ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/06/25 歌舞伎座6月昼の部②「角力場」での父子対決

2006-07-01 03:06:05 | 観劇
3.「双蝶々曲輪日記・角力場(ふたつちょうちょうくるわにっき・すもうば)」
濡髪長五郎と放駒長吉という実在したふたりの相撲取りを名前をそのままに使って創作された世話浄瑠璃。「長」が付く名前が揃うので外題に「双蝶々」とつけられた。歌舞伎に移されてから人気が出たのだという。全9冊のうちよく上演されるのは「角力場」と「引窓」。「角力場」は今回が初見なので楽しみにしていた。話の内容は以下の通り。

大阪の角力場で大番狂わせが起きた。人気力士の濡髪長五郎(幸四郎)が素人角力の放駒長吉(染五郎)に負けたのだ。濡髪の贔屓である山崎屋与五郎(染五郎)は悔しくて仕方がない。与五郎は藤屋吾妻(高麗蔵)と相思相愛だったが、放駒を贔屓とする平岡郷左衛門が横恋慕して身請けを張り合っている。身請けを請け負った濡髪がすすめるままに与五郎は御茶屋に遊びにいく。濡髪は放駒を呼び出してある談判に及ぶ。藤屋の吾妻を与五郎が身請けできるように放駒から平岡に口添えしてもらいたいという。放駒が断ると今日の勝負の勝ちを譲ったのだから是非ともそうしてもらいたいと勝負に手加減したことを明かす。若い放駒は反発すると、濡髪も意地づくとなり、力の勝負で決することになる。最後は歌舞伎の常套、遺恨を残して意地を張り合う型を見せての幕となる。

放駒役で登場した染五郎、肉襦袢やらでそれらしくしているが顔が細いままなのはまあ仕方がない。敏捷な小兵で強い力士も舞の海などで慣れているからまあいいことにする。素人角力から伸び盛りで剛直な性格の放駒をさわやかに演じていたことに好感を持った。一方、二役の与五郎は最近磨きをかけているつっころばしの役。大阪弁に苦労している様子はありありだが「封印切」の忠兵衛の時よりも上達。濡髪に肩をたたかれてよろついてそれで喜んでいる様子を見て、これが“つっころばし”かあと納得。他の人に濡髪を誉められると嬉しくなってしまって何でもホイホイと気前よくあげてしまうし、濡髪の場所着をふたりで着こんで喜ぶ様などは可愛くて仕方がない(上方歌舞伎のチャリ場がかなり好きであることも再確認)。両極の役を魅力的に演じてくれて今後の期待が増した。

幸四郎の濡髪は重厚感たっぷり。幸四郎は時代物だと台詞が口にこもって聞き取りにくく、低音域から高音域から切り替える時に裏返るのも苦手。この低音を聞かせた濡髪の台詞は大丈夫だった。あまりの立派さに驚いた。この役の幸四郎は気に入った。

どっしりと構えて動きの少ない濡髪とけっこう動きのある放駒。最後の茶碗を割って力を誇示する場面でもその対照的な演技がきいていた。この父子が芝居でからむところは歌舞伎では初めて観た(「アマデウス」「夢の仲蔵」のみ)。今回の父子対決のような共演はなかなか緊張感があってよかった。
高麗蔵の吾妻だと染五郎の与五郎にはちょっとバランスがよくないように思った。孝太郎あたりがくるとよかったんじゃないだろうか。
9月歌舞伎座で「引窓」が吉右衛門の南方十次兵衛でかかる(昨年に菊五郎の十次兵衛で観たのが初見)。濡髪は残念ながら幸四郎ではないが、いつかこういう組合せでも観てみたいものだ。

この「角力場」がよかったので、昼の部終了後に夜の部の「暗闇の丑松」の幕見に並んで入れれば観ようと思いついてしまった。「荒川の佐吉」と続けて書く予定。
昼の部①「藤戸」「松竹梅」の感想はこちら
昼の部③「荒川の佐吉」の感想はこちら
夜の部幕見「暗闇の丑松」の感想はこちら


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1 コメント

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Unknown (水無月)
2006-07-05 02:52:53
今回『角力場』のみで少々物足りなかったので、9月歌舞伎座で『引窓』を観たいんですが、予算的にムリっぽいです



濡髪の幸四郎さんは存在感たっぷりでした。

関西人のオットは、彼の上方ことばをべた褒め。もちろん現代の関西弁とは違うんですが、上方情緒十分な台詞まわしだそうです。

染五郎さんは放駒はよかったんですが、与五郎の上方っぽさがまだまだ硬いような気がしますね。
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