ローマカトリック教会・フランシスコ教皇のいわゆる「白旗」発言(9日報道)が物議を醸しています。発言の経過と内容は次の通りです。
「「白旗」発言はバチカンメディアが9日、教皇が応じたスイスのテレビ局のインタビューの内容として、放送に先立って公開した。教皇は記者から「ウクライナには降伏の勇気、白旗を求める人たちがいる。しかし、それは強い側を正当化することになると言う人もいる」との質問を受け、「最も強いのは、状況を見て、国民のことを考え、白旗をあげる勇気を持って交渉する人だと思う」と述べたという」(11日付朝日新聞デジタル)
さらに、教皇はこうも述べていました。
「教皇はインタビューで…パレスチナ自治区ガザ情勢にも触れ「交渉は降伏ではない」とも述べた。トルコなど仲介役の力を借りることができるとし「事態がさらに悪化する前に交渉するのは恥ではない」と強調した」(11日付京都新聞=共同)
教皇発言の真意は明白です。
これに対し、「全領土奪還を目指し、停戦交渉を否定するウクライナ政府は反発。クレバ外相は「私たちの旗は黄色と青だ。他の旗を掲げることはない」と主張した。日米欧の支援国からも「全く理解できない」「ウクライナの意思を尊重すべきだ」との意見が相次いだ」(13日付京都新聞=共同)。
命より大切なものはない、という立場に立てば、教皇の主張はきわめて正当かつ重要です。
実はロシアのウクライナ侵攻直後に同様の主張を行っていた識者がいました。世界的な反戦知識人として知られる米マサチューセッツ工科大のノーム・チョムスキー名誉教授(写真右)です。
チョムスキー氏はメディアのインタビューに答え、「ウクライナについては二つの選択肢がある。一つ目は交渉による解決で、二つ目は最後まで戦うことだ」としたうえで、「私たちは、唯一の代案である外交的解決という現実を直視する」必要があると主張しました(2022年4月22日のブログ参照)。
チョムスキー氏はプーチン大統領と停戦交渉するのは「醜悪だ」とまで言いながら、「あなたはこの案を好まないかもしれないが、明日ハリケーンが来るのに『ハリケーンは好きではなく』『ハリケーンを認めることはできない』などと言うばかりではそれを防ぐことはできず、何の効果もない」と喝破しました。
事実、このころウクライナとロシアの間で「和平草案」がまとめられていたことが最近明らかになりました。それを潰して戦争を継続させ、ウクライナ、ロシア双方に甚大な犠牲をもたらしたのはアメリカを中心とするNATO諸国でした(7日のブログ参照)。
今回、教皇の即時停戦交渉発言を非難・攻撃しているのも「日米欧の支援国」です。アメリカとその軍事同盟諸国はあくまでもウクライナとロシアを戦わせたいのです。
2年前に世界がチョムスキー氏の主張を実行していれば、多くの命は失われずにすんだでしょう。
その轍を踏まないよう、いま世界は教皇の主張を傾聴し、即時停戦交渉を支持する世論を強める必要があります。