やまがた好日抄

低く暮らし、高く想ふ(byワーズワース)! 
山形の魅力や、日々の関心事を勝手気まま?に…。

『グレイト・スタンダード』/グレイト・ジャズ・トリオ

2010-07-09 | 書棚のジャズアルバムから


研修で新潟へ行きました。

きはめて個人的な偏見で、仙台市同様、新潟もあまり好きではありません。
偉大な田舎の都市、といふ感じで、鄙たる山形の方が魅力があります。

往復路、『グレイト・スタンダード』の2枚のアルバムを聞いてゐました。

先日亡くなった、ハンク・ジョーンズの演奏です。

初めてトニー・ウィリアムスとロン・カーターとで組まれたグレイト・ジャズ・トリオの出現は、如何にも颯爽としたものでした。
ピッチャーの投球姿のジャケットもそんな印象でした。

渡辺貞夫とのセッションの旧いテープがありますが、宝のやうに大事なもので、停まることのない爽快な演奏でした。


三代目のトリオとなるこのアルバムは、バックが若いせゐか、ピアノも跳ねるやうに進行して、ジョーンズおじさんも軽快に演奏してゐます。
ただ、一寸、その演奏に、曲によっては、哀しみがでてこないのは、すこし残念な気もいたします。

エディ・ヒギンズ

2010-05-16 | 書棚のジャズアルバムから


エディ・ヒギンズの『恋のためいき』

ピアノ・トリオですが、ドラムスの代はりにギターでのトリオ。
それゆゑの”軽み”が、とても、いい。

片意地はって、難しい顔をして聴くジャズではなく(そんな、ジャズ喫茶の雰囲気も、今は昔の話、です。小生がよく行った新宿のジャズ喫茶は、壁に埋め込まれた馬鹿でかいスピーカーに、この身を壊してくれ、とばかりにタバコの煙の雲の中で、長髪の、小生も肩までの長髪だった! 若者がテーブルを見つめながら音に身を沈めてゐた…)、こころがすっと軽くなるやうな、けれど下品ではない、稀有な音楽です。

きっと、小生は、この種類ばかり聴いてしまふと飽きてしまふのですが、ここしばらく続いてゐる心の痛みには、新緑の若草色同様に、理屈なくこころ救はれる。

『ブッカー・リトル』

2009-03-26 | 書棚のジャズアルバムから


ブッカー・リトルによる、名作アルバム『ブッカー・リトル』

50年近く前の、夭折したトランペッターの名作。
まったく、ずゐぶんと久しぶりに聴く。

LPでも、CDでも、このディスクの一曲目を聴くと、彼の天才を信じないわけにはゆかない。
奇しくも、リー・モーガンやフレディ・ハバードと同い年だったといふことですが、彼等とはまったく違ふ、今聴いても本当に新鮮に響く伸び伸びとした音色と、同時に萌芽し始めてゐた作曲能力の素晴しさ。

エリック・ドルフィと組んだ幾つかのディスクはありますが、小生は、どうも、ドルフィの演奏は余り好きではなく(「ラスト・デイト」以外は)、削除法でこのワンホーンのアルバムになってしまふ。

久しぶりに聴いたら、ベースのスコット・ラファロの天才ぶりに改めて驚いてしまった。20台半ばの彼等の音楽は、まったく、新しいジャズを創ってゆかうといふ気概に溢れてゐる。
そして、ともに(ひとりは病で、ひとりは事故で)、間もなくの死を迎へることを知ってゐる我々は、その清冽な音楽のままで遺されたこのアルバムを、彼等のよすがとしてしか聴けないその辛さに言葉を失ふ。

ドリューの三部作

2008-12-24 | 書棚のジャズアルバムから

さほど熱心なケニー・ドリューのファンではなかったけれど、意外に彼のアルバムは多い。
若いころの「ケニュー・ドリュー・トリオ」「ブラック・ビューティー」、そして、「バイ・リクエスト」「ファンタジア」「ララバイ」
確か、デュオのアルバムもあったはずである。

そのなかで、ヨーロッパ三部作ともいはれてゐるアルバムが、やはり、よい。
そんなに繊細な音楽を奏でる、そんなに詩情溢れるピアノの音色の持ち主ではないけれど、この三部作は、いつ聴いても新鮮である。
乾いたメランコリーが,聴くたびに心地よい。
きっと、日本のスタッフが創りあげた稀有の傑作群だと思ふ。
(只、ジャケットは、いつ見ても安っぽい気がするけれどー)

これらの後の「クレオパトラの夢」あたりでは、音楽に勢ひがなくなった気もする。

パリ北駅着、印象



欧州紀行



旅の終りに



『Spring Is Here』/小曽根 真

2008-11-15 | 書棚のジャズアルバムから


小曽根 真を聴いたのは、10年ほど前でしたかー。
山形のジャズ愛好家に誘はれて、満席となってゐた小さなホールで初めて聴きました。
トリオのバックは日本人だったと思ふ。圧倒的な力量とリズム感で、大盛り上がりの一晩でした。

『Spring Is Here』
スタンダード中心のアルバムなので、楽しみに聴きましたが、
勿論、どれも見事な演奏で、クリアな音色、歯切れのよいリズム、ジョージ・ムラーツの達者なベース、ロイ・ヘインズの強いドラム…。

でも、何か、物足りない。
それぞれのトラックは完璧なのに、聴き終はると”得をした!”といふ気にならなかった。
まあ、天邪鬼の小生の至らなさなのでせうがー。



ダイヤルJ.J.5/J.J.ジョンソン

2007-07-17 | 書棚のジャズアルバムから


J.J.ジョンソンの代表盤であり、名作です。
1957の録音。

メンバーが素晴しい!
トミー・フラナガンのピアノ、ウィルバー・リトルのベイス(とても、いい!)、エルヴィン・ジョーンズのドラムス(この頃から、すでに、強力なドラミングが凄い!)。
そして、結果的にジョンソンのトロンボーンを強力に引き立てることになるボビー・ジャスパーのサックスとフルート。

難しいことは何もなく、厚い2ホーンの音のからみを聴いてゐると、あっといふまに時間が過ぎる。
ある意味、時代的にも、ジャズがジャズらしい姿を一番見せてゐた頃の演奏なのかも知れません。




カインド・オヴ・ブルー/マイルス・ディビス

2006-12-16 | 書棚のジャズアルバムから

         


先日、FMで「So What」の出だしが流れてゐて、久しぶりに聴きたくなりました。

今さら、何も云ふこともない、名盤です。
マイルス・ディビスのディスクは、そう多くは持ち合はせてゐないのですが、
それでも1960年代の半ばまでは、どれも完成度の高い演奏ばかりです。

このころ、マイルスの1950年代末期の録音には、
”出来の悪いコルトレーン”が沢山セッションに参加してゐて、
師匠のマイルスに、「お前は、バカだ! ○○だ!」と云はれながら、
(それは、演奏技術に関しても、麻薬の常習に関してもー)
必死に乗り越へやうとする、歯を食ひしばったコルトレーンの音が聴けます。

確かに、このディスクでも、マイルスの水が流れるやうなミュートに対して、
まったく、無骨なまでのコルトレーンの音です。
キャノンボール・アダレイより、ゴツゴツとした演奏です。

以前、この頃のマイルスの映像をNHKで見たときに、
自分のソロが終り、コルトレーンのソロに代はった時に、
まるで興味がなさそうに煙草に火をつけてゐました。
(元々、マイルスは、さういふところがあったさうですがー)

この数年後には、コルトレーンは自らのバンドで破竹の演奏を展開してゆくわけですが、グループからのクビや再参加を繰り返しながら、それでも決してコルトレーンを棄てなかったマイルスの、許容度の大きさがすでに演奏にも現はれてゐるかのやうに、破綻のない緻密な演奏の連続のディスクです。


(写真は、ジャケット)



ケルン・コンサート/キース・ジャレット

2006-08-07 | 書棚のジャズアルバムから







1975年1月。
ケルン、オペラ劇場。

「ソロ・コンサート」と共に、真に才能あるピアニストとしての
キース・ジャレットの名を確立させた名盤です。

うなぎ上りの温度に(今日の山形市は、35度近く…)、ひと時の涼を求めるやうに聴きました。


このディスクを初めて聴いたのは、20年ほど前。
場所は、東京原宿の同潤会アパートの一角。

在京の時、小生が勤めてゐた会社のモデル・ルームの中でした。
確か、そのモデル・ルームの留守番を云はれて、
同僚が「これ、いいよ」と云ひ捨てた言葉を思ひだして、ひとりで聴いてゐました。

殆んど、ホワイト一色のその部屋で、最初の硬質な音が鳴り出した時、
天上の曲のやうに聴こへたものでした。


実は、事前に完成された楽譜があったのではないのか、と云はれたほど、
次々に沸きでる、即興とは思へないほど、その旋律は美しく、そして完成度が高い。
キース独特の、粘りつくやうなメロディは、このコンサートで一気に頂点へと向かふ。

彼のソロ・コンサートのディスクは書棚に幾つかありますが、
全体の長さといひ、勿論その演奏内容といひ、
やはり、この「ケルン・コンサート」が白眉、でせう。



(写真は、ジャケットより)

 





 


アランフェス協奏曲/ジム・ホール

2006-07-25 | 書棚のジャズアルバムから







1975.4.録音。

すっかり、”名盤”になってしまったディスク、です。
四半世紀以上も前の録音ながら、聞くたびに、すべてが新しく聞こへるのは、
メンバーと、この盤を仕掛けたクリード・テイラーのセンスのよさでせう。
ジャケットも、洒落たものでした。

前半の(LPですと、A面)の3曲は、きはめてオーソドックスな、リラックスした演奏で、
後半のアランフェスも同様ですが、どれも参加メンバーの抑制された演奏が美しい。

信じされない程の弱音で出てくるポール・デスモンドのサックス。
甘く、スキャットのやうなチェット・ベイカーのトランペット。
この頃、乗りに乗ってゐたロン・カーターの強いベース。

ジム・ホール(おじさん)の演奏の旨さ、センスのよさ、渋さは勿論ですが、
小生は、このなかのローランド・ハナのピアノが好きでした。
元々正規のピアノを学んだといふ彼のピアノは、その音色も素晴しく、
この後に録音された「プレリュード集」といふアルバムは、心象風景集のやうな素敵なものでした。

CTIといふレーベルのディスクで、当時、一連のヒットしたアルバムを”軟弱もの”と決めつける風潮や批評もあったやうに思ひますが、今にすれば、当時のジャズファン(小生もしかり、でせうが)は、
きはめて気持ちの狭い、凝り固まったファンであったといふことでせう。

確かに、薄暗いジャズ喫茶で、長髪(小生も、さうでした! 今は、昔…!)の青年達が固いソファーに身体をまかせ、時にテーブルを見つめ、時に天井を見ながら黙々と音楽を聴いてゐる図、なんて、今ではやはり笑ってしまひますからー。
そして、その場での音楽は、コルトレーンだったり、A・アイラーだったりするわけで、
この、ディスクのやうな甘く、かろやかな音楽ではある意味、場違ひでもあったのでせうけれどー。



(写真は、LPより)













ビル・エヴァンス/ライブ・アット・モンマルトル2

2006-07-16 | 書棚のジャズアルバムから
    
   
       


1969.11.24.コペンハーゲン
ビル・エヴァンス
エディ・ゴメス
マーティ・モレル

「”ワルツ・フォー・デビー”ライブ!」と邦題がついてゐたアルバムです
(かなり、ひどい邦題ですがー)。

この年の11月、ビル・エヴァンスはスカンジナビア・ツアーを行ひ、どこでも大きな拍手で迎へられてゐたやうです。

エヴァンスのピアノは、相変はらず破綻がなく、アルバム一枚はあっといふ間に聞き終へてしまふ。
その中で、トリオに参加して2年目のエディ・ゴメスのベースが際立ってゐる。
とても力強く、そして、憬れの先輩に対して、けれどしっかりと自分の主張を出してゐる。
それかあらぬか、エヴァンスのピアノも、彼にまとはり付いてしまった”伝説”を消し去るかのやうに、強く荒々しい。
後半の数曲が、さういふ意味でとてもいい。

考へれば、ビル・エヴァンスは、紆余曲折がありながらも、1980年の壮絶なラスト・ライブの直後の死まで、数多の演奏をし、数多の録音を残してゐる。
間違ひなく、1961年の一連のライブ録音は非の打ちどころもないベスト・パフォーマンスではあっただらうけれど、確かにスコット・ラファロは死んでしまっただらうけれど、ビル・エヴァンスは生きながらへてゐた。

生きながらへる為に、この端正なアルバムジャケットの写真とは裏腹に、
麻薬も続けただらうし、メンバーの作曲を許さなかったといふこともあったのかもしれない。

けれど、残されたものは、そんなあがきをさほど感じさせない、軽快でセンシティブな演奏ばかりである。
ある意味、そのことは彼にとって、不幸なことであったのかもしれないがー。



(写真は、ジャケットから)