アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

故・岡正治氏の性暴力で資料館が休館の衝撃

2023年10月11日 | ジェンダー・性暴力と日本社会
  JR長崎駅から徒歩10分ほどの所に、「岡まさはる記念長崎平和資料館」はあります。帝国日本の侵略戦争・植民地支配の加害責任に照射した日本で稀有な資料館です。全国から修学旅行生も訪れています。

 その資料館のHPに10日、「当資料館はしばらく休館いたします」として、次の文章が掲載されました(以下、全文)。

< このたび、私たちが資料館の名前に冠している平和運動家の故・岡正治が、生前、性暴力に及んでいたことが、被害者の方の証言により明らかになりました。

 理事会の中には2020年の時点で情報を得ていた者がいたにもかかわらず、対応がこのように遅れたことについて、資料館として深く謝罪いたします。

 その背景には、権威ある男性を疑わず被害者の証言を重大に捉えなかった、自分達の内面化された性差別意識やジェンダーバイアスがあった、と自覚しなければならないと思います。

 当資料館はいかなる性暴力も容認しません。今回の件を受け、館名の変更や展示の見直しを含む対応をこれから行っていきます。そのために、資料館を2023年10月10日以降、しばらく休館いたします。

 すでに被害者の方には当資料館として文章で謝罪の意を表明いたしました。また、当資料館のウェブサイトなどを通して、社会的な責任としてこの事実を公表しますが、二次被害を防ぎ、被害者のプライバシーを守ることを第一とするため、被害者の方の詮索などはお控えくださいますようお願いいたします。

 また、これまで資料館に心を寄せ、支援してくださった方々に対しても、対応や告知が遅れたことを申し訳なく感じています。当資料館は、社会正義や人権を重んじる社会運動の中にも根強く存在する性差別に対して、常に自覚的であり、そして改善のために発言・発信・行動をしていく資料館であるように変わっていきたいと思っています。今後の当資料館の対応に関しましては、検討した内容をまた改めてお知らせいたします。

 2023年10月10日
    岡まさはる記念長崎平和資料館 理事長 崎山昇、理事会一同 >

 岡正治氏(1918~94)は、牧師であり、長崎市議も務め、長崎・在日朝鮮人の人権を守る会の代表でもありました。資料館は岡氏の遺志を継いで、同氏が死去した翌年の95年に開館しました。

 今回明らかになった岡氏の性暴力について、長崎新聞はこう報じています。

「資料館を運営する団体によると、岡氏の知人女性が、同意なく抱きつくなどの行為があったと3年前にインターネットの投稿サイトで被害を告発したことから女性から直接、聞き取りを行うなど調査を進めた結果、9月女性の被害を認め文書で謝罪した」(9日付長崎新聞電子版)

 私は同資料館には2度訪れ、その優れた展示に感銘を受けました。資料館が発行する「たより」も郵送してもらっています。
 今回の発表には衝撃を受けました。同時に、ありえないことではないとも思いました。広河隆一氏(フォトジャーナリスト)や「民主的弁護士」の性暴力が記憶に新しいからです。「平和・民主主義」を唱える人物・陣営の中で絶えない性暴力。その根源を徹底的に抉り出していかねばなりません。

 今回の件は、さらに真相・経緯が明らかにされる必要があります。資料館の対応はこれからが正念場といえます。

 確かなことは、日本の侵略戦争・植民地支配の加害責任を正面から追及している資料館はきわめて貴重な存在であり、なくしてはならないということです。資料館の再生を期待し、見守っていきたいと思います。
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