アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

ウクライナ戦争・第三世界の見方<上>アメリカ・NATOの偽善を批判

2022年04月25日 | 国家と戦争
  

 岸田文雄首相はロシアへ制裁を加える際、繰り返し「国際社会とともに」と口にします。しかし岸田首相の「国際社会」は軍事同盟を結んでいるアメリカを中心とする一部「西側」社会にすぎません。ほんとうの国際社会は、けっして単純な「ロシア悪魔」論ではありません。

 雑誌「世界」は今月18日臨時増刊「ウクライナ侵略戦争―世界秩序の危機」を発行しました。その中に、「資料と解説 異なる視点―第三世界とウクライナ危機」(訳・解説=栗田禎子千葉大教授)として、国連などで表明された第三勢力の見解が紹介されています。抜粋します(太字は私)。

◎キューバ(3月1日、国連総会緊急特別会合における演説)

 ウクライナの目下の状況に関する厳密かつ誠実な検証は、武力の行使と法的諸原則や国際的規範の遵守欠如につながることになった諸要因を注意深く評価することなしには不可能である。

 合衆国がNATOをロシア連邦の国境に向けて着々と拡大し続けようと決心したことが、かつてない規模の諸影響を伴うシナリオ―それは避けられたはずなのだが―を引き起こした。

 合衆国とNATOが最近数カ月にロシア連邦に隣接する諸地域に対して行った軍事的動き、さらにそれに先立ってウクライナに新式の兵器の供与を行っており、要は軍事的包囲網を形成していたことはよく知られている。

 安全の保証を求めるロシア連邦の根拠ある要求を何十年も無視し続けておいて、ロシアがその国家的安全に対する直接の脅威を前にして無防備なままであろうと想定することは誤りである。平和は、当事国を包囲することでは達成できない

 キューバは偽善と二重基準を拒否する。1999年に合衆国とNATOがユーゴスラビアに対する大規模攻撃を行ったことを想起せねばならない。合衆国とその一部の同盟国は、何度も武力を行使してきた。

 キューバは目下のヨーロッパにおける危機が平和的手段で解決され、全当事者の安全と主権、地域および国際の平和、安定と安全が保証されるよう、真剣、建設的、かつ現実的な外交的解決を行うことを主張しつづける。

◎南アフリカ(3月1日、国連総会緊急特別会合における演説)

 われわれは全当事者に対し、事態に対し妥協の精神でアプローチすること、全当事者が人権を支持し、国際法と国際人道法の下で彼らの義務を遵守することを要請する。

 われわれはさらに、すべての紛争が同じ注意を払われていないことにも憂慮をもって言及する。実際、ウクライナにこれほどの注意が集中している一方で、安保理の懸案になっている長期にわたる紛争がいくつもあり、解決されないまま続いている。他の長期紛争―そのなかでは国連憲章と人権が蹂躙されている―に対しても同等の関心を注ぐことが必要である。

 最後に南アフリカは、アフリカ連合(AU)委員会がウクライナ国境におけるアフリカ諸国民やアフリカ系の人々に対する処遇について示した懸念を支持する。かれらの一部は国境を越えて自由に移動することを許されていない。われわれはヨーロッパ諸国にこの状況の解決を要請する。紛争時にはすべての人々が国境を越える権利があるからである。

 栗田禎子氏は、南アフリカ演説が指摘する「他の長期紛争」の代表例として「パレスチナのガザ地区」を挙げ、「イスラエルによる封鎖・空爆下で、マリウポリのような事態がほとんど恒常的に繰り返されてきた」と解説。
 最後のアフリカ系の人びとに対する差別についての指摘は、「ウクライナ問題をめぐる欧米諸国の取り組み・論調全体に見られる「人種主義」的な傾向への批判をにじませたもの」と説明しています。

 キューバ、南アフリカはともに、国連総会の「ロシア非難決議」(3月2日)に棄権した35カ国の中の2カ国です。

 上記の主張にみられる共通した特徴は、今回の戦争はロシア、ウクライナだけでなく、アメリカ、NATO諸国も「当事者」であると断じ、その「偽善と二重基準」を批判、「全当事者」に国際法、国際人道法の厳守を要求していることです。

 そして事態の「厳密かつ誠実な検証」のためには、「諸要因を注意深く評価すること」が必要であり、「欧米諸国の取り組み・論調全体に見られる「人種主義」的な傾向」にも批判を向けなければならないと強調しています。

 冷静・理性的で公平・公正な主張と言えるのではないでしょうか。(明日につづく)
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