アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

皇室情報発信強化と「批判の自由」

2023年01月05日 | 天皇制と政権
   

 政府・宮内庁は今年4月、インターネット上の皇室情報発信を強化するため「広報室」を新たに設けます。
 その狙いは、「SNSを含めた新たな情報発信の手法を検討する「プッシュ型」の発信をすることで国民に皇室への理解を深めてもらうとともに、「虚偽の情報による誹謗中傷」を減らしていきたい考え」(2022年12月31日付朝日新聞デジタル)だと報じられています。

 この動きには2つの面で警戒が必要です。

 1つは、皇室情報を市民の日常生活に浸透させることによって、天皇制の維持・強化を図る狙いです。

「宮内庁幹部によると、これまではホームページ上で、ほぼ日程のみを掲載していた皇室の日々の活動を、詳しい説明とともに、写真や動画を添えて速やかに発信することが考えられている」(同朝日新聞デジタル)

 イギリス王室は、王族が個人のアカウントを持って盛んに発信しています。何かと英王室を模範としている日本の皇室が、この点でも英王室に倣って個人のアカウントを持つ可能性も考えられます。

 もう1つの問題は、「誹謗中傷を減らす」という名目で、皇室・天皇制に対する「批判の自由」が抑圧される危険性があることです。

 秋篠宮は一昨年の「誕生日会見」(2021年11月25日)でこう述べました。

「記事に対して反論を出す場合にはですね,何かやはり一定のきちんとした基準を設けて…それを超えたときには例えば反論をする。何かそういう基準作りをしていく必要が私はあると思います」(宮内庁HPより)

 直接的には週刊誌の皇室記事について述べたものですが、「一定の基準」が皇室・天皇制に対する論評・批判記事全般に適用される恐れは十分あります。

 河西秀哉名古屋大准教授(憲法)は、「(宮内庁の)情報発信の中身と頻度によっては、過度な情報操作につながり、自由な報道や発言の抑制につながる恐れもある」と警鐘を鳴らしています(同朝日新聞デジタル)

 ここで想起する必要があるのは、昨年6月、「侮辱罪」を厳罰化する刑法「改正」が自民、公明、維新、国民民主によって強行されたことです(2022年6月15日のブログ参照)。

「侮辱罪」の厳罰化は、「批判の自由」「言論の自由」の抑圧を強化する危険性を持っています。
 山田健太専修大教授(言論法)は、「批判の自由は民主主義の根幹」だとし、「言論が弾圧された戦争の反省を踏まえ、公権力は表現行為には抑制的に対応してきた。侮辱罪の厳罰化は歴史を逆回転させており、そのことに社会が気付いていない恐ろしさがある」と指摘しました(2022年6月14日付共同配信)

「批判の自由」「言論の自由」の抑圧・弾圧が軍事国家体制づくりの重要な柱であることは歴史が示すところです。

 皇室・天皇制を市民生活に浸透させ、「批判の自由」の抑圧(現代版「不敬罪」)につながりかねない皇室情報発信強化が、「軍拡(安保)3文書」の閣議決定(2022年12月16日)と相前後して目論まれていることは、けっして偶然ではないでしょう。
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