ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

11/02/12 澤瀉屋版「お染の七役」についての補足

2011-02-23 23:59:29 | 観劇

冒頭の写真はル テアトル銀座歌舞伎二月花形歌舞伎公演の筋書の表紙。ポスターチラシの写真に蜷川実花を起用した企画の一環で中にも実花さんの写真が効果的に使われている。亀治郎のお染と染五郎の与兵衛の写真がA4版の見開きいっぱいに使われているのにはさすがに驚いた。花をあしらっての写真のイメージで文字の中には花模様が散りばめられている。こんなお洒落な筋書は見たことがないと感心至極。

さて、今回の「お染の七役」亀治郎奮闘公演の記事にご質問をいただいたので、それにお答えも兼ねて書かせていただく。
奈河彰輔氏の寄せた文章「改補『お染の七役』改亀治郎版」より以下、引用。
「鶴屋南北作の『於染久松色読販』は、文化10(1813)年3月、江戸森田座で初演、お染久松の恋物語をスペクタクルな世界に書き換えた傑作である。昭和に入って前進座の5世河原崎国太郎の為に拵えた渥美清太郎本は、早替りが手際よくアレンジされている。テキストレジーは最良の脚本だが、澤瀉屋がやる以上は独自の切り口が無ければ・・・と上演台本の再検討から手をつけた。南北の原作は、お家騒動がドラマのベースになっているが、渥美本はその部分を割愛してまとめている。猿之助の構成は、2つのお家騒動(注:久松の家とお染の家の両方と思われる)を土台とし、人間関係をはっきりさせて、ストーリーを組み立てる事を最重点にし、奥座敷と蔵前を、大道具の工夫により、早替りとお芝居をたっぷり盛り込んだ見せ場にした。(中略)そして今度市川亀治郎によって、18年ぶりで改めて陽の目を見ることになった。(以下、略)」

上記の文章から、南北の原作、渥美清太郎本、奈河彰輔本の特徴がおわかりいただけると思う。
並ぶ猿之助が寄せた文章にも以下のようにある。
「これを“猿之助四十八撰”の新演出十集に選んだのは、人間関係を明確にするため序幕の「柳島妙見」から七役すべてを登場させ(原作はお光・貞昌・お六は出ない)、「油屋裏手」にもお六を出すなどの改定を加えたこと。また牛黄義光の刀をめぐるお家騒動の筋も解き易くしたいと、原作を検証して新バージョンを拵えたからである」

このあたりが、猿之助の復活狂言の魅力だとつくづく思う。猿之助は役者としては台詞回しもあまくうまくなかったと思うが、プロデューサー・演出家としての能力がずば抜けていると思う。亀治郎という澤瀉屋の芸の継承者を得て、プロデューサー・演出家としての力をこれからも長く発揮し続けてもらいたいと願っている。