聞)

「日本政府が最も警戒するのは、賠償を命じられた日本企業の資産の現金化措置である。尹氏はまず、現金化が好ましくないとの新政権の考えを明示すべきだ」(12日付朝日新聞)

「文大統領は…国家間の合意を骨抜きにした。…15年の日韓合意を軸に…決着を模索してほしい」(12日付沖縄タイムス)

 岸田首相とこれらメディアの主張は、加害者と被害者を逆転させ、日本の加害責任を棚上げするものです。

「元徴用工=強制動員」問題も、「元慰安婦=戦時性奴隷」問題も、元凶は日本の植民地支配です。日本はいまだにその責任を明確にした謝罪も賠償も行っていません。

 そして「請求権協定」(1965)も「慰安婦合意」(2015)も、いずれも韓国の保守政権(パクチョンヒ、パククネ父娘)と自民党政権によって結ばれた国家間の「政治決着」です。肝心な被害者本人への謝罪・賠償は度外視されています。ここにも市民(当事者)をないがしろにする「国家」の横暴があります。韓国の被害者、市民から批判が噴出しているのは当然です。

 政府に追従する社説が溢れている中で、琉球新報の社説(13日付)は注目されます。

「事の発端は日本による植民地支配にある。歴史問題の解決には被害者である当事者が納得する救済が必要だ。日本政府は被害者の立場に立った対応で政府間の溝を埋めるべきだ」

 「最悪の日韓関係」の責任は日本の側にあります。関係の「正常化」は、日本側が植民地支配の歴史的責任を明確に認識し、被害者に対する謝罪・賠償を行うことを抜きにはありえません。朝鮮民主主義人民共和国との関係正常化においても同様です。

 それは日本政府の責任であり、政府にそれをやらせるのは、主権者である日本市民の責任です。韓国が保守政権に戻ることにより、日本側の責任はますます重くなったと言えるでしょう。

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