アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「2つの戦争」を停める2つの視点

2023年12月18日 | 国家と戦争
  

 ウクライナ(2022.2.24~)とガザ(2023.10.7~)で続いている「2つの戦争」。犠牲者が増え続ける一方、停戦へ向けた動きが見えてきません。即時停戦を阻んでいるものは何か、2つの論稿が重要な視点を提示しています。

 イスラエルは「ハマスのテロに対する反撃だ」として無差別空爆・攻撃を正当化し、アメリカはそれを支援し、ドイツなど欧州各国も支持しています。その「テロ」について、隠岐さや香氏(科学史家)はこう述べています。

「テロリズムとは無差別な暴力という出来事のみを切り取って示す表現である。それは手段としての暴力を名指しはするが、その目的や背景を見えなくしてしまう。だが実際にはテロ行為には常に何らかの目的があるので、根本となる問題が消えない限り、新たなテロ志願者は増え続ける。これが各国の直面する現実である。…ここは改めて「人命の尊重」という原則に立ち返り、停戦を心から訴えたい」(11月22日付京都新聞「論考2023」=共同)

 ウクライナのゼレンスキー大統領が即時停戦を拒否し「勝利するまで戦う」姿勢を貫いているのは、「ロシアの侵略を許すことになる」からという主張です。これについて松里公孝氏(東京大学大学院教授)はこう指摘します。

「露ウ戦争は膨大な人命の犠牲を生んでおり、人道的な観点からはすぐに停戦しなければならない。…いまの戦線を前提にした停戦論に対しては、「ロシアの侵略を追認するのか」という正義論からの批判がなされる。これは停戦協定と和平条約を混同した議論である。長期的な和平のためには正議論が必要だが、停戦は、「これ以上は戦えない」と交戦国の少なくとも片方が判断することによってなされるのである。…停戦交渉に正議論を持ち込むと歴史の議論になり、きりがなくなるので、持ち込むべきではないのである」(「世界」2024年1月号所収「正義論では露ウ戦争は止められない」)

 「テロ」とは何か。領土・国家の「正義」をどう貫くか。それにいずれも深い歴史的背景があり、双方に言い分があります。それは曖昧にしてはならないけれど、それを前面に立てれば、戦闘は止まらない。松里氏の言葉を借りればいきなり「和平条約」を締結しようとしても無理だということです。

 前面に立てて最優先すべきは、「人命の尊重」(隠岐氏)であり、「人道的な観点」(松里氏)です。
 この原点に立ち返って、イスラエルには無条件でジェノサイドを止めさせる。ウクライナ戦争では停戦協定を締結する。それが、当事者(国)はもちろん、国際社会全体にとっての急務です。
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