ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

05/04/07 ミュージカル座『ルルドの奇跡』、宝田明を見直す

2005-05-16 23:18:39 | 観劇
昨年の東京芸術劇場のミュージカル月間は3本を全て観ることになってしまった。ミュージカル座の『ひめゆり』は、出演者も魅力的(本田美奈子、岡幸二郎、戸井勝海など)だったが、沖縄戦を描いた内容も見ごたえのあるものだった。
『月刊ミュージカル』3月号のミュージカル座の主宰者ハマナカトオルをゲストにした対談を読んで、創立10周年記念公演『ルルドの奇跡』を観に行こうかなと思っていた。その矢先に『鴻沼福祉会コンサート2005』に出演していた萩原かおりが『ルルド...』にも出演するからとロビーでチケットを売っていた。チラシだけもらって帰り、娘にきくと観たいというので電話で2枚予約して観に行った。
今回の公演ではハマナカトオルの恩師である宝田明が出演するというのも見たかった理由だった。今から25年前、宝田芸術学園に入学して2年間ミュージカルの基礎を学んだ彼の恩師なのだそうだ。宝田明は何年か前のNHKの田畑智子がシングルマザーを主演した朝ドラ=『私の青空』で彼女を捨てた男=筒井道隆の父親で二人の間の息子・太陽君のグランパ役を演じた時に、若い時に東京でスターをめざしたという役どころで自分が経営するスナックでド派手に歌い踊るシーンを見て、往年のミュージカルスターだった頃を想像していた。とにかく、年配の俳優さんはお元気なうちに見ておくことを心がけている私は『34丁目の奇跡』も観ようかと思っていたくらいだが、いろいろとたてこんでいて観ることができていなかった。そこでこの作品を東京芸術劇場に観に行って念願をかなえたのだった。

ストーリーは実話に基づいている。
1844年、フランスの田舎町ルルドに生まれた貧しく信仰心の厚い少女ベルナデット(伊東恵里)は、ある日マッサビエルの洞窟で美しい女の人に出会い、その人の命ずるままに行動する。まず、町の教会の神父(宝田明)に彼女の伝言=洞窟に聖堂をたてて人々を来させるようにという内容を伝えに行くが、黙殺される。次に彼女の言うように洞窟に穴を掘ると泉が湧き出し、その水で怪我をした人や病気の人の身体が治っていく。泉の水の奇跡をきいた人々が集まるようになり、その奇跡はベルナデットの言う女性のお告げによるものなのか、ただの偶然によって湧き出た水の迷信で彼女が嘘をついているのかをめぐって大騒ぎとなる。
ついにカトリック本山の教皇庁はベルナデットを審問にかける。ベルナデットは女性が誰かはわからないと言い、ただ彼女が「私は無原罪の御宿りです」と言っていると話す。「無原罪の御宿り」という言葉の意味をベルナデットは知らないのだった。その言葉は神学上、聖母マリアのことをさす言葉なのだ。身体が弱くて寝付いていることが多くあまり学校にも行けなかったベルナデット。そして注目の人になってしまった彼女と家族。ベルナデットは家族にも平穏な暮らしをしてもらうために、一人家族のもとを離れて修道院に行く。そして、聖母マリアの予言=「あなたはこの世では幸せになれないが、召された後での幸せを約束します」の通り、35歳の若さで亡くなる。
そして30年後に掘り出されたベルナデットには埋葬時の姿のままだったという奇跡が起こっていた。教皇庁は遺体を確認し、ベルナデットを聖女に列した。本当にパンフレットには生きている時そのままのベルナデットが表面に薄い蝋で覆われた姿でガラスの棺に横たわっている写真が掲載されていた。私はキリスト教を信仰するものではないが、何らかの奇跡のような力が働いたのだろうとは思う。

キャストはミュージカル座の多くのメンバーが役につけるように月組と星に分かれて上演されていて、私が観た公演は月組の方だった。メインキャストも一部入れ替わるようになっていた。
ベルナデットの伊東恵里はハマナカ氏が対談で言っていたようにすごく歌が上手い。プロフィールを読むと初演の頃の『ミス・サイゴン』でキムを演じたこともあるようだ。役を深めるためにルルドにおもむいたり、カトリックの教えを乞うているうちに次第に心のよりどころとなり、洗礼を受けたという。自らの信仰にのっとった演技は思いがあふれるようなものだった。
萩原かおりはベルナデットの奇跡をいち早く信じて大騒ぎをする金持ちのマダム・ミレー役で、美人さんだし、オペラの正統派的な歌い方が逆に役にぴったり合っていた。ドズー医師に戸井勝海、市長役に山形ユキオ、警察署長役に林アキラ、ベルナデットの父にさけもとあきら...『レ・ミゼ』の卒業メンバーがずらっと揃っている。こんなベテラン勢の助っ人があればミュージカル座の若い団員の頑張りと合わせてなかなか見ごたえのある舞台となっていた。
最後に特筆すべきは、ぺラマール神父の宝田明。今回ハマナカ氏は恩師が出演を快諾してくれたので神父のソロの曲を増やしているという。そのソロが素晴らしかった。声もよく声量もあり、情感もたっぷり。身体もひきしまっていてカッコいいのだ。往年の大スター、いまだ健在という感じ。観にきてよかった~。
さらに彼は教え子のこの作品をフランスで上演できないかと一肌脱ぐつもりだともパンフに書いてあった。自分がかつてスターとして成功しただけでなく、学校をつくって人材を育て、その教え子が舞台芸術学院でまた人材を育てている。今の日本のミュージカル界を大きく支えてこられ、今からもまたそのように役割を果たそうとされているかと思うと頭が下がる。ぜひ、今後も頑張っていただきたいものだ。

写真は、パンフレットの表紙より。
ミュージカル座のHPはこちら→http://www.musical-za.com/
『私の青空』のHPはこちら→http://www.nhk.or.jp/drama/archives/aozora2002/


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2 コメント

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Unknown (アンリ)
2005-05-17 15:54:51
TBありがとうございました。

ご要望どおり私の「ルルドからの水」をTBします。

ご参考になれば幸いです。
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パリのアンリさん、ありがとうございますm(_ _)m (ぴかちゅう)
2005-05-17 15:56:27
「ルルドの泉」でウェブリサーチしてみて、パリ在住の小川アンリさんのこの記事にたどりつき、TB返ししていただくようお願いして、今届きました。ありがとうございます。

この作品はハマナカさんのオリジナルミュージカルですが、宝田明さんが現地での上演もできないか検討しているようですので、機会がありましたらよかったら観てあげてくださるようにお願いしておきました。どうぞよろしくm(_ _)m

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