アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

沖縄知事選で置き去りにされた「高江」の人々

2015年01月08日 | 沖縄と差別

          

 沖縄で平和と民主主義を愛する人々に広く読まれている季刊誌「けーし風」(返し風)の最新号(85号)が送られてきました(定期購読)。特集は「2014沖縄の選択―県知事選をふり返る」です。
 興味深い座談会や論稿が並ぶ中、とりわけ注目したのが、「高江公約要請アクションを振り返る」というインタビューです。

 語っているのは、東村・高江でオスプレイのヘリパッド建設に反対している「『ヘリパッドいらない』住民の会」の石原理絵さん(聞き手は阿部小涼琉大教員)。先の知事選で、石原さんたちが翁長雄志氏に「高江」を公約に入れてもらうよう、いかに涙ぐましい努力をしたかがリアルに語られています(写真左は高江での住民の座り込み)。

 「高江のことを認識してくれる人に知事になってもらわないと、さらにゴリ押しの四年間が続く」という危機感から、石原さんらは昨年(2014年)早々の3月20日、候補者選考委員会(県民ネット、社大党、社民党、共産党、生活の党)に対し、「『高江のヘリパッド建設反対』を県知事選の公約に入れてください、という要請文書」を提出しました。
 しかし、「手応えはあまり記憶に残っていません」という結果に終わりました。

 続いて8月21日、「翁長氏に出馬要請をするために結集した女性たちの集会」に参加した石原さんは、大きな衝撃を受けました。
 「会場は非常に盛り上がっていて、『辺野古に基地を作らせない候補を』と皆さんがお話をされていたのに、一二〇名くらいの女性たちの誰からも、高江の発言がない。これから始まる知事選の現実、高江の位置付けをまざまざと思い知らされました。これでは二〇一二年の『オスプレイ反対県民大会』の時のように、また高江は置いてけぼりを喰う

 「どうしたらいいんだろうって焦燥感だけが高まった」石原さんたちは、高江の座り込みに関わる友人たちと名護で会議をもち、「知事選に向けて何が出来るのか」を話し合いました。その中で翁長氏に「公開質問状」を提出することも検討しました(最終的に「公開質問状」には至らず)。
 こうした石原さんたちに対し、「『オール沖縄』でまとまったところに、高江が単独で要請を上乗せするというのはどうなのか」という圧力がかかりました。「仲間内と思う人から『もう(やめておいたほうが)いいんじゃないか』と。『ちょっとやり過ぎじゃないか』と言われた人もあったようです」

 そんな「仲間内」からの圧力にもめげず、石原さんたちは9月17日、「翁長さん!高江を公約に!知事選みんなで要請アクション」と題したチラシ(写真右)を作成し、ブログにアップしました。

 チラシ(公約要請アクション)は好評で、支持の輪が広がりました。しかし、翁長選対本部にその思いは届きませんでした。「要は『後でね』ということでしょう。公約については保守側との摺り合わせがある、暗に無理というニュアンスを感じました」
 石原さんは、「自主規制しろと言外に同調圧力的なものを感じた」と言います。

 それでも石原さんたちは屈せず、9月26日、「住民の会」として「公約に関する要請書」を翁長選対事務所に提出しました。要請書の内容はこうです。
 「翁長県知事候補にお願いがあります。ヘリパッド建設計画に反対することを公約に明記してください。『辺野古新基地建設反対』ではなく『辺野古と高江新基地建設反対』を公約として明確に掲げてください
 10月15日には翁長氏に「直談判」も試みました(集会の人波に押されて話はできなかったもよう)。

 こうした石原さんたちの切なる願いもむなしく、結局、翁長氏は公式の選挙公約に「高江」を盛り込むことはしませんでした。「住民の会」の度重なる要請行動は踏みにじられたのです。

 ただ、10月21日の政策発表記者会見で、「高江のヘリパッド建設については?」と記者が質問したのに対し、翁長氏は、「『建白書』でオスプレイ配備撤回を求めていく中で、連動して反対することになると思う」と、婉曲な形で初めて「高江」に触れたのでした。
 こんな不十分な「言明」でも、石原さんは「びっくりしたというか。すごく嬉しかったですね。公約はもう無理、難しいと思っていたので」と素直に喜びました。
 「翁長当選」の選挙結果に対し石原さんは、「最悪の事態は避けられたというか。これ以上、悪くはならないという意味で。助かった、少しはましかも、という感じです」。
 12月7日に行われたインタビューはここで終わっています。

 それから5日後の12月12日、県議会で行われた翁長新知事初の「所信表明」には、「高江」のタの字もありませんでした。
 さらに4日後の12月16日、県議会の答弁で翁長知事は、「高江の米軍ヘリパッド建設問題については『環境、住民生活への影響をめぐってさまざまな意見がある。地元の意見を聞き、検討したい』と述べた」(琉球新報12月17日付)のです。記者会見の「反対することになると思う」から「検討する」への明確な転換(後退)です。
 今月5日の「知事年頭あいさつ」でも、「高江」は(もちろん)一言も触れられませんでした。

 選挙後のこの現実を、石原さんら高江の「住民の会」の人たちは、どんな思いで見つめているのでしょうか。 

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