18~19日にかけて各メディアはいっせいに「今月の世論調査」結果を発表しました。岸田内閣の支持率が20%台で過去最低を更新した、という結果で共通しています。
メディアの世論調査は質問の仕方によっても数字が大きく変わり、けっして絶対的なものではありません。あくまで参考情報ですが、それにしても見過ごせない問題があります。
それは、多くのメディアが「次の総理・総裁は誰がふさわしいか?」という質問項目を設けていることです(朝日新聞は「誰が首相にふさわしいと思うか?」、共同通信は「次の自民党総裁にふさわしいのは誰か?」)。この「調査」には多くの問題があります。
第1に、複数の自民党国会議員をリストアップし、その中から「次の首相」を選ばせることは、自民党議員の人気投票、メディアによる自民党テコ入れに他なりません。
第2に、「次の首相」も自民党議員という前提は、自民党による政権たらい回しをメディアが是認・推進することになります。
第3に、それは、現自民党政権に代わる新たな政権の樹立(政権交代)を目指している野党勢力に対する打撃であり、主権者(有権者市民)の政権選択の権利を侵害するものです。
第4に、この調査は同じ自民党内で「次の首相」を競わせ、党内の派閥抗争を煽ることになります。
第5に、自民党内の派閥抗争・権力争いを追いかける「政局報道」は、政策本位の報道に逆行するメディアの宿痾ですが、この質問項目はその欠陥を助長します。
第6に、憲法の議院内閣制においては、首相は国会が指名します(第67条)。通常第1党の党首か、政党連立の代表が指名されます。「人気」がある人物が首相になるわけではありません。そこが大統領制との大きな違いです。メディアが「次の首相」を訊くこと(人気投票)は議院内閣制に反し、ポピュリズムを煽ることになります。
メディアは以上のような問題をどう考えているのでしょうか。毎月恒例で行っている「世論調査」自体が「世論」の誘導・煽動になる危険性をメディアは自覚する必要があります。
「次の総理・総裁は誰がふさわしいか」の「世論調査」は直ちにやめるべきです。