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アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

韓国日記⑲「日本人に歴史の真実伝えたい」戸田郁子さん

2025年04月28日 | 日記・エッセイ・コラム
   

 23日の仁川訪問(25日付ブログ)。市内を案内していただいたのは仁川官洞ギャラリー館長の戸田郁子さんだ(写真)。

 大学2年生の時(1979年)、初めて韓国を訪れた。日本では「偉人」と教えられている伊藤博文や福沢諭吉が韓国でどう評価されているかを知って、愕然とした。「自分が受けてきた教育は何だったのか」

 大学を卒業後、意を決して韓国に渡り高麗大学史学科に入学(85年)。東アジア現代史を学び直した。朝鮮人の抗日活動家が中国で正当な評価を受けていないことを知り、再びショックを受けた。

 中国の朝鮮族を研究するため、ハルピンの黒竜江大学に語学留学(89年)。91年に韓国人カメラマンと結婚し、1子を授かった。中国で通算約8年間暮らした。

 韓国に戻り、ソウル郊外で出版社(土香)を立ち上げた。2011年に『中国朝鮮族を生きる―旧満洲の記憶』(岩波書店2011年)を著す(他に著書多数)。

 2015年、手狭になった事務所の移転先を求め仁川へ。日清・日露戦争、6・25(韓国・朝鮮)戦争の中の仁川を再発見し、「ぜひ日本人に伝えたい」と、100年前に日本人の建てた木造住宅を再生して仁川官洞ギャラリーを立ち上げた。今年は開館10年の節目だ。
 日本を離れて40年。このまま韓国を生活・仕事の場にしていく考えと言う。

 自分の歴史認識の不十分さ、日本の教育の欠陥を痛感した大学2年から、戸田さんの人生は文字通り一変した。自分に足りないものを補い、興味・関心のあるテーマを徹底的に追究する。その行動力に目を見張る。

 日本を離れ韓国で暮らして、日本に最も足りないものは何だと思うか尋ねた。

「教育ですね。日本の学校教育は歴史の事実を教えない。だから日本人は歴史を知らない。大学までの自分がそうでしたから。歴史は立場によって見方、評価が異なります。何が真実なのか、徹底して事実に基づいた歴史教育が必要です。キーワードは「日帝時代」。帝国日本の時代に日本は何をしてきたのか、です」

 やはり問題意識は共通していた。続けて、「私は日本の未来に明るい展望を持てないが、戸田さんはどうですか?」と質問した。この答えは意外だった。

「展望はあります。これから戦争体験者がますます少なくなってきて、事実を客観視できるようになります。そこで重要になるのが資料です。資料を客観的な冷静な目で分析し評価することが大変重要です。直接の体験者にそれは難しい。
 私は日本人として、日本人の心に響く言葉で、歴史の真実を伝えていきたいと思っています」

 歴史の真実が持つ力に確信があるからこその展望だろう。

 仁川官洞ギャラリー(写真中)はかつて「日本租界」と呼ばれた地域の6軒長屋の一角にある。現在は長崎トーマス・グラバーの遺子・倉場富三郎が遺したアルバムから開港当時の朝鮮がうかがえる貴重な写真を精巧に復元した「グラバー・アルバムに見る開港期の朝鮮」展を開催中(5月5日まで)で、同名の写真資料集も発売している。
 開館は毎週金・土・日の10時~18時。観覧無料。他に戸田さんが案内する「仁川歴史散策」(要予約)、ゲストハウス、レンタルギャラリーなどを実施。詳細はネットで検索を。http://www.gwandong.co.kr/

<訂正>25日のブログで、「仁川港と首都・京城(現在のソウル)が鉄道で結ばれる…」と書きましたが、「京城」は「漢城」の誤りでした。京城は日本が植民地化した1910年以降の呼称でした。おわびして訂正します。読者の方に指摘されました。ご指摘ありがとうございます。


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