JR福山駅の近くに福山市人権平和資料館があります。
1階は福山空襲を中心とした戦争・平和問題。2回は(未解放)問題を考えるスペースです。
立地といい展示内容といい、折々の企画といい、素晴らしいものです。
その人権平和資料館が来月で20周年を迎えるのを記念し、このほど、「平和を求めて」と題する記念誌(A4判170㌻、1100部)を発行しました。
写真集と言っていいほどカラー写真を駆使した、立派なものです。
その内容に驚きました。
第2章「知られざる福山海軍航空隊」では、12㌻にわたり海軍航空隊を紹介しています。しかしそれは「二度と戦争を繰り返さないために、何をなすべきか考えてみたい」というコメントによってまだ救われています。
問題は第3章「戦争遺跡」です。56㌻にわたって福山市内にある「戦争遺跡」が紹介されていますが、その中になんと「忠魂碑」が29個もあるのです。
そのほか、護国神社・忠魂殿が16、さらに「八紘一宇」の碑が2つ。「行幸」碑が4つ。さらに奉安殿(昭和天皇・皇后の写真を納めた小屋)の3枚の写真まで。
言うまでもなく、これらはすべて、戦前・戦中の天皇制を象徴する「天皇遺跡」です。
福山1市にこれだけ「忠魂碑」はじめ天皇碑があることにまず驚きました。これが「草の根の天皇制国家」の姿なのかと改めて痛感しました。
みなさんの住む市町村はどうでしょうか?
さらに驚いたのは、こうした多くの天皇碑を人権平和資料館の記念誌が網羅していることです。
この章には、「平和の大切さを伝えていきたい」とコメントされていますが、大量の天皇碑でいったいどう「平和の大切さ」を伝えようというのでしょうか。
記念誌は「忠魂碑」について、「国がおし進めた戦争によって犠牲になった人々の魂をまつるために立てられた碑」と説明し、天皇制には一言も触れていません。
記念誌は、市内の小中学校や公民館に配布され、戦争に関する副読本としても活用されるといいます。
人権平和資料館の記念誌が、「天皇制賛美」の写真集になってはいけません。
忠魂碑など「天皇遺跡」を紹介するなら、太平洋戦争、さらには日清戦争以後の日本の戦争が、その天皇・天皇制の下で強行された侵略戦争であったことを明記する必要があるのではないでしょうか。
天皇制こそ、「人権」と「平和」の対極にあるものなのですから。