アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

安倍晋三と伊藤博文

2018年01月02日 | 日本の近現代史

     

 「本年は、明治維新から、150年の節目の年です」

 安倍晋三首相の「年頭所感」はこの言葉から始まりました。中身は「アベノミクス」礼賛、「一億総活躍」のスローガンなど、目新しいものはありません。
 しかし、気になることがあります。わずか1200字余の「所感」の中で、「日本人」という言葉が5回も使われているのです。そのほかに「国民」が4回、「国難」が2回、そして「新たな国創り」が3回です。

 安倍氏の「国創り」の念頭には「日本人」しかなく、約50万人にのぼる在日朝鮮・韓国人をはじめとする日本在住の外国人、さらに東アジア諸国はじめ外国との友好・協力の視点は皆無です。

 経済産業省は昨年3月、「世界が驚くニッポン!」という冊子を発行して「ニッポン礼賛」をふりまき、それこそ世界を驚かせました。安倍氏の「年頭所感」がその延長線上にあることは明白です。

 見過ごせないのは、その「ニッポン礼賛」・偏狭ナショナリズムが、「明治維新150年」の「明治礼賛」と結合していることです。

 「安倍年頭所感」は、「明治維新」は「国難とも呼ぶべき危機を克服するため」だった、「今また日本は…国難とも呼ぶべき危機に直面」している、「すべては私たち日本人の志と熱意にかかっている」、「150年前の先人たちと同じように…行動を起こすことができるかどうかにかかっている」という筋立てです。

 こうした「明治礼賛」は安倍氏だけでなくメディアにも蔓延していると昨日のブログで書きましたが、もう1つ、典型的な例をあげます。
 東京新聞の社説(1日付)は、「明治150年と民主主義」と題し、「明治維新はさまざまなものをもたらしましたが、その最大のものの一つは民主主義ではなかったか」とし、「主役は伊藤博文。初代内閣総理大臣、枢密院議長として明治憲法起草…足軽出身…民衆の知恵も力も知っていた」と、伊藤を〝庶民宰相”、「民主主義」の実現者であったかのように美化しています。

 とんでもない歴史の隠ぺい・改ざんです。伊藤には(東京新聞が触れない)重大な経歴があります。「初代韓国統監」(1906年就任)です。
 絶対主義天皇制の明治政府は1904年、朝鮮半島侵略のため出兵し、日露戦争の結果、朝鮮支配をねらって朝鮮政府に条約を突きつけました(第二次日韓協約)。その条約の中心が「統監府」の設置でした。

 「日本が準備した保護条約案の内容は、朝鮮の外交権を日本が奪取して欧米との直接接触をたち、従来の内政干渉を確認するとともに、『顧問』等を統括する日本の機関として『統監府』を新設し、その長である『統監』は朝鮮皇帝への『拝謁権(皇帝に直接会って要求をつきつける権利)』をもつというものであった。この保護国・間接統治体制は…実質的には植民地支配とかわりがない」(梶村秀樹著『朝鮮史』講談社現代新書)

 武力(軍隊)を背景に、朝鮮侵略・植民地支配の先頭に立ったのが伊藤でした。

 「この条約交渉の特命全権大使は、元老伊藤博文が自らかってでた。…伊藤は、駐屯日本軍に王宮を包囲させたうえで、直接朝鮮政府の閣議の席にのりこみ、大臣ひとりひとりに脅迫的に賛否を答えさせ、自分でかってに賛成多数と決めて、その状態のまま属官に『国璽(国の正式の印章)』を取ってこさせ、その晩のうちに『調印』させてしまった。…このような『調印』の経緯のため、『保護条約』は国際法上無効であり、したがって、それを根拠として進められた一九四五年までの植民地統治は、全期間を通じて不法占拠状態とみなすべきだという立論が可能になるのである」(前掲『朝鮮史』)

 朝鮮を侵略する思想と政策は明治維新当時からありました。「征韓論」です(その急先鋒が西郷隆盛であり、NHKの今年の大河ドラマの主人公がその西郷です=写真右)。

 「明治のはじめから『征韓論』という朝鮮侵略をめざす主張が日本にはあり、実際に朝鮮を征服するための政策が日本政府の手で一貫して実行されつづけました。朝鮮を『開国』させるきっかけをつくった江華島事件(1875年)からはじまり、日清戦争、日露戦争をへて、ついに日本は、朝鮮を滅ぼして、丸ごと自分の国の領土に組み入れてしまったのです。…日本は朝鮮の犠牲の上で強国の仲間入りをしたということができるのです。…『満州事変』から敗戦までずるずると長びいた戦争は、実は日本の朝鮮支配の問題と根っこのところで分かちがたく結びついていたのです。…日本の近現代史を筋道だてて理解するには、日本の朝鮮侵略の問題を抜きにしては考えられないのではないか、私はそう考えています」(中塚明著『日本と韓国・朝鮮の歴史』高文研)

 安倍晋三氏と伊藤博文の共通点は少なくありません。同じ山口県の出身であり、吉田松陰の信奉者です。そして安倍氏はいま、アメリカとともに、朝鮮に対する敵視・圧力を強めています。
 伊藤博文が先導した朝鮮侵略、朝鮮を犠牲にした「日本の大国化」という暗黒の歴史を、安倍氏に繰り返させてはなりません。

 

 

 

 

 

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