3日のETV特集は「二風谷に生まれて―アイヌ家族100年の物語」だった。内容については別途振り返ろう。ここでは感想のみ(敬称略)。
北海道平取町のアイヌの先住地に、和人(日本人)の政府がダムを造った。神聖な場所(チノミシリ)を切り崩して(1973年)。それと闘った、祖父・貝澤正、父・耕一、そして太一の3世代の軌跡だ。
今のアイヌの若者たちはアイヌ民族ゆえの差別はほとんど感じたことがないという。日本人も差別をしている実感はないだろう。漫画「ゴールデンカムイ」などでアイヌに対する理解も広がっているといわれる。
はたしてそれは本当か。
耕一は言う。「30年たっても変わっていない。単一民族思想は今も(日本に)残っている」
正(1992年他界)は神聖な森を残すために借金をして土地を買い、木を植えた。耕一はそれを3倍に広げた(約90㌶)。
耕一は言う。「木は根が絡み合って大地を支える。だから雑木林がいい。木はゆっくり育つ。人間は急ぎ過ぎるんだよ」
二風谷(にぶたに)はアイヌ語で「ニプタイ」、「木の生い茂るところ」という意味だ。
日本の侵略・植民地支配は、朝鮮半島、台湾、沖縄そして北海道のアイヌだ。アイヌに対する加害の歴史と現在に、それなりに関心は持ってきたが、向き合ってくることがきわめて不十分だったと、今さらながら思う。
そして、世界が戦争と環境破壊に包まれている今、日本が戦争国家への道を猛進している今こそ、日本人はアイヌの文化と思想に学ぶべきだと痛感する。
<今週のことば>
宇梶剛士さん(俳優) アイヌらしいことは、人間らしいことだ
「アイヌ民族はいろんなものを神に見立てて「カムイ」と敬い、大切にする。森羅万象を粗末にすることは、未来を粗末にすることだという教えがあるからだ。人の間に階層がなく、皆で生きている感じがする。アイヌらしいことは、人間らしいことだと思う。
俺は先人からアイヌの温かさや人なつこさ、不屈やリスペクトの精神を与えられた。そういうことを大切に、人生を歩んでいくのは豊かで楽しいじゃないか」(3日付京都新聞夕刊。ETV特集とは無関係の記事)