ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/11/27 「ウーマン・イン・ホワイト」@青山劇場

2007-11-29 22:43:26 | 観劇

アンドリュー・ロイド=ウェバー最新作の日本初演ということで、しっかりチケットをとってあったのに、微妙な時間に職場で時計の見えないところで話し込んでしまった。「さて何時」と思ったら午後6:45!うわぁ、開演に間に合わない~。必死に青山劇場をめざしたけれど開演20分以上過ぎていた(T-T)という状況で観始める。2階席後方の一番安い席2列は満席だったが、2階前方はガラ空き。幕間に1階をみたら脇はガラガラだった・・・・・・。

ひとことでいうと「19世紀のイギリスの富裕な地方地主の家庭に育つ異父姉妹と貧しい画家とのロマンスに‘白いドレスを着た謎の女性’がからんだミステリー」という。
「ウーマン・イン・ホワイト」の公式サイトはこちら
<スタッフ>
作曲:アンドリュー・ロイド=ウェバー 作詞:デヴィッド・ジッペル
脚本:シャーロット・ジョーンズ 演出:松本祐子
<キャスト>
笹本玲奈:マリアン・ハルカム(姉)
神田沙也加:ローラ・フェアリー(妹)
別所哲也:ハートライト 山本カナコ:アン・キャスリック 
パーシヴァル・グライド卿:石川禅
光枝明彦:フレデリック・フェアリー(ローラの叔父)
上條恒彦:ファスコ伯爵 ほか
あらすじは上記の公式サイトをご参照を。
着席したら恋に落ちたローラとハートライトのデュエット中。収穫祭の場面へと続いていく。姉のマリアンは父の違う妹ローラの成長を母親代わりに見守ってきた。それなのに愛した男は妹と相思相愛になってしまう。せつない女を笹本玲奈が好演。「レミゼ」エポニーヌで観始めた頃は高校生だった彼女もずいぶんと大人になったと感慨深い。歌でも芝居でも主演女優として堂々たるものだ。

妹ローラの神田沙也加は昨年末の「紫式部ものがたり」で観ていて今回も頑張っていたが、どうにも音域の広い極は歌いこなせていない。ロイドウェバーのソプラノ向けの歌を歌いこなす女優はまだまだ日本では多くないと思うけれど(^^ゞ

ローラの父が死んだ後は弟であるフレデリックが家を守ったようだが、老け込んで車椅子に乗ったあまり聡明ではない男を光枝明彦。劇団四季で「アスペクツ・オブ・ラブ」で甥の女と結婚してしまう魅力的な壮年のおじ様姿が懐かしい。今回もいいお声を響かせていた。

別所哲也の舞台は「レミゼ」のバルジャンしか観たことがないので、若いハートライトのカッコよさには惚れ惚れした。長髪気味に伸ばしたヘアスタイルに彫りの深いマスク。歌もバルジャンの初めの頃より格段にうまくなり、甘い声を響かせてくれる。もっと早く舞台進出していて欲しかったなぁ。

石川禅の悪役パーシヴァル・グライド!貴族だが放蕩三昧で財産を食いつぶし、資産家の許婚の財産狙いの結婚を急ぎ、ハネムーンから帰ったローラの全身は痣だらけって、どんな人間だよ~。サドなのか、単に暴力で妻の精神まで痛めつけて支配するつもりなのか。とにかく石川禅の悪役は細かく作りこんでくれるので楽しめるのがいいのだけれど、この役はねぇ。末路は哀れとも思えないという完璧な極悪なキャラ。

そういう人間にくっついて美味しいところだけ味わって悪事にも手を染める快楽主義者(エピキュリアン!)、医師・フォスコ。マリアンには惚れているが、だからといってその妹の遺産を奪う手伝いに大活躍だ。彼のサインで精神病院に閉じ込めたアン・キャスリックを探すためにマリアンが証拠探しのために誘惑にきたのにコロっとその気になるところはなかなか可愛い。見破って逃げた後に歌うソロ「私はパーフェクト」も聞かせてくれる。しかしイタリアン・テナーという設定なのだが、最後に高音を効かせてしめるところ2箇所は失敗。それだけロイドウェバーの曲が難しいのだと思う。
謎の女アン・キャスリックの山本カナコ。先日もゲキ×シネ「朧の森に棲む鬼」でラジョウの都の居酒屋の女将で観たばかりだが、劇団☆新感線では高田聖子と向こうをはるような女優だ。初の本格ミュージカル出演ということだが、どうしてどうしてうまいものだ(池田成志の「ジキル&ハイド」の時よりも上手くて浮いていない(^^ゞ)。アンの一生は本当に不幸のまま終ってしまう。唯一希望が胸に湧いたところは三姉妹が揃って心が通い合ったあの一瞬だったのだろう。その「今日から三人」だけは本当に心がほ~っとするような曲だった。これからもどんどん本格ミュージカルに出て欲しいなぁ。

さて、全体の感想。全部観ていないのでまぁ恐縮ではあるが、正直なところを書いておこう。
アンドリュー・ロイド=ウェバーのこの作品は、やはり「ジーザス・クライスト・スーパースター」「オペラ座の怪人」「アスペクツ・オブ・ラブ」には及ばない。とにかく彼の持つ力は見せつけてくれる。その技巧を駆使した曲はさすがである。キャストも塩田明弘指揮のオケも格闘して頑張ってくれている。ロイドウェバーの楽曲と意気高く闘ってくれているのはよくわかって日本のミュージカル陣営もなかなかのレベルになったという感慨を持てた。しかし、ぐ~っと引き込まれて観終わった後で口ずさめるような心がいつまでも追いかけていたいようなメロディがどこにもなかった。「ロイドウェバーが技巧に走りすぎて、多くの観客が楽しめるかどうかという自己点検を忘れたのではないか」という印象。
ローラとパーシヴァル卿との不吉な結婚式の場面や精神病院の場面など「エリザベート」のリーヴァイの曲に負けないぞと思ってるんじゃないかとかも思えてしまった。とにかく不協和音を使いすぎなのもバランスがとれていない気がする。私が好まないからかもしれないが。

作品全体として。ローラとハートライトのロマンスもあり、それをせつなく見守り、一時は男の気持ちも自分の方に向いたのに最後は愛する妹と結ばれるようはからう大人の女主人公マリアンのせつない気持ちもしっかり描かれているところはわかった。しかしミステリーをミュージカルで見るという違和感を最後まで引きずった。こういう話ならストレートプレイで十分だなぁというのが正直な感想。だから途中からしか観ていないのだが、意地になってチケットを手に入れてもう一度観ようという気になれない。
最年少で菊田一夫演劇賞を受賞した笹本玲奈を見せる作品としての上演だったんだろうなぁ、所属のホリプロの企画の舞台だし、と納得。
あまり褒めていない感想になってしまった。しかしながら、アンドリュー・ロイド=ウェバー作品がお好きな方は、一度はご覧になる価値はある作品だと思う。
写真は公式サイトより今回公演のチラシ画像。


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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ほんとに同じくらいの時間ですね! (恭穂)
2007-11-30 21:35:40
ぴかちゅうさん、こんばんは。
記事のアップ、ほんとに同じくらいの時間ですね。
ということは、同じような時間に同じ舞台のことを考えてたのかな。
これも以心伝心というのでしょうか?(笑)

三姉妹の歌は、ほんとに素敵でしたね。
その分、その後の悲劇がとても辛かったですけれど。
女性陣も男性陣もみなさんとても素敵でしたが、
なんといっても笹本マリアンの迫力に、
ノックアウトされた感じです。
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★恭穂さま (ぴかちゅう)
2007-12-01 23:02:20

私の書いた感想をアップしてすぐにうかがったら、恭穂さんもアップされていて、時間もすごく近かった!それなのに中身は大違いで恐縮です(^^ゞ私の感想は役者さんたちを褒めて、作品はあまり評価していないもので、申し訳ないです。ミステリーをミュージカルで観なくていいやぁという印象でした。ミステリーっぽいドラマなのかもしれないけれど、そのへんがドラマとしては半端な感じがあって、もの足りずでした。
幕間で若い男の子ふたりが「オペラ座の怪人とかと違って何もくちずさめないよなぁ」とか話をしていて、やっぱりなぁと共感して聞いていました。
>笹本マリアンの迫力......そこは全く同感です。彼女は帝劇に似合う女優に育ってくれる人材だと思っているので、その点ではイイゾ!という舞台でした。
恭穂さんがしっかり楽しまれたという感想も是非こちらでご紹介させてください。下記にURLを書かせていただきますね(^O^)/
http://azhriaz-garden.at.webry.info/200711/article_15.html
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私も見てきました (ありす)
2007-12-03 02:22:22
3150円なら悪くないです。キャストはイヤな人がいなくてよかったですが、ストーリーと舞台転換が…
曲は久々にロイド ウェーバーを聞いた~という感じで相変わらず難しい。1幕がちょっと長く感じました。唐突に劇的に盛り上がった曲になり???となったところも。1度で覚えられないけどきれいな曲もあります。
ウーマンインホワイトという秘密が私的にたいしたことなく、どんな悪党かと思った禅サンの役は拍子抜けで、誰が主人公かわかりづらく誰にも感情移入できないのがおもしろくない原因かな?舞台転換も工夫してあるけど、場が多すぎて煩わしいかも。青山劇場仕様になってないから仕方ないのでしょうが、迫りも盆も使わずでせっかくの舞台機構がいかされていないと思います。
新感線の山本カナコさんが大抜擢で、終演後のトークでかなりいっぱいいっぱいで大変そうな様子でしたが、初ミュージカルにしては頑張ってました。神田さんも許せる範囲かな…笹本さんがずいぶんお姉さんに見えてキャストを忘れていた私には誰かわかりませんでした。上條さんの役が中途半端だけど、見せ場もありよかったです。別所さんと神田さんがラストで結ばれても納得いきませんでした。
2幕は1幕よりは話が転がっておもしろかったので残念でした。
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★ありす様 (ぴかちゅう)
2007-12-03 02:40:09
青山劇場の2階席後方席は観やすいし、今回の一番安い席2列=3150円というのはとっても有難いですよね。だからその列だけいっぱい(笑)ミュージカルの新作を一応観ておこうという観客には最適です。こういう席を1~2列、どの劇場も設けておいて欲しい。シアタークリエとか全席同じ値段なんて信じられません。あまりにタカビー!しばやく行ってやらないという強気の私です(東宝は痛くも痒くもないか(^^ゞ)
>ストーリーと舞台転換が…
舞台転換は特に文句をいいませんが、ストーリーがあまり一般ウケしにくいと思います。好きなキャストがいて追いかけたい場合は何度もリピートするでしょうが、このストーリーだといくらロイドウェバーの曲が魅力的でも、作品全体で魅力的に仕上がっているとはいいにくいと思います。
ロイドウェバーの難しい曲と格闘するキャストとスタッフには魅力を感じました。四季退団後の光枝さんにまた会えたのが実は一番嬉しかったんです。四季もいろいろゴタゴタしているようですが、退団した皆さんの活躍の場は東宝やホリプロの公演が受け皿になっているのでしょうね。まぁそういう人材も四季が育てたというのは大きな功績でしょうけど。
ストーリーについての続き。
>別所さんと神田さんがラストで結ばれても納得いきませんでした......原作の小説でもそうなっているようです。ここの説得力を増すためにはこのローラだったら姉も恋人もローラの幸せを第一にするだろうなぁと納得できるキャストにすることでしょう。そこが今回のキャストはいくらご本人が頑張っているとはいえ、弱い感じがしました。この作品が気に入ればもう少し贔屓目に見てあげられるのでしょうけれどねぇ。
ストーリーの無理を観客に冷静につかれないようにするのは役者次第だというようなことを「御所五郎蔵」で仁左衛門さんが筋書のところでおっしゃっていたと思います。まさにその通りだなぁと思う次第です。



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ウーマン・イン・ホワイト (hitomi)
2007-12-03 21:44:43
TBありがとうございました。

この作品を日本で上演すると聞き、即チケット買ってしまいました。ロイドウェバーの「マルチンターゲル」はこなかったし…「シカゴ」を観劇したときファントムのオリジナルキャストのマイケル・クロフォードが出るとポスターで観て喜んだら開幕前でがっかりしたんです。
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すみません! (恭穂)
2007-12-03 23:40:26
ぴかちゅうさん、こんばんは。
コメントと一緒にTBさせていただいたつもりだったのですが、反映されていなかったみたいですね。すみません!! 早速もう一度TBさせていただきました。でも、あのTBはどこに飛んでいっちゃったんでしょう・・・(汗)

昨日東京千秋楽を見てきましたが、中日よりも役者さんそれぞれがとっても良くなっていて、感動しきりでした。ミステリーとしてはやはり無理がありそうですが(原作とはかなり違うみたいです)、短い公演期間でしたし、再演されれば、更に進化しそうだな、と感じました。

「ストーリーの無理を観客に冷静につかれないようにするのは役者次第」・・・凄いいい言葉ですね。さすが仁左衛門さん!! また歌舞伎も行きたくなっちゃいました(笑)。
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皆様TB、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2007-12-03 23:52:19
★hitomiさま
名古屋でご覧になるとのこと、感想アップを楽しみにしています。
>ロイドウェバーの「マルチンターゲル」はこなかったし......いくらロイドウェバーでも全ての作品が「オペラ座の怪人」レベルというわけではないということですね。プロモーターは観客が呼べそうかどうかをきっちり判断しているのでしょう。「サンセット大通り」が劇団四季の上演企画が主演予定女優(志村幸美さん)の闘病・逝去で見送りになったのだけが勿体なかったと思っています。
★「瓔珞の音」の恭穂さま
TBが行方不明になることってけっこうあるんですよ。だからできたかどうか確認してからコメントするようにしていて、TB失敗の時は名前のURL欄があるブログの場合はそちらに該当記事のURLを入れるなどの工夫をしています(^^ゞ
千穐楽での進化を確認されたようで、お祝い申し上げます。私って仁左衛門さんの「御所五郎蔵」でも今回のような通し上演でない半端な一部上演では、「よく考えると五郎蔵ってつくづく馬鹿な男じゃないか~」と思ってしまったヤツなんです。仁左衛門さんはカッコよかったんですがやっぱり理性が勝ってしまった左脳人間(^^ゞそういう人間には「ウーマン・イン・ホワイト」のストーリーはやっぱりダメだったようです。仁左衛門さんくらいご贔屓の熱演でもやっぱり醒めた目を閉じさせられないくらいなので、別所さんや玲奈ちゃんが熱演しても駄目だったんですね。
最近のミュージカルでは映画ですが「ヘアスプレー」がよかったです。DVDを娘が買うみたいなのでそれをBGMに家の片づけをするのが楽しみです(え?)(笑)
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サンセット大通り (hitomi)
2007-12-03 23:54:42
志村さん、勿体無かったですね。まぁ、四季より他がいいかもしれません。
サンセットもマルチンターデルもロンドンで観たのですが…最近はブログ更新もママならず。母の次は長男の家からもSOSで映画もお預けです。
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観ました (hitomi)
2007-12-22 22:47:23
やはり東京でも空席目立ったんですね。こちらでも上から見たら1階席に空席あるし2階前方たった一人だけ、私は又、2階後ろでオペラグラス手放せない。でも私は久しぶりにミュージカル観たという感んじで楽しめました。アレンの映画「タロットカード殺人事件」もそうですがイギリスが好きなんですね。
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続・皆様TB、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2007-12-24 00:00:41
★「薔薇・猫・映画・演劇・旅ファン」のhitomiさま
gooブログとヤフーブログの両方から名古屋公演の観劇レポのTBを有難うございますm(_ _)m
>私は久しぶりにミュージカル観たという感じで楽しめました......ロイドウェバーのミュージカルはさすがに聞かせる曲揃いです。プリンシパルもアンサンブルもベテランさんが多いので難曲をよく歌いこなしていましたね。その中で特に何か心に残る歌がありましたか?それが私の観た範囲ではなかったのが物足りなかったんです。
>イギリスが好きなんですね.....なぁるほど、観劇しながらイギリス旅行の印象も思い出されたようで、作品世界を深く味わえて何よりです。私はイギリスは行ったことがありません。どうも食事が美味しくなさそうな気がして誘惑度が低かった(笑)
やっぱり「サンセット大通り」あたりをどこかで企画して欲しいのですが、話が地味すぎますかねぇ。
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