ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

13/03/23 堺雅人主演「ひまわりと子犬の7日間」に泣かされる

2013-03-23 23:59:47 | 映画(映画館、DVD、TVを含む)

とにかく今日は気晴らしで映画を観に行くことにしていて、できれば本日公開の「相棒 X Day」を観ようと思っていた。娘がつきあってくれるということだったが、外出するのがおっくうのようで結局家を出たのは2回目の上映回になんとか間に合うかという時間になり、案の定売り切れ!
封切り初日は企画付き3回めの上映回が売り切れになっていて、その次だと遅くなりすぎということで、第2案にしていた「ひまわりと子犬の7日間」をデニーズランチの後に観た。

宮崎県の保健所で起こった実話に基づいた映画で、原案は山下由美の『奇跡の母子犬』(PHP研究所刊)。あらすじについてネット検索で映画情報のサイトをいろいろ探したが、けっこういい加減な内容になっているものが多くて驚く。「天神サイト」の映画『ひまわりと子犬の7日間』堺雅人さん&平松恵美子監督インタビュー記事にあるものが正確で、ライターのJUNさんに感服m(_ _)m
以下、引用してご紹介させていただく。
「2007年、冬の宮崎。保健所職員の神崎彰司(堺雅人)は、一匹でも多くの犬を助けようと、日々新しい飼い主探しに奔走していた。そんな中、とある母犬と子犬が収容された。母犬は近寄る人すべてに激しく吠え、懸命に子犬を守ろうとしていた。その母性の強さから、彰司は母犬がかつて人に飼われ、愛されていたはずだと確信する。しかし、人になつかない犬は新しい飼い主に受け渡すことができない。犬たちの収容期間は7日間だが、その期間を延長するというルール違反をしてまで、母犬の心を開こうと奮闘する彰司。その間も、犬たちの命の期限は刻一刻と近づいていた―。」

主な配役は以下の通り。
神崎彰司=堺雅人 神崎琴江=吉行和子
神崎里美=近藤里沙 神崎冬樹=藤本哉汰
神崎千夏=檀れい 五十嵐美久=中谷美紀
佐々木一也=若林正恭 安岡=でんでん
桜井=小林稔侍 松永議員=左時枝
長友孝雄=夏八木勲 長友光子=草村礼子
監督・脚本は「母べえ」「武士の一分」「十五才 学校IV」等で山田洋次監督とともに脚本を手がけ、助監督もつとめてきた平松恵美子で、初監督作品となった。

動物愛護精神が社会の中できちんと位置づけられているような国々ではペットショップで動物を売り買いすることが禁止されている。ペットを飼いたければ然るべきところできちんとした飼い主になれるかどうかを判断されてからようやく手に入るということらしい。
日本ではペットショップで流行の種類の犬や猫などに高額な値段がつけられて売られており、それをあてにしたブリーディングが行われる。生まれてから数週間が可愛いということで、それで買い手がつかなかったり、需給バランスがとれなかったりして相当な動物の命が抹殺されている。
そういう中でも飼い主がいないペットの命を大事にしようと、里親探しの運動があちこちで取り組まれているということまでは知っていた。

この作品の主人公の神崎彰司は、保健所の動物保護管理の部署で野良犬や飼い主が放棄した犬を決められた日数(それが7日間!)保護して、引き取り手が現れなければ殺処分するという仕事をしている。(プログラムによると2010年度、全国の地方自治体に持ち込まれた犬は87,119匹とのこと!)
さすがに精神的に負担が大きい仕事ということからか、管理所勤務は月単位の交代制になっている。神崎の担当の月の餌代が他の月に比べて多すぎることから殺処分までの期間を伸ばしていることが上司の桜井にバレて締め付けが厳しくなった時期に、母子の犬が収容されたのだった。
さらに家では思春期に入った娘に殺処分までしている仕事のことがわかってしまい、口も聞いてもらえなくなるという事態に直面し、悩む主人公を堺雅人が好演。

彰司の幼馴染で父の跡を継いで獣医になっている五十嵐美久が娘との間をとりもってくれる。神崎が攻撃性が強い母犬についてはあきらめていたのを、愛する子犬を守るために闘っているのだから母子を引き離さないでと懇願したのは娘だった。5年前に交通事故で亡くなった母親と母犬が重ねあわされたのだ。
そこでなんとか母犬の人間不信を解こうとする神崎と娘が「ひまわり」と名づけた母犬との間に気持ちが通うようになるのを、よくぞここまでうまく描き出したものだと感心し、涙腺が決壊する。
「ひまわり」の子どもを愛する気持ちが強いのは子どもの時に飼い主に深く愛されたからではないかと想像し、子犬の時のドラマが冒頭に無声映画のように展開するのがよく、農家の老夫婦の夏八木勲・草村礼子のお二人が台詞がないのに実に温かい。愛情にあふれる眼差しと心情があふれて「ひまわり」に注がれた涙のしずく、これを心に刻んでいたことから最後の奇跡が起きるという展開に納得させられてしまう。

仕事に腰掛け気分で臨む年下の同僚の佐々木一也(漫才コンビのオードリーの若林正恭)が一人浮いた存在で笑わせるのは、寅さん的な役回りということもあるらしいが、彼の成長も微笑ましい。
同じお笑い出身のでんでんが心優しい先輩の安岡、小林稔侍がルールに厳しい如何にも管理職の桜井という配置もうまい。
「ひまわり」とその子犬が彰司たち一家の家族になり、地元女性議員の松永(左時枝)が巻き込まれるように関わったことで、里親探しの取り組みが強められるというホッとできる結末で観終われたことに安堵・・・・・・(また泣く)。

彰司の母は先に引き取っていたプリンとココアにも冷たく、犬が好きではないのかと思われていたが、実は先に死なれるから情をかけないようにしていたことが判明。老い先短いからそういう我慢もやめたというのが可愛く可笑しかった。吉行和子は先日母と観た「東京家族」でも老いた母の役で好演しており、ちょうど今貴重な存在の女優さんなんだろうと納得した。

獣医の美久の中谷美紀は、人気TVドラマ「仁」での花魁野風の役が記憶に焼き付いているが、毅然とした美しさがこちらでも映えていた。彰司とはあくまで恋愛モードにならない設定も新鮮だったかな(^^ゞ

さて、堺雅人は私の贔屓の俳優の一人で、大河ドラマ「篤姫」でブレイクする前から舞台「喪服が似合うエレクトラ」で注目していたし、その後の映画「クライマーズ・ハイ」「南極料理人」「ゴールデンスランバー」、「武士の家計簿」、「ツレがうつになりまして」、「鍵泥棒のメソッド」、「大奥~永遠~」とちゃんと観ている。劇団☆新感線での「蛮幽鬼」もよかったなぁ。
笑うと仏様のような慈愛を感じさせるソフトさがありながら、鬼神のようにも振る舞える表現力の幅が広いのが魅力的。舞台でもよく通る声で口跡がよい。
よしながふみの漫画が原作で男女逆転の「大奥」は、八代吉宗での映画化第一作からしっかり観ているが、昨年の三代家光でのTVドラマと五代綱吉での映画版の連動企画のうまさに感心至極だった。そして昨年の方は堺雅人が時代を超えて似ているが性格の違う男の二役を演じたことで魅力が倍増したことが大きい。

そうしたら、綱吉役の菅野美穂と結婚するとのこと!菅野美穂は贔屓の女優であり、「大奥~永遠~」での共演が実によかったので、納得のカップル誕生に嬉しくなった。これでお二人がますます活躍されることも期待したいと思う。

それにしても、堺雅人が宮崎出身であることを知らないでキャスティングしたらしいが、堺のダメ出しは方言指導の先生より厳しかったという。その宮崎弁で広がる世界が実に温かかったことも書いておきたい。