今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡円〕
緑基調の女の子プリントをベースに、合わせは赤基調のしし唐プリントです。
同じような色調で三足ほど編んだのですが、思いのほか早くに売れてしまいました。そのお使い道が「母の日プレゼント」なんですね。地味すぎてもいけないし、派手すぎてもいけない「母の日」は、こうした配色が無難に映るのでしょう。
今年も母の日プレゼントに何人もお出でくださっています。40歳代の女性が実母へ、50歳代の女性が姑さんへ、50歳代の男性が奥様へ。それぞれにいろんな想いがあるんでしょうね。あっそうそう、今年もしっかりいましたよ、『母の日に自分へプレゼントっ』とおっしゃるおばさまです。
齢八十五とおっしゃるおばあちゃんが、ひとり旅を楽しんでお見えでした。実演を眺めながら、『山口の田舎で編んだんだけど、こうして見てるとすっかり忘れてるわねぇ』。私が、『ワラ草履が世の中からなくなってずいぶんですから、忘れてしまうのはしょうがないでしょ』と言うと、『草履だけじゃなくて、大根の煮方も忘れちゃったものねぇ』。いきなり大根の話に飛んだので、お歳がお歳だけにちょっと心配になりました。
おばあちゃんは山口県のご出身で、現在は埼玉県にお住まいだそうです。ひとり旅は珍しくないようですから、ちゃんとしっかりしたおばあちゃんであることが分かりました。そしてお話の内容が実に面白いんです。
『昔若い頃は、山口県の秋吉台っていったら世界一だと思ってたの。でもこれが井の中の蛙なのよねぇ。いろんなところに旅行したら、もっといいとこがいっぱいあるのよぉ』。
私が、『角館を世界一だと私は思ってるんですけど、もっといいところがありましたか?』と訊ねると、『それが井の中の蛙ってことよっ』。二人で大笑いしました。おばあちゃんは続けて、『角館もいいところだし他にもいいところはいっぱいあるんだけど、何度も行ってるとよくないところも見えちゃってダメね。角館も三度目だから、そろそろよくないところが見えてきそうよ』。またまた大笑いです。
ふるさとを離れると、その良いところも悪いところも見えてくると云います。人生の大先輩であるおばあちゃんは、いろんな角度から物事を見る大事さを説いているのかも知れません。結論としては、「自分の暮らす町が世界一」ということで、双方納得でありました。
先月ふるさとを離れた長女と次女が、一ヶ月ぶりにこのGW帰省しました。たった三日間ほどの滞在でしたが、一晩夜桜見物に誘ってみると、素直に『行くっ』と言います。親と一緒に夜桜見物という年齢ではないですし、実際高校生時代は一度も行ってません。
たった一ヶ月とはいえ、ふるさとの心地よさ、親元の安心さが分かってきたのかもしれませんね。