1985年、私は「赤旗」記者として国会報道を担当していました。当時の最大の政治課題は、ロッキード疑獄で1審有罪判決を受けた田中角栄元首相に対する議員辞職勧告決議案の提出でした。
自民党は必死でその阻止を図りました。そこで出してきたのが政倫審(政治倫理審査会)の設置です。証人喚問と違って偽証罪にも問われない同審査会は、田中角栄の議員辞職勧告を打ち消して政治責任を不問にするための隠れ蓑でした。それを推進したのが、当時田中派「七奉行」の1人といわれた小沢一郎氏でした。
こうした誕生のいきさつからも、その性格からも、政倫審はそもそも政治疑惑の追及を期待できる場ではありません(写真右は1日の政倫審)。
メディアが自民戦略に乗せられて政倫審報道に終始している間に、着々と進んでいるのが日本の戦争国家化です。自民党と公明党の攻撃兵器輸出規制見直し協議、沖縄・北部訓練場で初めて行われている米軍と陸上自衛隊の共同訓練(2月25日~)などはその一端です。
こうした戦争国家化深化の画期となったのは、岸田政権による「軍拡(安保)3文書」の改定(2022年12月16日閣議決定)です。
日本人はメディアの影響もあって、その意味・危険性についての認識がきわめて乏しいですが、米バイデン政権はその本質をよく理解しています。
ラーム・エマニュエル駐日米大使(写真左の左)がその本音を吐露していることを、沖縄タイムスの平安名純代・米国特約記者が報じています(2月26日付コラム「想い風」)。以下、抜粋します。
<エマニュエル駐日米大使は、米紙ワシントンポスト12日付の寄稿で…誰も予想し得なかった変革の時代を日本は今、迎えていると説く。
日本は…安保関連3文書を改定し、2027年度の安全保障関連費をGDP比2%に増額したと指摘。「日本は比較的短期間で、抑止力に関する考え方を再定義し、自衛権の行使や定義に制限のある国から、地域の安全保障パートナーとしての役割へ踏み出した」と評価し、21年時点で世界9位の日本の防衛費は3位に上昇すると期待感を示している。
同氏は…「防衛費倍増から反撃能力の強化まで、日本はかつて神聖視されていた数十年来の政策を根底から覆した」と賛辞を送る。
同氏は、岸田首相が4月に国賓待遇で訪米するのは「日本がこの2年間の成果と今後20年間で米国の戦略的パートナーとして果たす役割の拡大を強調するため」とその意義を説明する。>(2月26日付沖縄タイムス)
日本のメディアが政倫審や日本人大リーガーの報道に明け暮れている間に進行しているもう1つの危険は、イスラエルによるガザへの更なる攻撃であり、「57万人が飢餓手前」という現実です。
このイスラエルの蛮行を一貫して擁護・支援しているのがアメリカであり、そのアメリカの駐日大使が「戦略的パートナー」として絶賛しているのが、「安保法制」「安保3文書」下の日本です。
この悪の鎖を断ち切る責任があるのは、われわれ日本の市民です。