ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

09/06/21 歌舞伎座昼の部①兄弟対決の「角力場」

2009-06-22 23:59:29 | 観劇

昼の部で予想を上回って面白かったのが幸四郎・吉右衛門兄弟対決の「角力場」だ。
【双蝶々曲輪日記 角力場】
以下、関連の記事のリンク。あらすじ等は今回は省略。
2006年6月の高麗屋父子対決の「角力場」の記事はこちら
同年9月の吉右衛門の「引窓」の記事はこちら
2007年4月の錦之助襲名の「角力場」の記事はこちら
今回の主な配役は以下の通り。  
濡髪長五郎=幸四郎 放駒長吉=吉右衛門
山崎屋与五郎=染五郎 藤屋吾妻=芝雀
仲居おたけ=吉之丞 仲居おすず=歌江 
仲居おまつ=宗之助 茶亭金平=錦吾
平岡郷左衛門=由次郎 三原有右衛門=桂三

初見の舞台と同様に吾妻と与五郎がじゃらつく場面はなし。与五郎役者の見せ場を増やす調整の場面なのだろう。
角力場の外で吾妻が与五郎に早く会いたいと言って仲居三人組とやりとりする場面でまずなんて贅沢なんだろうと見入った。吉之丞と歌江が並んでいて大ベテランの女形芸にうっとり。おまつの宗之助よ、しっかり大先輩の芸を盗めよと心の中で声援。このスリーショットは記念にしっかり舞台写真を確保してしまった(^^ゞ吾妻の芝雀は身請け合戦が起こるのも無理はないと思える可愛さ。

大柄な体格の吉右衛門の放駒長吉はいいだろうと思ってはいたが、予想をはるかに超えていい!素人角力が強い丁稚上がりの長吉が大金星の思わぬ勝利に素直に喜ぶ様子が稚気のあふれる若者ぶりでいいのだ。大前髪の下の素直な笑顔がここまで可愛いとは思わなかった。丁稚時代のチョコチョコ歩きが抜けなくて花道をチョコチョコ引っ込むあたりの可笑しみも最高だ。
今年は正月の曽我狂言の五郎も高い声を精一杯張って頑張っていたし(これは後輩たちにみせる効果が大だったと思う)、4月の「毛谷村」の六助も気は優しくて力持ちの好青年ぶりが実によかった。60歳を超してここまで続けざまに大柄で稚気にあふれる剛の若者役を魅力的に見せてくれるとは、吉右衛門、おそるべしである。

染五郎の与五郎はつっころばし一役に専念するほうが余裕があっていい。上方言葉もより流暢になってきたと思う。
幸四郎の濡髪は前回よりもさらにいい。吉右衛門と共演するとより芝居に重厚感が出てくるのだ。吉右衛門の芝居に対抗するようにためをきかせている感じがある。まさに相撲の立会い前に両者がぐっと腰を落す感じ。
昨年の6月は「新薄雪物語」がよかったなぁなどと思い出す。兄弟で共演してくれるようになって、観客も嬉しいが後輩の役者たちにもいい影響を及ぼしていると思える。
兄弟共演も含めて実にいい役者が揃って贅沢な舞台にホクホクとなって幕間へ。

写真は今月の筋書の表紙を飾る川端龍子の「青獅子」。歌舞伎座の階段の踊り場にある非常に大きな絵で大好きな作品だ。