角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

凡人ゆえの心配。

2015年02月07日 | 製作日記




今日の草履は、仙北市内の男性のオーダー草履です。「facebookを見て、いいなぁと思って…」とご自分用のご注文でした。展示してある草履の中から布地をチョイスし、紫の無地と茶の唐草の組み合わせをご自身で指定されました。瞬間私も「お洒落な草履になるんシよっ」と言いましたが、お引き取りに見えた男性も「おっ、思ったよりずっといいんシなっ!」。その言葉を聞ければ大成功であります。早速履いてくださいね~(^^)

「今自分が死んだら、家族に借財が残ってしまうか」。
友人から聞いた話ですが、私たちと同年代の数人が酒席でこんな話題になったのだそうです。私は友人との酒席でこの話題は記憶にありませんが、自分の中で考えたことは幾度かあります。ですから「みんな考えているんだなぁ」と率直に思いましたね。40代や50代の男性が、急病や不慮の事故で命を失くす話はなにも珍しくありません。これをわが身に起こるわけがないと考えるほうが、むしろナンセンスでしょう。

イスラム国に殺害された湯川さんも後藤さんも40代でした。後藤健二さんは47歳ですから、まず私たちと同年代と言えるでしょう。下の子は生まれたばかりと聞きました。
家庭を持った男性が何を最大の責務として生きるか、私は凡人ですから「家族の幸せ」と考えます。世の多くの男性はそうじゃないですかね。草履職人などと冒険とも思える生業を選びながらも、カミさんと娘三人の生活を考えないことはありませんでした。

後藤健二さんもきっと同じ想いはあったはずです。それでもあえてあの土地に向かいました。ジャーナリストの血がそうさせたのか、湯川さんを助けたい思いがそうさせたのか、いずれにしても彼は家族よりも他を選んだのは間違いありません。
そして結果は報道の通りです。「自己責任」と「覚悟」をいくら主張しても、多くの人々を巻き込んだ結末は個人の問題で済まされるはずもありません。おそらくそれさえも分かっての行動だったのでしょう。

であれば、「なんてバカなことをしたんだ…」という話なのですが、私は心のどこかで賞賛の拍手を贈っています。戦場で罪のない子どもたちがどんな生活を強いられているのか、これを世界に伝えることを本分としていたそうです。並みの正義感や神経で出来る業ではありませんよ。わが子、わが家庭よりも戦地の子どもに命を懸けたとすれば、人騒がせな馬鹿野郎と私にはとても言えません。

こうした場合、遺族に生命保険は支払われるのでしょうか。国から弔慰金は支出されるのでしょうか。渡航取り止めを要請されていた経緯を思うと、どちらもないのかもしれません。後藤健二さん殺害の報道がされた途端、全国の書店に彼の著作本の注文が殺到しているそうです。せめてこれらの印税がご遺族の元へ渡ることを、他人のこととはいえ願いたいものです。

私は凡人ですから、自分が死んだ後の家族に、せめて負の遺産は遺したくないと思っています。
コメント (2)
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