今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡円〕
赤基調のうさぎ&麻の葉プリントをベースに、合わせはカラフルな桜花プリントです。
「元気」を象徴するかのように、明るく美しく彩られた桜たち。例年こんなイメージで展開される角館観桜会まで、残すところ十日を切りました。今年はどんな花びらをつけてくれるのでしょうか。
長女の青森引越しに続き、次女の仙台引越しが済みました。東日本大震災の影響でスケジュールが二転三転しましたが、ようやく次女も新たな学校で新学期が始まっています。それにしても、この仙台行きがスムーズに進まないのをあらためて実感したのは、出発前夜の余震です。停電したままの角館を出発し、行けるところまで高速道路を利用したものの、仙台のアパートに到着したのは夕方に近い時間でした。荷物を部屋へ運び終わったら、もう娘もカミさんもクタクタでしたよ。
先週の長女の青森引越しでもそうでしたが、東北自動車道のいたるところで「災害派遣」や「救援物資」の幕が張られたトラックと出会います。自衛隊の車もひっきりなしに見かけました。それだけでも今の東日本が非常時であると分かります。
仙台引越しでは岩手県の水沢インターで一般道に下ろされましたから、物資を運ぶトラックの一部に仮設住宅の部材も見かけました。言葉にするわけじゃないにしても、運転手さんへ『ありがとうございます』の気持ちが思わず出るものですね。
仙台市へは四日間滞在しました。出発前から思っていたのは、被災地を自分の目でしっかり見ることだったんです。100年に一度とも300年に一度とも云われるこの大災害。その同じ時代に縁あって東北に暮らすひとりとして、出来るものであればその姿を脳裏に焼き付けたいと思いました。
角館を訪れる多くは東北に暮らす方々です。被災された中には西宮家を訪れた方もいるでしょうし、角館草履を履いていた方だっているでしょう。この震災を、どこかよその国の話とはとても思えないわけです。
震災から一定の日にちが経ち、被災地を半ば“観光気分”で訪れる県外ナンバーの車が目立ってきたという話は、角館にいても報道で知っていました。私なりに決めたルールは、復旧活動の邪魔になるところへは入り込まないこと。動画はもちろん静止画の一枚も写さないこと。これは物見遊山ではない証しと共に、記録を残さないことでしっかりと記憶に残すためです。
まず向かったのは若林区荒浜。海沿いに民家が並ぶ、綺麗な風景の場所だそうです。波乗りのメッカにもなっていて、通年100人や200人のサーファーが楽しんでいると聞かされていました。
田園地帯に伸びた道路を海に向かって進んでいくと、次第に周囲の景色に変化が見られました。最初は比較的小さな異物だったのが、だんだんそこにあるはずのない自動車やボートがはっきり見えるんです。さらに進むと、それはもう毎日のようにテレビに映し出される被災地の映像そのもの。言葉を失うというのは、まさにこうしたことを言うのでしょう。車中の会話は皆無となりました。
次に向かったのは、二月の入試の際にも訪ねた仙台港エリア。大型ショッピングエリアにもなっていて、まずすべての買い物がここだけで出来てしまいます。ただしそれは被災前の話。私たちが見た仙台港の姿は、月並みな言葉では表すことの叶わない、いや言葉などないと言ったほうが良いかもしれません。
悲惨な光景にカミさんが不調を訴え、仙台港を最後にアパートへと引き返しました。
津波の被害や激しい揺れに傷んだ建物を見ると、あらためて東日本大震災の大きさが理解できます。一方同じ仙台市でも、一見では被害が分からない地域もありました。アパート近くのショッピングエリアで生活用品を買出ししたときも、震災から一ヶ月が経って品不足はほとんど感じられません。むしろ基本的な人口の多さか、角館などよりははるかに活気に満ちています。某家電量販店は角館のお隣り大曲にもありますが、レジに人の列が出来るのをはじめて見ました。
いささか不謹慎なれど、大勢のお客さんでごった返す仙台の大型店を見ていると、『ほんとに復興しねばだめなのって角館でねぇの?』と言ったカミさんの言葉には、妙に納得してしまいましたね。
角館の観桜会まであと十日を切りましたが、今日の武家屋敷通りも人は歩いていません。『あれだけの震災があった後だもの…』と、地元民は今年の観桜会を半ばあきらめムードで迎えようとしています。
このたび仙台の被災地を目の当たりにし、太平洋側全体が復興を遂げるまでは、本当に長い戦いになると実感しました。マンパワーはもちろん、莫大な資金も必要でしょう。マスコミが日々訴えるように、日本は今こそひとつにならなくてはいけないと思います。
ただひとつ願うのは、「復興」の対象を二次被害に苦しむ東北各県の観光地にも広げて欲しいことでしょうか。『被災地の人は住む家さえない』と思えば、二次被害の東北人は自らこれを発しません。
今日、東京にお住まいのおばさまからお電話をいただきました。一年ほど前に西宮家で出会い、それ以来角館草履のご愛用者だそうです。『なかなか買いには行けないから、二足送ってくれる?』とおばさま。私は、『もちろん送りますけど、地震で角館に誰も来てくれないから、こんなときに旅行したら神様みたいに言われますよ』と言って笑いました。おばさまは、『そう、そんなになってるのぉ。でも大丈夫よ、角館の桜はとてもイイもの、いっぱいお客さんが来るわよっ』。
そう信じて、明日からまた在庫作りに励みます。