今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
紺基調の白抜き和柄プリントをベースに、合わせは紺基調の絣風プリントです。
色合いが涼しげで、夏にぴったりといった印象でしょうか。爽やかなかっこよさがあると思います。と、いかにも男性限定のような話をしていますが、お買い上げくださったおばさまは娘さんへのプレゼントでありました。もちろん女性にもOKですね。
一見して旅行者と少し違う、かと言って地元民とも思えないご夫婦が、ふらりと草履コーナーに立ち止まりました。お歳の頃は60歳代後半と思います。いつものように角館草履の素材やら健康効果をお話しすると、『まだしばらく滞在しますから、近々寄らせてもらいますよ』とご主人。
この「まだしばらく」の言葉で、最初に感じたイメージと繋がりました。ご夫婦は角館を仮住まいとしている、福島原発からの避難者なんですね。
住まいのあるふるさとが立ち入り禁止区域となり、どこを仮住まいとするかずいぶん悩んだそうです。最近まで仙台市の病院に入院していた奥様は、避難所での団体生活ができません。息子さん家族はいらっしゃるようですが、頼れる身内にも心当たりはありません。そんなときふと思い出したのが、何度か訪れていた檜木内川の鮎釣りだったそうです。
ご主人が奥様へ、『角館へ行くぞっ』。それを聞いた奥様は『なんで角館???』。無理もない話しですよ。
奥様へ『実際に角館へ来てみてどうですか?』とお訊ねすると、『もうほんとにイイとこで、来て良かったと思ってるんですぅ』。角館人を目の前にしての社交辞令とは思えない、明るい笑顔が印象的でした。
角館滞在はひとまずの予定が半年間だそうです。でも延長申請すれば、最大二年間の滞在が認められるそうですね。もしかしたら、触れられたくない話題かもしれないと思いながら訊いてみたのは、『やっぱりふるさとに帰りたいでしょう?』。
少し間を置いてからご主人が言うのは、『震災前の状態に戻れるなら帰りたいですね。でも無理ですよ。たとえば五年、十年後に帰ったところで、もうこの歳になってはねぇ』。
ご主人の言葉の印象から、すでに帰るべきふるさとはないを感じました。
このブログでもときに触れるのが、「ふるさとへの思い」です。今暮らす街がふるさとではなくとも、やがては戻りたいと思うのが自然でしょう。
終の棲家にふるさとの選択肢を奪った原発事故。この罪は決して軽くないと思いますね。