アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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トランプ勝利<下>日本を覆う「日米軍事同盟タブー」

2016年11月14日 | 日米安保体制と平和・民主主義

    

 「米軍基地負担」など「日米同盟」に関するトランプ氏の発言が今後どう修正・変化するかは不透明です。しかし確かなことは、今回の米大統領選を契機に日本の私たちが考えるべき最大の問題は、今後の日米関係のあり方、言い換えれば日米軍事同盟(日米安保条約体制)の再検討ではないでしょうか。

 「世界の警察官になるべきではない」という米大統領が誕生することは、たとえそれが今後撤回・修正されるとしても、日米軍事同盟にとっては最大の「危機」でしょう。
 安倍首相が電話でトランプ氏に直ちに、「日米同盟は普遍的価値で結ばれたゆるぎない同盟だ。さらに強固にしていきたい」(9日)と述べたのは、その「ゆるぎ」を恐れたからにほかなりません。

 では、日本のメディアは、「トランプ勝利」を受けて日米(軍事)同盟をどう再検討しようとしているでしょうか。10日の各紙の社説を見てみましょう。

 朝日新聞…「米国の役割とは何か。同盟国や世界との協働がいかに米国と世界の利益になるか。…日本など同盟国は次期政権と緊密な関係づくりを急ぎ、ねばり強く国際協調の重みを説明していく必要がある」

 毎日新聞…「第二次世界大戦後の世界は冷戦とソ連崩壊を経て米一極支配の時代に入り、米国の理念に基づいて国際秩序が形成されてきた。…『米国を再び偉大な国に』をスローガンにするのはいいが、同盟国との関係や国際協調を粗末にして『偉大な国』であり続けることはできない」

 読売新聞…「何よりも懸念されるのは、同盟国を軽視するトランプ氏の不安定な外交・安保政策だ。…米主導の国際秩序をこれ以上揺るがしてはならないだろう。…日本は、新政権の方針を慎重に見極めながら、同盟の新たな在り方を検討すべきである

 日経新聞…「日本の安全保障が米軍に依存しているのは事実であり、ある程度の負担増はやむを得ない。日本の防衛力強化も避けて通れない道だ。…国連平和維持活動(PKO)など世界平和への協力に日本も汗を流すなどして日米の絆を深めるのが現実的だ」

 産経新聞…「より重要なのは、東シナ海の尖閣諸島の危機を抱える日本として、自らの防衛努力を強める覚悟を持つことである。(安倍首相の言葉を引いてー引用者)決意のみならず、具体的な防衛力の強化策を講じることが不可欠といえよう」

 読売、日経、産経はいかにも率直に安倍政権の考えを代弁しています。稲田防衛相も述べたように、彼らはトランプの発言を奇貨として、日本の軍事力(自衛隊)の一層の強化を図り日米軍事同盟をさらに強固にしようとしています。

 朝日、毎日はさすがにそうストレートには言いませんが、共通しているのは、「アメリカ中心の世界秩序」の維持(「世界の警察官」の継続)であり、そのための同盟国・日本との「協働」です。

 こうして日本の主要メディアはすべて、強弱の差はあっても、トランプ政権下での日米軍事同盟の維持・強化を主張しています。その点で安倍首相との違いはありません。

 メディアだけではありません。新聞やテレビに登場するいわゆる「学者・識者」も、「日米関係を見直す好機」(田岡俊次氏、14日付沖縄タイムス)とは言っても、日米軍事同盟を廃棄すべきだと主張する人は、私が見た限り、1人もいません。逆に、リベラルと見られている学者からも、「国際関係を維持していくには…これまで日本は米国依存だったが、今後は責任ある同盟国として対応していくべきだ」(西崎文子東大教授、10日付中国新聞=共同)などの論調が出ています。

 政党はどうでしょうか。
 民進党の蓮舫代表は「トランプ勝利」で、「日米関係の重要性は不変だ」「安定した日米同盟を引き続き維持し、経済関係の連携を図りたい」(10日付共同)との「談話」を発表しました。

 政党で唯一日米安保条約に「反対」の日本共産党はどうでしょうか。志位和夫委員長は「談話」(10日付「赤旗」)で、「アメリカ社会の矛盾と行き詰まり」や「グローバル資本主義の深い矛盾」を指摘しながら、「新大統領として、今後どのような政策を提示するのか、注視していきたい」と言うだけで、「日米(軍事)同盟」の言葉(まして見直し・廃棄)は一言もありません。

 こうして日本は、メディアも「学者・識者」も政党も、日米軍事同盟(安保条約体制)を維持・推進・黙認する点で、すべて1つの傘の中にすっぽり入っています。「トランプ政権誕生」でもそれは変わりません。変えようとしていません。

 それでいいのでしょうか。
 「日米同盟の普遍的価値」とは何ですか。日米軍事同盟に縛られていて、中国、北朝鮮と良好な関係が築けますか。「軍事同盟」で平和がつくれるでしょうか。

 いま必要なのは、日本を覆っている「日米軍事同盟(安保条約体制)タブー」を打ち破って、「非同盟・中立の日本」を構想し議論することではないでしょうか。

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