今日は、釈迦の誕生日とされ、花祭りの日でもあります。
30年も昔、まだ不便だけれども充分に静かであった鎌倉のとあるお寺で、
降りしきるやうな海棠の花の元で、この日に遭遇したことがあります。
いま思ひ出しても、本当に美しい日、でした。
幾度かの事前の検査を終へて、今日は家人のひとりの手術の朝、でした。
心配ないですから、と医師にいはれ、数日の入院で済むとのこと。
今まで我が家は、貧しいけれども、幸ひに病や怪我に見舞はれることも久しくなく過ごしてきました。
準備を済ませ、車に乗り込む前に30分ほど時間が空き、ふと、ヨーヨー・マのバッハが聴きたくなりました。
彼の二度目の無伴奏チェロ組曲です。
まったくに浪々と響く彼のチェロの音色は、
バッハにしては、少し雄弁すぎるほどですが、
降りだしはじめた春の雨とともに、気分を落ち着かせるには充分のものでした。
思ひもよらず、バッハの音楽が、250年の歳月の果てに、中国人のいちチェリストが録音した曲を、出羽の鄙の地でオジサンに聴かれてゐる、といふ不思議な時空を感じて音楽に感謝したところです。