待望のCD化である。麻生レミがアトランティックに残した2枚のアルバムが遂に再発された。
掲載写真左は76年のファースト・ソロ「オウンラインズ」、右は78年の2枚目「ザ・ビギニング」。
私が麻生の名前を知ったのは、内田裕也&フラワーズの「チャレンジ!」を91年の再発CDで
聴いたことによる。67年に欧州で最新のロックを体現した裕也さんが、日本のロックを洋楽と
同じようなレベルで演奏し、洋楽と対等に聴いて違和感がないバンドを目指して集めたのが
フラワーズであった。そこでの麻生の役割は、グレイス・スリックやジャニス・ジョプリンのように
歌うことであったように思う。
そして、その役割は見事に果たされた。2枚組の「ロックン・ロールジャム’70」における、
パーカッションとシタールの音の波を縫うかのように歌う『オール・イズ・ロンリネス』には度肝を
抜かれたものだ。アルバムとは別にフラワーズが残したシングルや映画の挿入歌で聴ける
純和風というか、いかにも歌謡曲然とした歌を歌うその歌唱も実は気に入っていたりする。
そんなものだから、彼女が残したソロ・アルバムに興味がいくのも当然である。
「オウンラインズ」と「ザ・ビギニング」は趣が違う。前者は幾分ロックとソウルの香りが強い。
それは『RIVER DEEP , MOUNTAIN HIGH』『I'D RATHER GO BLIND』というカバーからも
伺えるが、バックを務めたウォーター・バンドの井上堯之作のアルバム・タイトル曲の出来が
群を抜いて素晴らしい。ここでの歌唱はロック・ファンにもソウル・ファンにも受け入れられるのでは
ないだろうか。勿論、トラックが良いのは言うまでも無い。
「ザ・ビギニング」は時代が進んだせいか海外録音のためか、幾分洒落た音になっている。
ソウルというよりかは、ディスコ或いはフュージョンもしくはA.O.R.の趣すらある。個人的には
この手の音のバラッドは得意では無く、悪く言えば「記名性の無い、ルパン3世のエンディング曲」の
ような感じもするのだが、それでも全体の歌唱には余裕を感じる。
アルバムはジャケット・デザインで損をしているような気もするが、1枚を通して聴けばそれはそれで
楽しいアルバムだ。
私が2枚のアルバムを聴いて良かったと思ったのは、いつまでもジャニスやグレースのコピーを
していなかったという事実故にというところも大きい。当たり前と言えば当たり前だが、それだけ
フラワーズでの歌唱の刷りこみは私にとっては、大きいものだったのだ。
フラワーズの現行再発CDにはアルバム未収録のシングルや未発表カバーが収録されている。
それ以外の麻生の歌唱は下記のCDで聴くことができる。
94年に出た「カルトGSコレクション・コロムビア編VOL.2」には、ほとんど麻生のソロといってもいい
『ファンタジック・ガール』を収録。06年に出た「カルトGSコレクション・日活編」は、麻生レミ /
フラワーズの曲がインスト2曲を含む8曲を収録。何れも映画用に録音されたテイクなので貴重な
音源である。懐メロと言われればそうなのだが、私は麻生が歌う『君恋し』が好きだ。こういう
曲を受け入れられるようになったということは、私も正真正銘の爺ということなのだろう。(笑)
インストの『ウィ・アー・フラワーズ』は曲の冒頭では裕也さん達による「WE ARE FLOWERS!」という
掛け声が入り、曲間では「ARE YOU ALRIGHT ?」という声も入るが、完全インスト・バージョンは
00年に出た「GO CINEMANIA REEL6」というCDで聴くことができる。このCDには、
「日活編」に未収録の1分足らずのインスト『TSUMUZIKAZE OF LOVE』も収録されている。
そうそう、「日活編」は、モップスの映画用録音『ベラよ急げ』『朝日よさらば』も収録しているので、
モップス・ファンもスルー厳禁。
そう言えば。映画「GSワンダーランド」の中で、栗山千明演じる大野ミクがバンド解散後に
ソロになったシーンを見て、勝手に「麻生レミって、こんなかんじだったのかなあ。」なんて
妄想していたことを告白して、本稿を終わりにする。(笑)
今回初めてビギニングスを聴いて、ああと(笑)
思うとこのレコードのあとに日本の女性シンガーはこぞってこういう音をバックにレコードをだしていて、良いも悪いも麻生レミの影響は大きかったわけですね。
「オウンラインズ」のイメージを期待して
「ザ・ビギニング」を聴くと、確かに「あぁ」
ですね。(笑)
時代と共にボーカルのスタイルが変わっても
個性的でありつづけるところは、凄いと思います。