HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

ドキュメンタリーの極致

2010-11-10 20:38:34 | ROCK

今年の春頃だったろうか、COLLECTOR'S CHOICE MUSIC LIVEと銘打って、ジョニー・ウィンター、ホット・ツナ、
ポコの70年代初期のライブ盤が廉価でリリースされた。廉価だったのとジャケット写真が良かったので3枚とも
購入したのだが、どれもなかなかの音質で楽しめた。そんなCOLLECTOR'S CHOICE MUSIC LIVE から
ジェファースン・エアプレインのライブ盤が4種発売された。

エアプレインのライブ盤は、近年ちょっと怪しげなブツが数枚リリースされているのだが、今回の4枚はどれも
アーティスト写真がしっかりしていて、尚かつ音質もなかなかの物だ。特筆すべきは掲載写真の2枚。掲載写真右は
66年10月15日、フィルモア・オーディトリアムで収録され、この日はヴォーカルのシグニ・アンダースン最後の
ライブであり、掲載写真左は翌16日同じくフィルモアで収録されたのだが、この日は新加入のグレイス・スリックの
お披露目コンサートだった。
普通、メンバーが交代する時というのはバンドの進行は停滞するものである。アルバム制作中なら中断し、
ツアー中ならツアーは延期になったり中止になったりする。大抵メンバー・チェンジはバンドが活動を停止あるいは
充電期間中に起こるパターンが多いのだが、エアプレインは何の空白期間も無くメンバーチェンジを敢行したのだ。
容易周到というべきか、前進を止めたくなかったからか何れにしろエアプレインの歴史の中でシグニの脱退の
翌日にグレイスが歌ったことは有名であるが、その事実が記録されこうして耳にすることが出来ることに、
ちょっと興奮している私がいる。
そういえば、このバンドはそれ以前にドラマーの交代を速やかに敢行しているのであった。

出産を経て家庭に入るシグニの挨拶に対し、観客は暖かい拍手を送っている様子が伺えるのだがおそらく、翌日の
ライブは元グレイト・ソサエティのグレイス・スリックが加入して歌うことは事前にアナウンスされていたのだろう。
翌日の演奏は大して混乱も無くゆったりと始まる。それにしても、バンドはどんなふうにリハを重ねたのだろう。
楽器奏者でなくボーカリストの交代だからレパートリーや曲のキーを含めて綿密な打ち合わせがあったであろうことは
想像に難しくない。 グレイス加入後初のライブではカバー曲がレパートリーの1/3を占め、テンポも割合ゆっくりとした
曲調のものが多い。これは前夜からの流れをそのままいるといえる。ここではまだグレイスの曲はレパートリーに
組みこまれていないが、今回発売された内の1枚である約1ヵ月後の11月25日では「WHITE RABBIT」を
聴くことが出来る。後にアルバム「SURREALISTIC PILLOW」に収録される曲も徐々に増えてきて、
今回発売されたライブを続けて聴くと、まさに歴史が動かんとする様を体感できるというわけだ。

グレイス・スリックの参加はバンドが絵的に注目を浴びる存在になるのに大きく貢献したといえるが、
個人的なことを言えば、エアプレインのレパートリーの中で好きな曲は大抵、マーティー・バリン作だ。
演奏を聴くとなると、ジャック・キャサディのベースとヨーマ・コウコネンのギターに耳がいくという具合で
私にとっては何とも不思議なバンドなのだ、ジェファースン・エアプレインというバンドは。

コメント
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