アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

ウクライナ戦争の深層<上>“仕掛け人”はアメリカ

2022年12月15日 | 国家と戦争
   

「「ロシアが悪い」「プーチンは独裁者」だと非難するだけでは事は解決しない。戦争が膠着し、世界分断が深まるだけである。「なぜロシアはウクライナに侵攻したのか」を問わなければならない。ロシアを一方的に断罪し、それ以外のことは言わせない、考えさせないというのが「西側」諸国とそのメディアの論理だが、その姿勢こそが戦争をエスカレートさせ、解決を遠のけているのではないか」(4日付中国新聞=共同)

 哲学者の西谷修・東京外大名誉教授が書評欄にこう書き、「この紛争の解決を探るためにも、欠かせない知見を示した一冊」として推奨しているのが、ロシア政治研究の第一人者、下斗米伸夫・法政大名誉教授の『プーチン戦争の論理』(集英社インターナショナル新書、2022年10月)です。タイトルは中身にふさわしくありませんが、多くのことを学びました。同書によって、「西側」メディアが触れないウクライナ戦争の深層を4つの視点から整理します(<>内は同書からの抜粋)。

(1)「マイダン革命(クーデター)」とアメリカ

 今回のロシア侵攻(2月24日)が、8年前(2014年2月)の「マイダン革命(クーデター)」(写真右)と密接につながっていることはこれまでも書いてきましたが(3月28日、5月14日のブログ参照)、同書はアメリカがその仕掛け人だったことを強調しています。

<そもそもの発端は、2014年2月に起こったNATO拡大派主導のマイダン革命と、これに反発したロシアによる「クリミア併合」まで遡る。このときマイダン革命という事実上NATO勢力が誘発したクーデターに驚いた東ウクライナでは、ロシア語話者の多い東部ドンバス地方で2つの「共和国(ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国)」が反乱を起こした。以来、ウクライナとロシアとのあいだに火種を残し、それが現在まで続いている>

<プーチン大統領をクリミア併合へと走らせた原因としては、米国務省とネオコン(新保守主義)勢力がマイダン革命(ウクライナ騒乱)を引き起こしたことが挙げられる。マイダン革命とは、2014年2月に米国が支援してヤヌコビッチ(大統領)を失脚させた政変である。このクーデターへの米政府の関与についてはオバマ大統領自身が、マイダン革命から1年後の2015年1月にCNNのインタビューで明らかにしている

<ネオコン系の外交官ヌーランドは、米国ウクライナ人協会で「西ウクライナを中心とする親NATO派勢力に対して、約50億ドルを超える支援を行った」と述べた。彼女はネオコン系の思想家ロバート・ケーガンの夫人である。「ウクライナ国家の守護神」とも呼ばれる人物だ。ちなみにケーガン一族が関与する民間の戦争研究所は、今回のウクライナ紛争においても、米国発の戦争情報発信元として世界的に注目された>(ヌーランド国務次官については7月28日のブログ参照)

(2)「NATOの東方拡大」とアメリカ

 同書は、「今回のロシアによるウクライナ侵攻の直接の契機になったのが「NATOの東方拡大」問題だ」とし、この点でもアメリカが元凶であることを論証しています。

<NATO東方拡大のきっかけは、1990年代半ばの米国ビル・クリントン政権による、覇権と民主化推進戦略であった。
 1997年、クリントン政権は主として内政目的、つまりカトリック・ポーランド系の1000万票欲しさに、「東欧諸国をNATOに加盟させる」と公約した。これは当然ロシアを刺激する挑発だと、ジョージ・ケナンなど対ロ政策の専門家も「最大の誤り」と警告した>

オバマ政権時代の副大統領バイデンが、2009年にウクライナをNATO加盟へと誘ったことは、ロシアを怒らせた>

<1990年2月、当時のベイカー国務長官とソ連のゴルバチョフ大統領とのあいだで、NATOは東方へ「1インチ」も拡大しないと取り決めた。覚書などの形にはなっていない。しかし、外交文書には当時のコール独首相もそうした主旨の発言をしたことが記されている。プーチンの「米欧が約束を破った」との言葉に根拠がなかったわけではない>
(土曜日に続く)

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