ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

09/01/12 演舞場花形歌舞伎昼の部③いま最ニン?!の海老蔵の権太

2009-01-17 23:59:34 | 観劇

海老蔵初役の権太の評判がいいので楽しみにしていて、特別ポスター4種類のうち海老蔵の権太のポスターもいいのでエイっと携帯画像のLサイズで撮影。さて観始めると・・・・・・!
2006年襲名巡業公演の勘三郎の権太
2007年1月浅草公会堂の愛之助の権太
2007年3月歌舞伎座の仁左衛門の権太
2008年6月歌舞伎座の吉右衛門の権太

【義経千本桜 木の実・小金吾討死・すし屋】
今回の配役は以下の通り。
いがみの権太=海老蔵 女房小せん=笑三郎
鮓屋弥左衛門=左團次 娘・お里=春猿
母おくら=右之助 弥助実は三位中将維盛=門之助
若葉の内侍=笑也 主馬小金吾=段治郎
梶原平三景時=獅童

<木の実>
笑三郎の小せんのやっている茶店で笑也の若葉の内侍と段治郎の主馬小金吾が六代君が休息するところを見てしみじみ澤潟屋の若手でちゃんと古典歌舞伎をやっているなぁと思った。笑也の台詞は特にしゃべり始めの時に歌舞伎の女方の台詞回しになっていないのが残念だったが(^^ゞ
そこに海老蔵の権太が目の周りを太く黒く描いていかにも悪党という雰囲気で登場。台詞回しも実に自然。海老蔵は高校時代からヤンキーだったという話は聞いているが、その人生経験が生きるのか実に不良っぽい小悪党の雰囲気は実に自然。この権太は、当代海老蔵のニンが最も生きていると思った。
段治郎は長身だが顔立ちが若々しいので元服の時期を逸した大前髪の小金吾の役も無理がないのがいい。小金吾が権太に強請られて怒りのあまり刀を抜きかかるのを海老蔵の権太が寝そべりながら足を伸ばして刀の柄を押さえ込む二人の形が実に実に絵になっていて溜息が出る。長身の段治郎が上から極まっているのをジムで鍛えた筋肉が見事な海老蔵の足がしっかと下から受けて極まっている。若い二人の立役の魅力が生きる!

小せんが権太を嗜めて反論される件。赤い着物で隠れ売女をしていた小せんに入れ込んで身を持ち崩したと権太に言われてもじもじする笑三郎の小せん。年下の男との間に子どもができて尽くしている年上女房という感じ。意見をするのも年上の分別だし、最後に夫のために命を投げ出すのもその年上の自分を女房にしてくれた愛する年下男への分別のある情の深さを感じてしまった。

息子に「ちゃんも一緒に帰ろうよ」と言われてほだされてしまう様子にも、子どもには優しいヤンキー兄ちゃんっているよなぁという自然さがあってよい。昨年9月の「実盛物語」でも感じたが、海老蔵は子どもに優しくする役というのがまたいい。成田屋の父子の情愛の温かさが偲ばれる感じがする。

<小金吾討死>
とにかく段治郎の小金吾の立回りが見応えたっぷり。そして捕り方たちが縄で網状のものをつくってその上に大柄な段治郎を乗せるのは大変だろうにと思いつつ、見事に極まると観ているこちらもホッと安堵(^^ゞ
<すし屋>

春猿のお里は田舎娘にしてはあまりに垢抜けているがまぁいいか。門之助の維盛は実にニンに合っている。左團次の弥左衛門とのやりとりも実に安定した歌舞伎になっていて安心して観ていられる。
海老蔵の権太と右之助の母おくらの騙し騙されも実に親馬鹿の情愛があっていい。海老蔵の大きな目をしばたたいての泣き真似も可笑しみたっぷり。そういうチャリ場的な場面もよければその分、後の悲劇が際立つというもの。

手拭で鉢巻をして肌も露わになった海老蔵の権太の身体がまた見事。胸筋がくっきりしている権太というのはかつてないのではないかと思えた。舞踊で鍛えてもここはこんな風な肉付きにならないだろうから実に21世紀的なマッチョ権太ではないかと推測。これはこれで現代では魅力的な見せ方だろうと思う。

獅童の梶原平三景時は愛之助の権太の時も観たが今回の方がさらによし。
権太が妻子を身替りにする策が成功と思った直後に父の弥左衛門に刺されてのモドリがまた予想以上にいい。いがみになってしまったことを本心では親に申し訳なく思っていて、それを利用して親孝行をしようとめぐらした策が誤解を生んで父親に成敗されてしまう悲劇。
しかしながら頼朝は一枚も二枚も上手で権太の策は無意味になってしまっている二重の悲劇。いがみの権太という若い小悪党=不良の兄ちゃんが浅知恵をふりしぼって妻子を犠牲にしてまで尽くした親孝行が親不孝になってしまう人生の皮肉のドラマを海老蔵の権太は初役で立派に見せてくれた。今現在、ニンということでいうと海老蔵が権太役に最も合った役者ではないかと思ってしまった次第。

この権太には父團十郎への思いの強さが投影しているように思えてならず、成田屋父子応援モードがさらに高まった。次はその團十郎の復帰の舞台「象引」について書きたいと思っている。

1/12昼の部①「口上」「お祭り」
1/12昼の部②澤潟屋の「二人三番叟」


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
マッチョ権太!! (さちぎく)
2009-01-20 00:05:04
笑えます。先代辰之助が東横ホールで初役で権太を演った時、若いピカピカの肌に汗が流れてステキでした!まだ二十歳ぐらいだったと思います。素肌がのぞくとドキッとしますね。
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Unknown (maya)
2009-01-20 22:44:43
権太って今で言えばヤンパパみたいな人ですよね。
たしかに海老蔵にすごくあってる役でしょう。
それにしてもポスター素晴らしい!
身体で勝負(?)されるとお兄さんたち敵いませんね(笑)
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皆様、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2009-01-21 00:24:51
★さちぎく様
「マッチョ権太」に反応していただき、有難うございます(笑)先代辰之助の権太はきっと素敵だったことだろうと推測します。写真でもいいからどこかで見たいものです。
>素肌がのぞくとドキッとしますね......私はそれくらいではそこまでいきません。う、スレてるかしら(^^ゞ
★mayaさま
「ヤンパパ権太」ですか!!なるほど~ヤンママとかもそういう意味なんですね。ただのヤングかと思っていました(^^ゞ
海老蔵って役に合わせてジムで筋肉をつけたり落したりすることにこだわりがあるような気がします。これからはもう少し踊りも本格的に頑張るといいと思ってます。市川宗家の跡取りへの要求水準の高い私です(笑)
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