ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/08/30 十八代目勘三郎襲名披露全国公演「義経千本桜」

2006-09-13 21:24:02 | 観劇
先日は口上までのアップで力つきた。夜の部「義経千本桜」の感想を書く。

2.義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
歌舞伎三大名作のひとつ『義経千本桜』の三段目の切にあたる「下市村釣瓶鮓屋の場」は通称「すし屋」と呼ばれる。今回はその伏線になる「木の実」「小金吾討死」を含めての上演。あらすじは以下の通り。
「木の実」「小金吾討死」
若葉の内侍(新悟)と嫡男六代君(鶴松)とお供の主馬小金吾(七之助)は、落ち延びた平維盛を探す旅の途中。下市村近くの茶店で椎の実を拾って幼君の気を紛らわせている。それを手伝ってくれたのが「いがみの権太」(勘三郎)だが、結局は金を騙し取っていく。その後、追っ手が主従にも迫って小金吾は内侍たちと離ればなれになってしまい、敢えない最期を遂げる。そこに源氏方の梶原景時から呼び出された帰りのすし屋の弥左衛門(弥十郎)が通りかかり、小金吾の遺骸から首を持ち帰る。
「すし屋」
維盛(扇雀)は権太の父でもある弥左衛門に匿われ、下男の弥助と名を変えて娘のお里と娶わせる約束になっていた。そこへ内侍と六代君があらわれ、お里は嘆きながらも維盛らを追っ手から逃す。権太は父に隠れて母に無心にきて隠れていて事情を知ってしまう。ついに梶原景時(市蔵)が弥助の詮議に訪れるが、そこに権太があらわれて維盛の首と妻子を差し出す。怒った弥左衛門は権太を許せずに刺してしまう。瀕死の権太が語りだした真実。梶原に渡した首は弥左衛門が持ち帰ったものから前髪をそり落としたもので維盛たちを逃がすために自分の妻子を身替りに差し出していたというのだ。しかしながらそれすら景時は見通していた。維盛の父・重盛に助けられた頼朝による恩返しで維盛を命を助けるために出家をうながす。全てを知った上で権太は死んでいく。

とにかく私は全部初見。5月文楽では観たのだが、やはり歌舞伎だとだいぶ違っている部分があり、その比較も楽しかった。またイヤホンガイドによると東西で演じ方が違う部分があるらしく、江戸前のなのは権太は粋さも必要らしい。

八月納涼歌舞伎に出演していた扇雀、弥十郎、市蔵、亀蔵、新悟らがすぐにこちらの巡業に参加しているのを目の当たりにすると、歌舞伎役者というのはすごいものだとつくづく感心。いろいろな役柄がしっかり身についていないとこういうことはできないと思う。
勘太郎の代役でお里に加えて主馬小金吾も七之助がつとめた。演る方は大変だと思うが観ている方としては嬉しい二役。二役の演じ分けは声までそれぞれにふさわしく、それぞれに魅力的。特に七之助の前髪のある役の声と姿が大好きで惚れ惚れしてしまう。小金吾と追っ手の立ち廻りは見せ場として有名らしく、先月の「丸橋忠弥」の時の捕り縄を使った立ち廻りの元はこっちなんだと合点した。
新悟も細身の長身ながら若葉の内侍は上品でよかった。今回はミセスの役で声が少し低めなので安定していてちゃんとききとれたが、先月の「八犬伝」の仙女役では高音域での声が不安定でかなりききとりにくかったのだ。変声期のためだろうか。鶴松も声がいいし、若君の品のよさがあっていい。
扇雀の弥助の二枚目ぶりがまたいい。お里があれほど惚れこんで猛烈アタックをしたくなるのにも共感してしまう。七之助のアタックぶりも微笑ましかった。どうも女方よりも立役の時の方が好きみたい。

さて、勘三郎である。板橋区立文化会館は花道がないので「木の実」で最初の出は客席通路を通っての登場。通路を挟んで後ろ半分のブロックの2列目の端席だったのだが、うす暗い中とはいえ、私たちのまん前を通ってくれた!!こんなんで嬉しがる私。権太は尻からげで素足を見せるいでたちが多いのだが、勘三郎の足は長くはないのだが実に形がよくて見ていて気持ちがいい。やはり「男は足」と思う。足に自信のない方はあまり露出させないでいただきたいm(_ _)m
「木の実」でのゆすりたかりからその後の茶屋女の女房(芝のぶ)や子どもとのやりとりまで実にテンポよく気持ちよく見せてくれる。こういう小悪党役を魅力的に演じてくれる。そして最後の親孝行のために尽力したことを明かす場面。女房の方から自分を身替りに差し出せと言ったのだという。こういうのはあらすじを読んでも出ていないが、芝のぶが演じた女房の風情はまさにそう言い出しそうだったなあなどと思い出しながら妻子をくくる時のつらさを話す独白をきく。勘三郎の権太は汗だか涙だかわからなく顔中グショグショ状態だし、双眼鏡のこちらも滂沱の涙。こういう泣かせる芝居で気持ちよく泣かせてくれる勘三郎の芝居は大好きだ。最後、親子の情愛で泣かせるクライマックスの中で皆に囲まれて死んでゆくという「すし屋」を結束の固い中村屋での舞台で観ることができてよかった。気持ちよく泣いて今年最後の勘三郎に満足して帰ってきたのだった。

まさに襲名の全国公演の演目としてとてもふさわしい演目だと思う。また今回の全国巡業の挑戦のひとつである全国に残る古い芝居小屋での上演であったならさらにこじんまりとした小屋全体が一体になってこの世界にひたれたのだろうなあと想像をたくましくもしてみた。いつかは私もそういう芝居小屋に遠征できるようになりたいとも思った。

写真は松竹公式サイトから今回の公演のチラシの画像。
今回の公演の口上の感想はこちら
参考情報=BBTVコアラネットでの歌舞伎の演目説明より「義経千本桜」


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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
私も泣けました (dream)
2006-09-15 22:49:01
TB&コメントありがとうございました。

2つの記事を読ませて頂きました。実は、もう一つの記事へのTBは失敗してしまいました。

やはり「文七」では、私も泣いてしまいました。この演目だからではなく、勘三郎さんだから涙が出てしまうのですよね。

「口上」の中で、勘三郎さんが「文七」の演目がシネマ歌舞伎に・・・なんて、お話して下さったのです。まだ、正式に発表されていないのに大丈夫?と思いながらも、「ここだけの話ですが・・・」な~て言われたら嬉しいですよね。「シネマ歌舞伎」が本当に楽しみになりました。

ところで、玉三郎様・菊之助さんの「二人道成寺」もシネマ歌舞伎に・・・と言うお話ですが、こちらは正式に発表されましたでしょうか?ご存知でしたら教えて下さいね。

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トラコメありがとうございました。 (とみ)
2006-09-16 00:58:53
>ぴかちゅうさま

今年お江戸最後,巡業の出発点をご覧になれて良かったですね。

なかなかきちんとした感想を書けないうちに,コメント返しでみんな言うてしまった感じがします。

可愛らしい座組でした。芝居小屋で中村屋の三色引き幕で見たかった。

長旅の上がりは京都ですぅ。
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皆様TB、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2006-09-16 02:04:42
★「夢日記」のdream様

いつもいつも画像の工夫が素敵です。

さて「二人道成寺」のシネマ歌舞伎情報は下記のHineMosNotariさんのブログの記事で知った次第です。

http://blog.goo.ne.jp/hm_notari/d/20060904

その日経のウェブサイトの記事では演目まで書かれていませんが、新聞の紙面の文章に書いてあったのではないでしょうか。

ところでdreamさんにひとつ確認です。勘三郎さんのシネマ歌舞伎は「文七元結」の文七ですね?それとも今回の「いがみの権太」でしょうか。上記のコメントで「文七」で私も泣けたとあるのでもしや書き間違いかと思いあたったんです。教えてくださ~い。

★とみ様

>各地の芝居小屋で打たれている地歌舞伎の暖かさや親近感に近いものをと意識した中村勘三郎丈ならではの座組とみました。演目のチョイスもそうではないかと思われます.....なるほどのご指摘です。

小屋がけの中村座のお芝居、一度観てみたい。浅草での平成中村座の公演も行ったことがないのです。京都南座での顔見世の観劇もいつか実現させたいと思っています。今のところは夢ですが。

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ありがとうございます (dream)
2006-09-16 11:29:57
早速、「二人道成寺」のシネマ歌舞伎情報 をありがとうございます。

そして、先日のコメントでは失礼致しました。

(※私の書き間違いです。ご指摘ありがとうございます。)

私も泣けましたは・・・「文七」ではなく「すし屋」の事です。自分ではそのように書いたつもり?でおりました。紛らわしくしてしまい申し訳ありませんでした。m(_ _)m

改めて「口上」の中で、勘三郎さんが「文七元結」の演目がシネマ歌舞伎に・・・と、仰っておられました。
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男は足 (スキップ)
2006-09-29 01:00:49
ぴかちゅうさま



トラックバックありがとうございました。

ほんとに気持ちよく泣かせてくれる舞台でした。

ぴかちゅうさんの勘三郎さんの「足」についてのくだりを読んで、そうそう!と大納得した次第です。

若干短めながら(笑)、形よく、力も色気もある足ですよね。
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続・皆様TB、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2006-09-29 01:39:33
★「地獄ごくらくdiary」のスキップ様

1回目のTBを別の記事にしてしまって恐縮でした。2度目はちゃんとできてましたね。

名古屋の中村の地での平成中村座観劇の感想を有難うございますm(_ _)m体育館を貸してくれた学校の生徒たちもこんな風に協力してくれたんですね。彼らにとっても一生の思い出になることでしょう。絶対、一度は歌舞伎座にも足を運んでくれるんじゃないかな。

勘太郎くんの休演を七之助、芝のぶのお二人がしっかりとカバーしてくれてましたよね。芝のぶちゃんはいつもピンチヒッターが多いのだけれど本役でこれくらいの役がつくようにもう少しなってくれると贔屓の私としては嬉しいのだけれど。

それと「男は足」にご賛同有難うございます。もうナマの足は観たくないという方もいますから、今の勘三郎丈の足は貴重です!キッパリ(^^ゞ
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芝のぶさん頑張りましたね (水無月)
2006-10-01 22:38:36
コメント&TBありがとうございました!



私は扇雀さんは逆に女方の方が好きですね

勘三郎さんの足については同意見!変にごつくなく程よい筋肉で綺麗です。

そういえば『木の実』の出は、花道のある『名古屋平成中村座』でも客席の座布団の間を歩いてくれましたよ。いきなり上手側壁の引き戸が開いて勘三郎さん登場で、会場は沸きまくり(これ記事に書くのを忘れてました

中村屋らしいサービス精神ですよね。
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★「月は東に」の水無月さま (ぴかちゅう)
2006-10-03 03:22:36
『名古屋平成中村座』のレポを有難うございます。それと貴ブログにて名古屋の歌舞伎事情を教えていただきまして感謝申し上げますm(_ _)m

来年のGWに名古屋の妹のところへ遊びに行くついでに遠征もどきをしたかったのですが、5月は公演がないのですね(T-T)残念。

中日劇場あたりに行くことにしようかと軌道修正して考えてみます。
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