ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

13/09/01 ビッグイシュー日本10周年記念の講演と対談を聞いてきました

2013-09-02 23:59:06 | 医療・介護・福祉など

ホームレスの自立を支援する『ビッグイシュー日本版』をJR四ツ谷駅前に立っている販売員さんから買わせていただいて愛読している。毎号ということではないが、HPでチェックして面白そうだと思える号を買わせていただいている。
『ビッグイシュー日本』のHPから「ビッグイシュー日本とは」
毎号連載で「ストリートエコノミクス」を連載している浜矩子さんと第206号(2013.1.1)の特集「『縮小社会』を生きる」で登場していた哲学者の萱野稔人さん
の講演と対談企画が9/1に「10周年記念連続イベント」として明治大学リバティタワーで開催されるということで、女子高時代の友人を誘って参加してきた。
以下、ご報告させていただく。

冒頭に、イギリスのビッグイシュー創始者であるジョン・バード氏の挨拶があった。施しではなくビジネスとしての取り組みだったからこそやる気になったし、世界に広がっているということを情熱的に話されて感銘を受けた。
【講演と対談「これからの日本を考える」浜 矩子さん×萱野 稔人さん】
各自20分ずつの講演の後、司会者なしで二人でしゃべるという型破りの対談だった。
浜 矩子さん講演
成熟した社会とは大人の社会。桂文珍の落語「老楽風呂」からイメージして「老楽社会」という本を書いている。本当の「老楽社会」に必要なマインドとして3点。
①他人(ひと)の痛みがわかること。他人の痛みが我がことの如くわかるようになることが人間の成熟度の試金石であり、感受性、想像力がなければならない。
②他人(ひと)のために動くこと。痛んでいる人のために動くこと。
③「足るを知る」(落語のお爺さんが力説していた)を超えること。「足るを知る」には自分さえよければというニュアンスがあり、自分の他に目がいっていない。
本当の大人の条件は、③と言っているだけでなく、①②が内包されていなければならない。
その上でアクション(行動)していくために必要な3つの手がある。
①(痛んでいる人に)さしのべる手。ジョン・バード氏の言われたリフトアップするための手。
②抱きとめる手。包容力の大きな社会、包摂度の高い社会にすること。
③握り合う手。上から目線ではなく、パートナーとして支える。
この3つで「足るを知る」を超えていける。

萱野 稔人さん講演
氏の「縮小社会」論をパワポでデータをいろいろ示して概説。名目賃金の日米欧比較のデータからもわかるが、日本だけが下がっている。企業だけ内部留保を増やしたり株主配当を高率で続けて、労働分配率は下がり続けている。サプライサイドだけの経済政策の発送を変えない限りはもっと悪くなる。物理的縮小だけでなく人為的な縮小であることを理解し、自分たちの意識だけでなく、政策の中身まで変えていかなければならない。

対談
浜さんの「縮小社会」のイメージは全く違っていて、成長ではなく、成熟した社会というラクになるイメージ。分配の仕方も成長の時代と違ったものとして発想を大転換して注力していく。
「分配の仕方」についてがテーマになっているのに、萱野さんはそこが提起しきれない焦燥感が漂っていた。どう抗っていけばいいのかと投げかけると浜さんが答えた。
バッシングには必ず「本末転倒」や「すりかえ」がある。それをごまかされない、まやかされないで、粘り強くめげないでやっていくことだと。
企業の内部留保が上がることについて、買収に備えるためだと言われてしまう。それをどう一蹴(イシューにひっかけている?)するかという投げかけには「基本に戻ること」だと返された。銀行でもない企業がお金をためこむのはおかしい。買収に備えるというのは敗北の論理であり、企業の「企」はくわだてであり、くわだては楽しいことで、楽しくなくてはいけない。
佐野さんのビッグイシューの10周年の奮戦記には、つらくて大変そうなことをやっているのに「面白い」「おかしい」「楽しい」という言葉がたくさん登場している。(冒頭の写真はその本の表紙)
浜さんは、アムネスティインターナショナルの「希望のための陰謀」という言葉が気に入っているという。今の状況を踏まえて希望の種を蒔く、希望の灯をともし続けることだ。
若手の萱野さんは「希望をどうやってもてばよいか」という質問をよく受けるが、そこはおいておいて、楽しい社会にする企ては考えられるという。「排除に抗う社会」として、「機会」を作り出すが大事でその一つがビッグイシューのような取り組みだ。

会場からの質問に答えて
会場の何人かとやりとりがもたれた。せっかくなので私もひとつ質問させていただいた。分配の方法がテーマになっているので、206号の特集「『縮小社会』を生きる」で萱野さんが否定されている「ベーシックインカム」についての浜さんにお聞きしたいとお願いした。萱野さんも「僕も聞きたい」と賛同してくださって、浜さんのお考えを聞くことができたのが大収穫だった。
「ベーシックインカム」はしくみがどう設計されるかが問題だが、本質的なコンセプトとしてはいいところをついている。誰もがまともに生きていくことができる社会として、まともな収入=ディーセントインカムが得られるしくみとして考えることだ。
萱野さんが否定的な見解についての説明もひとことあり、一律に現金を給付するような方法ではダメで「機会」を与えることが大事だと強調された。
浜さんからは、現金が必要な場合もあるし、ディーセントライフを送るためにその時に必要なものが与えられることが必要だと語られて、ようやく落としどころを得たように思えた。
他の方とのやりとりの中でも、浜さんの「だまされてはいけないし、絶望してはいけない」という言葉や、本日の参会者を「素晴らしき縮小社会のための市民たちの陰謀の決起集会」の参会者と表現し、そういう人がこれだけいるのだから希望を捨ててはいけないという言葉が印象的だった。

この日の夜7時のNHKのニュースで『ビッグイシュー日本』が10周年を迎えたというコーナーが5分くらい設けられ、この集会の様子も開会前の佐野代表インタビューとジョン・バード氏の挨拶が映し出されていた。
実は会場を斜め後ろから撮影した映像に私の後ろ姿も映っていたらしい。動体視力がよくないので一瞬だとパッと見とることができなかった。ご一緒したAさんから教えていただいた。有難うm(_ _)m


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