アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

戦後70年世論調査ーこんな「平和主義」でいいのか

2015年07月23日 | 国家と戦争

         

 世論調査は質問の仕方で数字が変わるなど、その結果が必ずしも「国民世論」を正確に反映しているとは言えません。それを前提にしながらも、22日各紙がいっせいに報じた共同通信の「戦後70年世論調査」結果は見過ごすことができません(この調査項目、選択肢にも多くの疑問がありますが)。

 憲法を「このまま存続すべきだ」(60%)が「変えるべきだ」(32%)を大きく上回り、88%がその「戦争放棄・平和主義」を評価(複数回答)していることから、「平和主義は国民の間でしっかりと定着している」(共同通信解説)と評されています。

 国民の多数が憲法の「平和主義」を評価していることは確かで、それに逆行する安倍政権の戦争法案がこの世論に照らしても絶対に許されないことは明白です。

 しかし同時に、この世論調査に表れた日本国民の「平和主義」は、はたしてほんとうに評価できるものでしょうか。
 それを検証するものが、「日本は戦後、米国と日米安保条約を結び、同盟関係を築いてきました。あなたは日米の同盟関係をどう思いますか」という質問に対する回答です。
  今よりも同盟関係を強化すべきだ・・・20%
  今の同盟関係のままでよい    ・・・66%
  同盟関係を薄めるべきだ     ・・・10%
  同盟関係を解消すべきだ      ・・・2%
  無回答                 ・・・2%
 この結果を戦争法案強行の不当性の根拠とする論調がありますが、私はむしろ、「強化すべきだ」が「薄めるべきだ」の2倍、現状肯定が66%、そして「解消すべきだ」(つまり日米安保条約廃棄)はわずか2%という結果に、驚きと戦慄を覚えます。

 「日米安保条約による同盟」とは、いうまでもなく、軍事同盟です。戦争法案がそれをさらに危険な段階に進めることは確かですが、では「今のまま」ならいいのでしょうか。
 ベトナム戦争では日本から戦闘機が飛び立ち、日本はアメリカの兵站・後方支援基地となりました。イラク戦争でアメリカの無謀な戦争に自衛隊を派遣して加担したのも日米安保条約に基づくものです。騒音、環境破壊、墜落事故、米兵犯罪など日常の米軍基地被害は、「今の同盟関係」の姿にほかなりません。これがどうして肯定できるのでしょうか。

 それは沖縄の基地に対する世論にも表れています。「日本の安全保障上、沖縄に米軍基地は必要だと思いますか」との質問に、「大いに必要だ」(17%)、「ある程度必要だ」(57%)を合わせ、実に74%の日本国民は「沖縄に米軍基地は必要だ」と言っているのです。「あまり必要ない」(18%)「まったく必要ない」(7%)は合せて25%にすぎません。

 さらに、焦点の「普天間飛行場移設」について(写真左)、「工事を中止し、話し合うべきだ」(48%)が多数であることから、安倍政権の不当性を指摘することは妥当です。しかし、「話し合うべきだ」は必ずしも「県内移設反対」とは言えません。明確に「県内移設」に反対しているのは15%にすぎず、それは「政府の方針通り」つまり辺野古新基地建設賛成35%の半分以下です。

 沖縄の米軍基地に対する日本国民のこうした世論は、日米安保・軍事同盟の肯定と無関係ではありません。日米安保体制を肯定することは、在日米軍基地を肯定することであり、そのしわ寄せを基地のある地域に押し付けることにほかなりません。その最たるところが言うまでもなく沖縄です。

 日米軍事同盟を肯定した「平和主義」とは、自分や家族が米軍基地の被害に遭わねばいい、戦争に巻き込まれなければいい、という無責任で利己的な「平和主義」ではないでしょうか。
 戦争法案反対・阻止と、辺野古新基地反対・阻止と、日米軍事同盟(安保体制)反対・廃棄は、けっして切り離せません。
 日米軍事同盟を解消してこそ、日本が攻撃されても「非暴力で抵抗する」(41%)という非戦の意思に沿った、ほんとうの「平和主義」といえるのではないでしょうか。 

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