角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

「どんぐり」の思い出。

2015年02月14日 | 実演日記




今日の草履は、仙北市内の女性のオーダー草履です。お仕事仲間お三方へのプレゼントなのですが、あえて同じ配色をご提案しました。私も初めての試みです。その三人というのは、わらび座舞台「どんぐりと山猫」に出演している役者さんたちです。私はその方々とお会いしたことがありませんから、イメージ作りにfacebookを見てみました。そこで目に入ったのが「どんぐり」の衣装だったんです。その衣裳を模したのがこちらの配色というわけでした。




聞けば本日2月14日が、150回目にしてラスト公演なのだそうです。演目そのものは引き継がれるようですが、150回を演じてきたこちらの三人での公演は今日が千穐楽なんですね。全国の小学校を会場に公演を続けてきた三人の想いを、私ごときが代弁できるはずもないのですが、きっと家族に近い関係性が築かれたんじゃないでしょうか。ずーっと心に残る衣裳を模した草履は、きっと三人の役者さんたちの心にも届くと思いました。

わが家の双子の娘が小学校を卒業したとき、たまたま担任の男性教諭と二人きりになり彼が言いました。『新しい年度が始まって別のクラスを持ったら、もう過去を考えることはないんです』。今卒業したばかりの子どもの保護者としたら、もしかしたらいささか寂しい言葉かもしれません。でも違うんですね、過去の生徒たちとの思い出を引きずるのは、新たに担当する子どもたちに失礼なのは当たり前です。

私たちが小学校や中学校時代に担任だった先生は、もう高齢者と呼ばれる年代になりました。担任が終わったあと、同じように私たちを思い出すことなど日常にはなかったでしょう。でも卒業から何十年も経ってクラス会や同期会に招かれると、当時の風景がすぐに思い起こせると話していました。そのときそのときを一生懸命に過ごしていれば、何十年経っても色あせることのない記憶として呼び戻せられるんでしょうね。

「どんぐりと山猫」のお三方も、このあとそれぞれ別の舞台に向かうのだと思います。そうすれば「どんぐり…」のことを日常に思い出すことはなくなるのかもしれません。学校の先生と同じように私もそれでいいと思いますが、ときに懐かしく思い出すきっかけに私の草履がお役に立てたら、作り手としてこれに勝る喜びはありません。
今日の千穐楽を、私のカミさんと長女と次女が観劇しました。三人揃って『おもしろかった~!』の感想に、私も嬉しくなりましたよ。
コメント (2)
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