中公新書で出版された、高橋義夫先生の新刊です。
先日、飲み会の計画話(?)で高橋先生とお会ひし、頂戴しました。
後書きにも書かれてをられましたが、以前から話題に上がってゐたものでした。
大変面白く読みました。
幕末近い酒田の街の、足軽目付の生活や出世争ひ、事故や事件が
高橋先生の、低い、いつくしむやうな視線で描かれてゐて
旧い資料の読み下しではなく、一篇の小説になってゐる処が素敵です。
特に、鍋・釜・米を盗んでは売り払ふ盗っ人の姿や、身持ちの悪い女の
出奔する姿が、酒田の街角に浮かんできます。
やがて、それらの姿が、理不尽な戊辰戦争の波に飲まれてゆく終章は、
ページの関係か多くは語られず、声高にも語られてゐませんが、
読むものに、本当に明治維新は正しかったのか、といふ
素朴な疑問を持つのに充分なものでした。
お盆はあまり帰れないかもしれませんが、
今度はお会いしたいものです