<和平草案に「永世中立」 ウクライナに譲歩迫る 決裂 侵攻50日後 両国が作成 米報道>
こんな見出しの記事(共同電)が京都新聞(3日付)に載りました(以下抜粋)。
<米紙ウォールストリート・ジャーナル電子版は1日、ロシアがウクライナに侵攻してから50日後に、両国の交渉担当者がまとめた和平草案を確認したと報じた。
ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)のような軍事同盟に加わらない永世中立国となり、外国兵器は配備しないことなどが盛り込まれていたという。
交渉は決裂し、戦争は長期化している。ウクライナは現在、全領土奪還まで戦うと宣言し、NATO加盟を目指している。
17㌻の草案は2022年4月15日付。ウクライナが欧州連合(EU)加盟を目指すことは可能とするが、軍事同盟入りはしないとした。
ウクライナ軍の規模縮小も盛り込まれた。ロシアは兵士や戦車の数、ミサイルの最大射程などを制限しようとしていたという。草案では、ロシアが14年に併合した南部クリミア半島はロシア勢力圏に置くとされた。
ロシアとウクライナの交渉は侵攻の数日後に始まり、草案がまとめられた後も続いたが、22年6月に終わった。>
注目すべきは、「和平草案」は「両国の担当者がまとめた」もの、すなわち両国間の合意だったことです。
それが「決裂」した。その理由を記事は書いていませんが、第三者から圧力がかかったことは明白でしょう。それは誰なのか。当事者両国が合意して作成していた「和平草案」を潰し戦争を長期化させているのは誰なのか―。
それはアメリカを中心とするNATO諸国である、という指摘がこれまでも日本の学者からも行われてきました。例えば、水島朝穂・早稲田大教授(23年8月28日のブログ参照)、和田春樹・東京大名誉教授(同8月29日のブログ参照)です。
最近活字になったものとして、荻野文隆・東京学芸大名誉教授の論稿(「機」=藤原書店PR誌、2月号掲載)を紹介します(以下抜粋、改行は私)。
<ロシアのウクライナ侵攻翌日の2月25日、ゼレンスキー大統領は直ちに和平の模索のためにスイス政府と連絡を取った。そして翌3月から6月にかけて3度にわたって和平交渉が試みられた。
しかしそれら全てが、米英欧の圧力によって潰された事実は、西側メディアでは重要視されなかった。米国の主要目的が、ロシアの弱体化だったからだ。
紛争勃発直後にゼレンスキー大統領が望んだ和平が実現していれば、50万人規模のウクライナ兵と4万人近いロシア兵の命が失われずに済んだばかりか、クリミアとドンバス地方を除き、中立化したウクライナからロシア軍を撤退させる形で終結させることができたのだ。>
荻野氏の指摘は水島氏や和田氏と通じます。
ウクライナ戦争を長期化させ、多くの命を奪っている黒幕がアメリカを中心とするNATO諸国であることに改めて目を向ける必要があります。この戦争は「バイデンの戦争」と言っても過言ではないのです。
そしてその動機が、ウクライナの「永世中立化」を阻むというNATO戦略であることを、アメリカとの軍事同盟(安保条約体制)によって対米従属をいっそう強めている日本の市民はとりわけ銘記しなければなりません。