角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

よく効く薬。

2006年05月19日 | 実演日記
今日の草履は、5月3日に地元のお母さんから頂戴したオーダー草履です。
『女性が履く25cmで、配色はお任せするんシ』がこちらになります。「お任せ」は職人の血が騒ぎます。久しぶりの三色使い、真中にいらか模様を入れてみました。
ご親戚へのお土産とのことでしたが、大変お待たせいたしました。

『明日またゆっくり来ますね』のご夫婦が、秋田市にお住まいのおばあちゃんを連れ立ってお越しくださいました。ご夫婦は横浜市にお住まいです。
まずご主人のオーダーからお聞きしましたが、『紺系であとはお任せ』とのことでした。「今日の草履」もそうですが、「お任せ」と言われればこちらも考えます。『分かりました、ちょっと遊ばせていただきますね』とお応えすると、続く奥様も『私のも遊んでイイわよ!』。

そしてラストのおばあちゃん。こちらのおばあちゃんは、なんと言いますか、とてもお洒落な方でした。どこぞの皇族にでもいらっしゃるような気品をお持ちです。
『おばあちゃんはどんな色が好きですか?』とお尋ねすると、『私の顔とスタイルを見て、おにいさんにお任せ!』。
『はいっ、ひらめきました。おばあちゃんには可愛いピンクが似合いますヨ』とお応えすると、『あら~、おにいさんは商いが上手いワ!はははっ』。

ご高齢であればあるほど、私は「赤」や「ピンク」を履いて欲しいんです。

やはり、多少なりとも疲れがないと言えば嘘になります。一番感じるのが手の指です。夕方近くになると、はっきり指の疲労が見えるようになりました。
今日の夕方近く、ひとつの草履が編み上がり、次の「ご注文書」をめくってみると「18cm女の子、ピンク系で可愛く」と書いてあります。住所を見ると、「宮城県○○郡・・・」。『あ~、あのときの女の子だぁ』と、5月3日の様子が蘇りました。

ずーっと私の実演を見ながら、お母さんに『欲しい』と一言つぶやきました。きっと普段はなんでもかんでも「欲しい」を言わない子なんでしょう、お母さんは二つ返事で許してくれました。
オーダーが済んでも、その子は帰ろうとしません。どうやら、その場で作ったものを持ち帰れると思ったようです。お母さんが、『おじさんがあとで作って送ってくれるんだヨ』と言うと、理解したその子は元気にバイバイして帰りました。

あれから二週間以上が過ぎました。5歳の子どもですから、もうすっかり忘れているかも知れません。でも私には、『まだかナ~、まだかナ~』と待っている女の子の顔が浮かんで仕方なかったです。
すぐにその子のオーダー草履に取り掛かりました。出来上がるまで45分、指の疲れはすっかり忘れてました。

実演でのふれあいは、即効性のある「薬」のようです。

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