世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

「森に眠る魚」(角田光代)

2011年12月22日 22時54分50秒 | Weblog
たぶん、このままいくと、私は出産とか育児というものに縁のない人生を送るであろう。
そんな私が書店にてたまたま手に取った作品「森に眠る魚」は、小学校のお受験を描いた作品だった。
角田光代の作品はこれまでに「八日目の蝉」「対岸の彼女」を読んだ。
伏線の張り方や文章の秀逸さはクマパパも絶賛するほどである。
出産や育児には関係のない私だが、角田光代だし、読んでみることにした。

「森に眠る魚」の舞台は東京の文教地区。
明記はしていないが、恐らく文京区だろう。
文京区幼女殺人事件をモチーフにした作品だから。

ひょんなことからママ友になった5人の女たち。

★容子 (子供:一俊)
大人しい感じの地味で真面目な人
子供も大人しい感じ
後半、豹変!こえーよ。

★千花 (子供:雄太、桃子)
裕福で綺麗で社交的。
自由に生きる妹がいて、後半、両親の羨望が妹に向き、嫉妬。

★瞳 (子供:光太郎)
メンヘラな過去を持つ。
ボランティア活動をしている。
宗教者の夫(正論しか言わない)に弱みを見せられない。

★繭子 (子供:怜奈)
義父の遺産で高級マンションを購入。
茨城出身。
ヤンママ風。
素直だが、ずうずうしい。

★江田かおり (子供:衿香)
繭子と同じ高級マンションに住む「マダム」
長年不倫をしている。
娘を私立小学校に通わせている。


最初から5人とその子供(&夫)の名前がドバッと出てきて、読んで戻って…を繰り返していた。
しかも、5人の性格や生い立ちを遂次メモしながら読み進めるという、私の読書では初めての体験もした。
中盤からは、名前と性格や子供の名前が一致し、後半はスルッとエンディングまで読み切った。

5人は知り合った当初、お花見に行く。
その頃は、和気藹藹してて、読んでいて微笑ましい感じがした。
子育て方針も「子供の希望を尊重したい」というもので、小学校受験とはほど遠かった。
しかし、かおりの友達の取材に応じた日から、次第に「私の子、このままでいいのかな」という思いに苛まれる5人。

仲間から抜け駆けしていいものか?
いや、本当に受験させるのか?
夫は?
お金は?

僅かな亀裂から水が注ぎ込まれるように、渦巻く黒い想いに徐々に吸い込まれる彼女たち。

受験する学校を受験するまで内緒にし、
お教室(予備校)を秘密裏に通わせたり、
そもそも受験することを内緒にしていたり、
本当に凄かった。

疑い、探り、悩み、苛立ち、結果、病んで過食に走ったり、ママ友に依存したり…。

読んでいて重くなってしまった。
が、止められない。
ヒートアップする彼女たちに吸い込まれるように、読者である私は目を頁から離せなかった。

これは軽くホラーである。


一つだけ、不思議に思ったのは、彼女たちは人と人の「間」を取ることが、なんでこんなに下手なんだろうということだ。
他人の家の中のことや教育方針がどうしてそんなにも気になるのかが、不思議だった。
いいじゃん。受験させたけりゃ、「させるよ」で。
なんで他人の動向まで探らなければならんのだ。

読んでいて、そこだけが理解できなかった。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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そら そうやね (オリオン)
2011-12-23 07:17:27
他人さんのことなんか 関係ないんやろけどな
最初に受験なんか無関心 あるいは 受験なんかさせないわ的なことをゆうてしまってるから おかしなことになるんよね

自分の考えが変わったことをさらりとゆえんのは この ママ友っちゅうのが 友達ゆうことではないからやろなぁ
受験は闘いやからね
特にちっこい頃は一生が決まるっちゅうくらいの勢いやろ?小説よりよっぽどおーとろしいらしいね

まっ 当事者にならんかぎり わからん感情かも←結局ヒトゴト(^^;)


おいらも 角田さんの本 好きですよ
読み終わって どよ~ん てなるけど(^^;)
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いいですよね、角田さん (亮子&吉熊)
2011-12-23 21:23:46
オリオン殿

激しく同意です。

>最初に受験なんか無関心 あるいは 受験なんかさせないわ的なことをゆうてしまってるから おかしなことになるんよね

本当に。
この小説の中の人たちもきっと最初はそうだったんです。しかし、「何か、抗いがたい空気」に飲まれていって…。そこらへんの心理の変化を角田さんは上手に書いていました。

ヒトゴトって割り切ることも大切ですよね。


いいですよね、角田さん。
ここ最近、ハマっています。

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