角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

ビデオカメラと子どもたち。

2011年10月20日 | 地域の話
昨夜、ひとりの男性が息を引き取りました。一週間ものあいだ生死の境を彷徨い、とうとう力尽きたということです。享年七十六歳。

秋田県内にお住まいの方であれば、まだ記憶に新しいと思います。今朝の新聞にも死亡を伝える記事が載っていました。10月12日の朝、秋田市和田の国道13号線で起こった交通事故。飲酒運転の対向車に衝突され、意識不明で救急搬送された角館の男性、Mさんです。

Mさんとの付き合いの始まりは、わが家の双子が保育園の年中組だった15年前までさかのぼります。趣味が高じて…という感じなのか、Mさんは依頼を受けてビデオ撮影をする人だったんですね。保育園では父母の会が、「おゆうぎ会」の撮影とマスターテープの作成を依頼していました。ほかにお祭りの園児小若曳山や運動会にも、ビデオカメラを肩に担いだMさんの姿が必ずあったものです。

双子が小学生になると、Mさんの姿は小学校でもよく見かけるようになりました。PTAが「学習発表会」や「卒業式」の撮影を依頼したり、部活動の大会の模様を撮影したりしていました。
ですから私は、Mさんの存在というものが地域の子どもたちと重なるんですね。

一方で子ども社会と縁の薄い人でも、Mさんのことは「お祭りビデオ」でお馴染みと思います。現在は三軒が発売しているお祭りDVDですが、その草分け的な存在がMさんでした。七十代も半ばになって深夜や未明に及ぶ撮影は、お祭りが好きでなければ到底無理でしょう。

この三軒のお祭りDVDを比較してみると、収録時間が最も短く、さらに最も画質の劣るのがMさんです。でもなぜか最初に買ってしまうのは、その映像にMさんの「心」があるからなんです。Mさんの映像には、「ここを見て欲しい」という意味を感じました。そしてその中には、お祭りであっても必ず「子どもたち」がいたものです。

明日の命は誰も保障してくれません。それは分かります。でも、こうした人生の終わり方は、悔しすぎると思うんです。せめて飲酒運転はやめましょう。自分も死んで、同乗者も死んで、さらに他人が巻き添えになりました。現代社会に交通事故は、ある意味付き物かも知れません。だからこそ、せめて飲酒運転はやめましょう。

助手席で事故に遭われた奥さんは、腰の骨を折る大ケガで別の病院へ搬送されていました。数日経って、奥さんの願いに沿いMさんと同じ病院へ移ったそうです。面会も出来ない状況であったにしても、人生最期の数日をご夫婦同じ屋根の下にいられたことが、せめてもの救いでしょうか。

心から、心からご冥福をお祈りいたします。22日は葬儀参列のため、草履コーナーをお休みとさせていただきます。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「戻る」喜び。 | トップ | 風邪は万病の元。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

地域の話」カテゴリの最新記事