ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

10/05/03 憲法記念日に映画「日本の青空」のこと

2010-05-03 15:01:47 | 映画(映画館、DVD、TVを含む)

安倍晋三首相の頃、憲法「改正」のキナ臭い動きが強まり、気をもんでいたが、その頃に憲法を守ろうという運動の中で映画「日本の青空」がインディーズで製作された。2007年公開、各地で自主上映が広がり、2008年2月に私も文京区の上映実行委員会による上映会で観た。
Wikipediaの「日本の青空」の項はこちら
感想未アップのままにしていたが、「いのちの山河~日本の青空Ⅱ~」を観てきたので、先に簡単に書いておこう。

【映画「日本の青空」】
あらすじと主な配役は、インディーズサイトの「日本の青空」の項からほぼ引用、加筆。
沙也可(田丸麻紀)は『月刊アトラス』編集部の派遣社員。部数復活をかけた企画「特集・日本国憲法の原点を問う!」で、先輩達が白洲次郎(宍戸開)、ベアテ・シロタ・ゴードンなど著名人の取材を検討する中、沙也可も企画を出すようチャンスを与えられる。
そんな折、母(岩本多代)の助言により、沙也可は全く名も知らなかった在野の憲法学者・鈴木安蔵(高橋和也)の取材を進めることになる。
安蔵の娘・子(水野久美)と潤子(左時枝)への取材に成功した沙也可は二人の証言から、戦時下での在野の憲法学者としての安蔵の苦労と崇高さを知る。
そして沙也可は、子から託された古びた安蔵本人の日記帳を手がかりに、 安蔵を支えた聡明な妻・俊子(藤谷美紀)の存在や、日本国憲法誕生を巡るドラマの核心を明らかにしてゆく―。
戦後まもなくの日本では民主主義国家の形成に向けて知識人たちがいち早く行動を開始する。大日本帝国憲法にかわる、真に民主的な新憲法は民間人から生まれてしかるべきだという気運が彼らを取り巻いていた。
安蔵はそんな時代の流れの中で高野岩三郎(加藤剛)、森戸辰男(鹿島信哉)、室伏高信(真実 一路)、岩淵辰雄(山下洵一郎)、杉森孝次郎(坂部文昭)らと民間の「憲法研究会」を結成する。メンバー唯一の憲法学者である安蔵を中心に、彼らは新しい時代に求められるべき憲法を探るため草案完成に向け論議を重ねて力を尽くす。
時の幣原内閣に憲法改正担当の国務大臣として入閣した松本烝治(児玉謙次)が中心となって作成した憲法草案(松本試案)は大日本帝国憲法と基本的には代わり映えしないものでGHQ側にあっさりとはね返された。対して、「憲法研究会」が熟考を重ね、GHQに提出した草案は、真に民主的なものであると高く評価され、GHQ案に多大な影響を与えることに・・・。
GHQ側の主な配役は以下の通り。
ホイットニー陸軍准将=ウェイン・ドスター
ベアテ・シロタ・ゴードン=デルチャ・ガブリエラ
ハーバート・ノーマン=ブレイク・クロフォード

憲法関連映画は、第9条を中心とした関係者へのインタビュー集「映画 日本国憲法」と、男女平等規定の第24条を中心にした「ベアテの贈りもの」を観ている。
今回の「日本の青空」は、今の憲法の制定過程についてGHQからの押し付けだったという暴論も声高に聞こえてくる中で、堂々とした反論を映画作品として仕上げてくれたもの。

映画のストーリーとしては、月刊誌編集部の派遣社員が企画提案のチャンスに張り切っていろいろと調べていくうちに、埋もれかけた歴史ドラマを明らかにしていき、さらに恋人の今村(谷部央年)も巻き込まれるうちに共感して協力してくれるようになるという、現代の若い世代にもとっつきやすくするような工夫を感じた。

主権在民の憲法なのになぜ「天皇」に関わる章が初めの方にあるのか、かねてより疑問に思っていたのだが、大日本帝国憲法の改定の形で急いで制定したためだとわかって納得した。
当時の国際情勢的にソビエト連邦に日本追求の主導権を渡したくないアメリカが日本国の民主化を既成事実としてどんどん進める必要があったせいで急いだのだ。
それなのに日本政府から出てくる法案は、保守的すぎて全くお話にならないレベルで、改正作業がGHQの民政局スタッフに委ねられた。その中にベアテ・シロタ・ゴードンもいて、幼少時から日本で長く暮らした経験の中で日本女性の地位の低さに心を痛めていた彼女がワイマール憲法なども踏まえた男女平等規定を起案。それを一蹴されようとしたのをギリギリの線で盛り込ませることができたのだ。「ベアテの贈りもの」に描かれていないようなGHQ側の状況もこちらの映画で補えてより明確に把握することができたのが嬉しい。
白洲次郎がGHQ側と日本政府代表の交渉のテーブルでも頑張るわけだが、ふーんという感じ。この人物には今のところあまり関心がないので仕方がない。

さて、肝心の主人公の鈴木安蔵については今回初めて知ることばかりだった。治安維持法の違反第一号「学連事件」で自主退学し、独学で研究を続けたという。戦時下で研究を続けるには史実を淡々と追う研究であれば当局に目をつけられにくかったのではないかと推察。1937年からは衆議院憲政史編纂委員という仕事を続けていた。
そして戦後になって、動き出すのだ。1945年12月26日にGHQと日本政府に提出された「憲法草案要綱」憲法研究会案の先進性に目を見張る。
GHQ側に押し付けられたという主張をする側は、日本人の中から今の憲法の根幹をなすような草案が出されたという事実をどう説明するつもりだろうか。

鈴木安蔵とその妻・俊子の夫婦の人間関係のゆらぎもきちんと描いていることがいいと思った。ただ夫を支えた妻の存在があったというだけでは浅すぎる。この時代であれば、どうしても男性中心のものの見方になりがちであったろう。そこへの妻の申し立てがあって、夫が考える機会を持ったというエピソードは大事だ。

鈴木安蔵夫妻の高橋和也・藤谷美紀が実にいい仕事をしてくれている。舞台でも活躍してくれている二人の実力が映像でも花開いたようで嬉しく思った。

さて、続けて「いのちの山河~日本の青空Ⅱ~」の感想も書くことにしよう。


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2 コメント

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Unknown (hitomi)
2010-05-04 01:29:02
最近奥さまのお父様の事がわかりました。井上ひさしさんともつながるような。奥さまは翻訳家でやはり御両親が違いますね。
今日のニュース観ても60年、変えていない憲法は…などど。いつも同じ、自分たちに都合悪いだけで。

イギリスやフランスの革命以来の普遍的な国民の権利を奪われて逆戻りなんて困ります。

こういう映画に出る高橋和也・藤谷美紀、素敵ですね。はなまるでも「妻がどんどん好きになる」なんていいこと言ってくれました。
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★hitomiさま (ぴかちゅう)
2010-05-04 01:35:22
たくさんのTBも有難うございますm(_ _)m
2008年2月に観て未アップになっていた「日本の青空」の記事アップがようやっとできました。パートⅡを観て勢いをつけて憲法記念日に頑張りました。
井上ひさしさんの東京裁判三部作の「夢の裂け目」の感想アップも頑張らねばと思っています。
ただ、明日も実家に行かねばならず、ボチボチ書きますのでよろしくお願いしますね(^O^)/
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