HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

早川義夫 / 前口上

2008-02-04 21:43:18 | 日本のロック・ポップス
唐突であるが私はスティーリー・ダンが苦手だ。
体質的に受け付けないと言ってもいい。しかしながらアルバムは
全て揃えてある。実際のところ「CAN'T BUY A THRILL」だけで
事足りるのだが、何故全てのアルバムを所持しているかというと
スティーリー・ダンを全否定するだけの理由を見つけられないから。
もっと平たく(もしくは、いやらしく)言うと「いつか好きになるかも
しれない、その時に売り払っていて手元になかったら腹立たしいから」
という情けない理由によるものだ。
決して私の嫌いな人が聴いているからとか、私の好きな人が貶しているから
というものではない。

しかしながら私が浜口庫之助を聴かないのは多感な10代(といっても
ほとんど10代は終わりそうだった)に、ジャックスを聴いたからに
他ならない。今の早川義夫が浜口のことをどう思っているか知らないが、
私の気分は40過ぎの今に至るまで「ロール・オーバー庫之助」である。

掲載写真は黒沢進氏が自主制作した早川義夫のシングル「前口上」。
86年2月2日の発売で限定997枚。
70年に音楽活動を停止し後に復活することになるが、活動停止前の曲と
しては最も後に作った曲で、スタジオ録音は聴くことができず
このシングル(70年3月31日)と92年に出た「BEST OF SOLID
VOL.1」収録の70年4月1日の共にライブ録音でしか聴けない。
いつ聴いてもここに描かれたやるせなさというか、虚無感に入り込んで
抜け出せなくなる。楽しくおかしく過ごしてもそれは一瞬でしかない。
少なくとも私のような「持たざる者」にとっては。
日々小さな幸福に喜びつつも、何となく悲しかったりするのは可笑しいか・・・。

このシングルのB面はA面の1年前、69年3月31日のジャックスの
演奏による「からっぽの世界」が収録されている。曲が終わると客席の
何人かの女の子が多分「せーの」で「ジャックス!」と叫ぶのだがすぐに
野太い男の声で、よく聞き取れないが「やかましい」と返されてしまう。
このやりとりはカットできただろうが、あえて収録したと思う。
この日の録音のほぼ全貌がわかるテープは広く出回っているので聴いたことが
ある人もいるだろう。
「第五氷河期」を演奏終了後に谷野ひとしが「1万そこそこのベースを
使っている。プロの中では一番安い楽器で・・・」と話していると客席から
「分相応じゃねえか」とやじられる。

なんともやりきれない。

フォークルのあの歌とは遥かにかけはなれたところにある、
このやりきれなさは今でもリアルだ。
コメント (6)
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