ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

09/06/19 澤潟屋の鑑賞教室と「華果西遊記」

2009-06-19 23:59:54 | 観劇

今週は発熱のため一日休んでしまったが、ようやく落ち着いてきたのでやはり国立劇場の澤潟屋公演を仕事帰りに観ることができる社会人のための歌舞伎鑑賞教室の後半日程で観てきた。
前日にネットでチケット状況をみたら高い席しかなかったので当日ぎりぎりに判断することにして昼休みに電話を入れたら二等席があったのでそれで確保。そのため久しぶりに双眼鏡無しの三階席での観劇となった。

【解説 歌舞伎のみかた】河竹登志夫=監修
澤潟屋一門による前回の国立劇場の歌舞伎鑑賞教室の時に絶賛された笑三郎・春猿コンビによる解説。3月の「獨道中五十三驛」の息の合った女やじきたコンビも甦る。
「歌舞伎」の3つの柱の‘歌’‘舞’‘伎’のそれぞれについての簡単な説明。‘歌’ではまずBGMの下座音楽の解説。雨音から傘を持った男に笑三郎がなってドロの音とともにスッポンから出てきた春猿の幽霊とのからみ。「かさね」の最後の場面だ。
次に今回の作品で使われる2種類の浄瑠璃の義太夫と常盤津を比較。浄瑠璃は語り芸であり「節のついたナレーションのようなもの」という説明がわかりやすい。
‘舞’では春猿が素踊りで女形の舞いを見せ、そこから女形の身体の作り方と動き方の基本につなげて舞踊の稽古が下地にあるということも解説。‘伎’は演出も含めた技。演技の技もということで「見得」の解説。ツケが欠かせないことも実演。ツケ打ちや黒衣の後見の役割の大きさも説明。バレーボールを差し金で舞台と客席をいったりきたりさせる形で観客の参加コーナーも盛り上げる。黒衣は見えないものというルールを踏まえてもらうことも含めて歌舞伎は観客参加型の演劇と説明。
最後は西遊記の簡単な説明を唐の官僚姿の2人も加えてやりとり。「華果」は猿之助の俳号で猿之助版西遊記という意味と孫悟空が生まれた「花果山」の「かか」をかけているという。なぁるほど!
Wikipediaの「西遊記」の項はこちら
前半の解説でこんなに満足した鑑賞教室は初めてだった(前回はTVの録画で鑑賞)。

【華果西遊記(かかさいゆうき)】 常磐津連中・竹本連中
三世河竹新七=作 石川耕士=脚本
市川猿之助=演出 金井俊一郎=美術
吉井澄雄=照明
<今回の主な配役>
孫悟空=市川右近 玄奘三蔵法師=市川笑也
猪八戒=市川猿弥 沙悟浄=市川弘太郎
芙蓉実は妹蜘蛛の精=市川春猿
女王実は姉蜘蛛の精=市川笑三郎、ほか
(段治郎の持ち役だった悟浄を弘太郎が引き継いでの公演になった)
第一場 西梁国智籌殿の場
第二場 雲中の場
第三場 盤糸嶺山頂の場
<あらすじ>三蔵法師の一行は西梁国を通過中。悟空だけ馬に草を食べさせて遅れている。楼閣に入り込んで泉を見つけた八戒は断りもなく水を飲む。楼閣の主はこの国の女王で女ばかりの国だという。三蔵法師に妹が恋煩いで寝込んでいるのを祈祷で治して欲しいと頼む。八戒と悟浄は侍女にもてなされるうちに子母泉の力(懐胎させてしまう)を聞いてぎょっとするとやはり八戒の腹が痛み出す。助けを呼ぶうちに悟空が登場し、八戒の腹を手術して治す。
このあたりが少々飽きる。常磐津に乗ったのんびりとした話の展開が西遊記には苦しい。
女王の妹姫の芙蓉が三蔵法師こそ寺参りした時に一目惚れした殿御だと言い寄っていると悟空が正体を妖怪と見破る。姉妹とも古蜘蛛の精で「土蜘蛛」のように蜘蛛の糸を投げ打つ。投げては黒衣が巻き取りを繰り返すのでけっこう派手で客席も盛り上がる。悟空たちとの立ち廻りが始まるとテンポアップ。如意棒やらの3人の持ち棒も使った京劇風の棒術の場面はさすがに見もの。蜘蛛四天との立ち回りもスピーディで「小金吾討死」の縄を放射状に張っての場面で上に悟空が乗って極まる。花道での悟空の引っ込みには如意棒を薙刀のように使って「船弁慶」の知盛の引っ込みを模す。
とにかく歌舞伎の名場面の手法もふんだんに盛り込んでいるところは歌舞伎をある程度観ている人の楽しみが増すだろう。

西梁国女王姉妹の衣裳は「国性爺合戦」の錦祥女のようで、西遊記もなるほど歌舞伎から遠くはないんだなぁと思えた。しかし義太夫と常磐津の掛け合いに乗ってすすめていくというのはどうなのだろう。まぁスーパー歌舞伎よりは歌舞伎テイストが濃い目だが、歌舞伎風の音楽にこだわらず、糸にのらずに台詞でポンポンすすめる方がテンポも出て西遊記としてはよくなるのではないかなぁなどとも正直思った。

最後も右近、笑也、笑三郎、春猿、猿弥、弘太郎で極まっての幕切れ。カテコもあって何度もお辞儀をし、最後は正座をしてのお辞儀。右近ばかりが突出しての座頭という感じではなく、澤潟屋若手一門による舞台という感じでなかなかいい感じではあった。

しかし、歌舞伎座がなくなる来年5月以降は澤潟屋一門だけで演舞場を使うことはできなくなるだろう。師匠の猿之助が復帰できない状態が続く中、歌舞伎座の代替となる演舞場では座頭に玉三郎か海老蔵を置いてであれば可能だろうと推測できる。若手一門による東京の大劇場公演として国立劇場の鑑賞教室の一ヶ月分は毎年しっかりやれるようにして欲しいし、できるだろうという確信を持つことができた。

写真は公式サイトより今回の公演のチラシ画像。